オンライン・ドクター

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 インターネットを通じて医師の診療を受けるのは、大部分のロシア人にとってはまだ新しい事柄だ。これに関する法制はまた整っていないが、しかし駆け出しの遠隔医療は成功裏に行われており、多額の利益を上げている。

 子供が生まれると若いママは、ほとんど常に医師と連絡をとり、緊急事態に助けを求めたり、何か心配な問題で相談したり、あるいは単に精神的なバックアップを受けたりする必要が出てくる。こうした状況が2013年に、後に遠隔医療のポータルサイトを立ち上げることになるある夫婦のところでも起きた。夫は1年後にサイト「小児科医24/7」を立ち上げたが、これは赤ちゃんの両親が子供の健康問題で医師から遠隔医療を受けることができるというもの だ。

 遠隔医療のアイデアは、ロシアの小児科医療をリードするレオニード・ロシャリ医師(緊急外科・外傷治療研究所所長)も支持している。実現に向けての最初の段階となるのが、医師と患者のコミュニケーションのプラットフォームを作ること。サイト「小児科医24/7」の説明では、患者に何より必要なのは、随時医師に連絡がとれ、しかもその際に医療の質が保障されていることだという。

 だからそのためには、アグリゲーターの助けを借りて医師をかり集め、彼らに診療の機会を与えるだけでは不十分である――。こう説明するのは、このプロジェクトのリーダー、デニス・ユドチツ氏だ。診療を行いその質を管理する、きちんとしたフォーマットを練り上げることがとても大事だという。そうしてできた基準にしたがって診療を行うように、医師は研修を受けなければならない。それぞれの患者は、オンライン医療カードと個人アカウントをもらい、バーチャルな診療を受けられるようになる。医療サービスの水準を評価するにあたっては、患者だけでなく、医師、専門家の意見も考慮される。

 

待ち時間は3

 サイト「小児科医24/7」に続いて、ユドチツ氏とそのチームは、成人用のポータルサイト「オンライン・ドクター」も開設した。主な患者は、良質な医療を受けにくい地方に住む人たちだ。また、お年寄りの患者も、その時々で必要な具体的な情報を受ける以外に、定期的に医師と話したいような人は、こういうオンラインのサービスを受けたがる。

 こうした患者には、遠隔診療を無制限で受けられるサービスの登録をすすめる。ロシアでは、同様のコンセプトで「Teledoctor 24」が活動しており、そのサービスのなかには、適当な値段で薬を見つけるのを手助けするとか、医療関連の法律問題に答えるとかいったものがある。

 2016年、ロシアにはもう一つ、遠隔医療の分野のプロジェクトが現れた。プラットフォーム「 Doc+」だ。これは、Uberのコンセプトに基づく、往診を頼むためのもの。医師の呼び出しは、携帯アプリを通じて、一律2000ルーブル(約3800円)で受け付ける。もっとも、サービスは今のところ、モスクワとモスクワ州でしか受けられないが。フォーブス誌のデータによると、このプロジェクトの昨年度の利益は、約7千万ルーブル(約1億3千万円)だった。

 

法律なき医療

「Doc+」は、アメリカのHealに似たサービスだが、同国では昨年初めの統計では、遠隔医療を約15% のアメリカ人医師が利用している。一方ロシアには、公式の統計はない。というのは、遠隔医療は法制面で整備されていないからだ。ロシアでは、医師は今のところ、オンラインで診断を下し治療を処方する権利をもたないが、とはいえ、遠隔医療関連法案が採択されれば、状況は変わるだろう。

 日本では、医師と患者の間の遠隔医療は、これまで医師法(20条)により禁止されていたが、近年、法解釈が一部変わり、僻地に住む患者の一部で、遠隔医療ができるようになっている。

 現在、ロシア連邦下院(国家会議)では、二つの関連法案が審議中だ。そのうちの一つは、ロシア連邦保健省が作成したものだが、もう一つのほうには、インターネット関連の組織、企業――「インターネット発展研究所」、ロシアの検索エンジン大手「ヤンデックス」、「インターネット・イニシアティブ発展研究所」――が参加している。両者の決定的な違いは、後者の法案が遠隔医療を認めていることだ。

 法案の課題のなかには次のようなものがある。①どのような医療サービスを遠隔医療で行えるものとするか、②遠隔医療に参加する医師等の資格、力量などをどう定めるか、③遠隔医療のサービスへの支払いのシステムをどうするか、など。

 「こういう法律はずいぶん前から必要になっていた。事実上法律がない状態でも、遠隔医療は、いくつもの医療機関で成功裏に行われてきている」。ロシア連邦保健省の広報部は、ロシアNOWに対しこう伝えた。したがって、法律は、現在行われている遠隔医療を合法化し、医師と患者を保護することになる。そのほか、医師たちに対し、遠隔医療の方法と手段を教える講習会を開催する計画もある。

 

リスクと期待感と

 インターネット発展研究所のゲオルギー・レーベジェフ所長は、ロシアNOWのインタビューでこう指摘した。ロシアでの遠隔医療の発展にともない、3つの主なリスクが考えられる。第一に、技量の劣った医師が加わることで医療の質が低下すること。第二に、医師と患者のコミュニケーション、協力が対面診療におけるよりも難しいこと。第三に、医師が「不適切な振る舞いにおよぶ」患者に対し無防備であること。最後に、海外の大企業が市場を独占しかねないこと――。

 これに関連し、インターネット関連問題のロシア連邦大統領補佐官、ゲルマン・クリメンコ氏は最近、遠隔医療関連法案の整備を急ぐよう呼びかけた。「『ヤンデックス医療』とか『ランブレル医療』とかが生まれる可能性がある(ヤンデックスもランブレルも、ロシアのインターネット企業――編集部注)。これらはロシアの話だが、もし我々がもう2年もぐずぐずしていると、グーグル医療やアップル医療ができてしまうだろう」。タス通信は、クリメンコ氏のこうした発言を伝えている。

 また、クリメンコ氏は、患者のための予防ヘルスモニタリングが重要で、そのためには、携帯機器の開発が必須だと強調した。