「宇宙飛行士訓練センター」56周年

ミハイル・チューリン

ミハイル・チューリン

グリゴーリイ・シソエフ撮影/ロシア通信
 最近地球に帰還した日本人宇宙飛行士の油井亀美也氏は、ロシア語を習得したこと、日本とロシアの関係発展のための「懸け橋」になりたいことなどを話した。「星の街」の「宇宙飛行士訓練センター」で行われた記者会見で、油井氏はロシア語で記者団の質問に答えた。宇宙飛行士の義務的事前訓練が半世紀以上行われているのが、このセンターだ。

 日本の宇宙飛行の歴史は、宇宙飛行士訓練センターと密接に関係している。油井氏の前にも、星の街では何人もの日本人が訓練を受けている。1989年10月、後に日本人初の宇宙飛行士となる秋山豊寛氏が、センターに来た。若田光一氏、野口聡一氏、星出彰彦氏が秋山氏に続いた。現在ここで訓練を受けているのは、大西卓哉氏。

 宇宙飛行士訓練センターの歴史が始まったのは1960年1月。ソ連空軍のコンスタンチン・ヴェルシニン総司令官が第26266特別部隊を結成せよとの秘密指令を発令した時。

ロシアの宇宙飛行士訓練センター、2015年5月6日。日本人宇宙飛行士の油井亀美也(左側)、ロシアの宇宙飛行士オレグ・コノネンコ(中央)、米国宇宙飛行士のチェル・リングリン=写真提供:宇宙飛行士訓練センター

 最初の宇宙飛行士隊の訓練期間は1年未満だった。ソ連とアメリカの宇宙開発競争時代、アメリカの宇宙飛行士の訓練に関するソ連の諜報データが、ソ連の専門家をせき立てた。宇宙飛行士候補も、指導官も、猛烈に活動した。

 

今日のセンター

 初めての宇宙飛行までの訓練期間は平均7年。今日、ロシアの宇宙飛行士隊には37人おり、うち16人が初めての「宇宙出張」を控えている。

 宇宙飛行士隊には軍事パイロットだけでなく、フョードル・ユルチヒン氏、セルゲイ・クリカリョフ氏などのエンジニア、また医師のオレグ・コトフ氏、生物学者のセルゲイ・リャザンスキー氏といった他の分野の専門家もいる。「技術の進歩にもかかわらず、宇宙においてロボットが人間に代わることはない。宇宙飛行士の仕事はしばしば、課題の解決に非標準的な判断を要するため、機械では不可能」と、ユーリ・ロンチャコフ宇宙飛行士訓練センター長はロシアNOWに話した。

宇宙飛行士訓練センターの船外活動訓練用プール=ロマン・ソコロフ撮影/ロシア通信

星の街の日本人

 1989年10月、後に日本人初の宇宙飛行士、宇宙初のジャーナリストとなる秋山氏が、センターで訓練を始めた。宇宙ステーション「ミール」での滞在期間中は、テレビの実況放送、児童向けの授業、生物学的な実験を行った。秋山氏はあるインタビューで、「星の街」という言葉を聞くと、一緒に訓練した仲間の顔が目の前に浮かんでくる、と話している。「指導官も、サポートスタッフも、責任感のある各分野の専門家ばかりだった。星の街の家庭的な素晴らしい雰囲気を忘れることはないだろう」

日本人初の国際宇宙ステーション(ISS)船長を務めた若田光一さん=ロイター通信撮影

 秋山氏以外にも、センターで日本人が訓練を受けた。若田氏と野口氏は2012年、星の街の水力研究所で船外訓練を受けた。星出氏もここで訓練を受けている。大西氏は2016年の飛行を目指し、目下訓練中。生物医学的準備の要素を学び、ロシア語を学習している。

 

最初の宇宙飛行士の時代

 第1設計局の主任設計士セルゲイ・コロリョフ氏の提案によって、ジェット戦闘機のパイロットの中から最初の宇宙飛行士を選出することになった。委員会は3461人のパイロットを調査。予備面接と健康診断を行った後、20人を宇宙飛行士隊に所属させた。

 1960年3月、モスクワのフルンゼ中央飛行場に、最初の宇宙飛行士候補が集まった。当初は特別な施設はなかったため、地下鉄「ディナモ」駅近くのCSKAスポーツ施設の小さな2階建ての建物で、すべての授業が行われた。4ヶ月後、宇宙飛行士隊はようやく、世界的に知られることとなる星の街に引っ越した。

 最初の宇宙飛行士隊は、人間の限界の試験を受けた。負荷12Gの遠心機で回転し、摂氏70度の加熱室に2時間こもった。

 

秘密施設からISSまで

 1961年4月、ユーリー・ガガーリン氏が伝説の飛行を実施し、世界初の宇宙飛行士となった。1961年8月、ゲルマン・チトフ氏が初の1日飛行を実施し、宇宙で暮らし、仕事をすることが可能なことを人類に証明した。1963年6月、ヴァレンティナ・テレシコワ氏が世界初の女性宇宙飛行士となった。これらの偉業とその後の活動により、ソ連が宇宙分野の大国に、また宇宙飛行士訓練センターが宇宙開拓者の特別な訓練学校になっていった。

 時が過ぎ、宇宙飛行士訓練センターは変わり、宇宙飛行士の試験もそれほど過酷ではなくなった。ただ、訓練期間がかなり長くなった。センターでは本格的な科学研究が行われ、訓練施設も拡大した。訓練ホール「ソユーズ」、ホール「ISS」では、すべてが実物大で、本物の設備がある。これによって、通常時および緊急時の対応を習得できる。宇宙飛行士が船外活動の「練習」を行う水力研究所や有名な巨大遠心機は、目下刷新中。宇宙飛行士訓練センターは航空機も保有している。改造された「IL-76 MDK」では、無重力状態がつくられている。

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