地球が宇宙ゴミで"土星化"も

記録されている全物体の70%は、地上2000キロに位置する近地球軌道にある。=写真提供:ESA

記録されている全物体の70%は、地上2000キロに位置する近地球軌道にある。=写真提供:ESA

国際宇宙ステーション(ISS)に、宇宙ゴミから守る超近代的なレーザー砲が装備される可能性がある。しかしながら、これでは不十分だと考える研究者もいる。宇宙ゴミの問題を複合的に解決しなければ、200年後、地球のまわりにはゴミの環ができるかもしれない。

 2017年、ISSには宇宙ゴミをモニタリングする極限宇宙天文台(EUSO)が装備される。プロジェクトが成功した場合、レーザー砲が製作される。レーザー砲は約100キロ以内の危険粒子を溶かして地球の大気圏に突入させ、そこで燃焼させる。プロジェクトの開発者は、日本の理化学研究所計算宇宙物理研究室。

 レーザー砲は近地球軌道をきれいにする手段の一つ。ロシアは2025年までに、「リクヴィダトル(清算者)」と呼ばれる宇宙ゴミ除去の人工衛星”スカベンジャー”をつくろうとしている。今年12月には、宇宙ゴミを観察する人工衛星「ロモノーソフ」を打ちあげる。

 宇宙ゴミは秒速8キロほどと、大変なスピードで飛んでいる。「問題は喫緊。近年、宇宙ゴミの小片がひんぱんに宇宙機にぶつかっており、深刻な損傷を引き起こしている。2センチの小片が宇宙機を丸ごと破壊してしまう。砂粒ほどのゴミが有人宇宙船にぶつかったら、減圧が発生し、宇宙飛行士が死亡する」と、K.E.ツィオルコフスキー・ロシア宇宙航行アカデミーの会員であるアレクサンドル・ジェレズニャコフ氏はロシアNOWに説明する。

 

宇宙ゴミはどうやって生まれるのか

 世界中の科学者が、宇宙ゴミの問題を解決しようとしている。宇宙政策研究所のイヴァン・モイセエフ所長によると、ロシアとアメリカの宇宙局は最近まで、宇宙機打ち上げ時や軌道修正時にゴミの破片の動きを追跡しようとしていた。「レーザーは破片を加熱できるところが便利。蒸発し始めると、反力が生じる。破片は地球の大気圏に向かって飛び、突入して燃え尽きる」

 特に深刻な宇宙ゴミの問題としては、2009年にロシアの人工衛星「コスモス2251」とアメリカの人工衛星「イリジウム33」が衝突事故を起こし、散乱した破片がある。この事故は高度約700~900キロの近地球軌道に、破片を”降り注いだ”。数センチの大型断片数万個、微細破片数百万個と試算されている。

 別の宇宙ゴミの問題としては、中国軍が2007年にミサイルで気象衛星を破壊する実験を行い、散乱した破片がある。「この気象衛星とミサイルの破片は、地球の周囲をまわりつづける」とモイセエフ所長。将来、同様の惨事が起こることを防止するためには、宇宙の法的規制の導入が必要だと考えている。

 また、モイセエフ所長の考えによれば、ISSプロジェクトの参加国は、日本の研究者によって開発されているレーザー砲の費用を分担することについて話し合わなければならないという。「今のところ決まっていない。これといったことが何もできない」とモイセエフ所長。

 

臨界点に近いレベル

 宇宙ゴミの問題について人類が悩みだしたのは1990年代初めのこと。アメリカとソ連の科学者はこの時までにすでに、予測される事態に備えて準備を行っていた。一部専門家によると、状況は徐々に制御不能になっている。

 「宇宙ゴミの大量の自己増殖が始まった時が、臨界と考えられている。現在はその臨界点に近いと言えるレベルにある」と話すのは、ロシア科学アカデミー宇宙研究所のユーリー・ザイツェフ氏。

 「宇宙ゴミのシミュレーション」の著者であるアンドレイ・ナザレンコ教授によると、高速飛行している宇宙ゴミが衝突して破片が割れる危険なプロセスが、現在起こっていると話す。「レーザー砲のような対策は局地的。1機の宇宙船または人工衛星の安全を確保する問題であれば解決することができる。当方の予測では、200~300年後、宇宙ゴミが地球の周辺で土星の環のような環になることで、宇宙機を打ち上げることができなくなる。地球はこれらの小粒子によって拘束されてしまう。これが重大な気候変動につながる可能性も排除できない」とナザレンコ教授は警戒する。

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