シリアで新たな露米合意

 9月10日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のジョン・ケリー国務長官は、ジュネーヴでの会談でシリアの政府と反政府勢力の間の停戦に関する合意に達した。=

 9月10日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のジョン・ケリー国務長官は、ジュネーヴでの会談でシリアの政府と反政府勢力の間の停戦に関する合意に達した。=

ロイター通信
 9月10日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のジョン・ケリー国務長官は、ジュネーヴでの会談でシリアの政府と反政府勢力の間の停戦に関する合意に達した。合意は「ブレイクスルー(突破口)」とみなされているが、両大国の合意が「地上の」状況を変えうるかどうかは、今のところ不明である。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のジョン・ケリー国務長官による14時間におよぶ会談は、両国はついにシリア問題に関してコンセンサスに至ったとの両氏の声明をもって終了した。 

 両氏は、テロリストらを除くすべての者を対象とした9月12日からの新たな停戦を発表した。また、両国は、今後、テロリストらと穏健な反政府勢力の区分の問題に関する共同センターを創設し、人道支援物資の供給や戦闘員らに対する攻撃の面で調整を図ることになる。

 

先例なき信頼

 シリアの内戦においてバッシャール・アサド大統領を支持するロシアとシリアにおける政権交代を主張する米国が合意するのは、容易ではなかった。ラブロフ氏とケリー氏のジュネーヴでの会談は、2016年の初夏から数えて今回が5回目であり、両氏は、会談のたびにシリア問題をさかんに協議してきた。メディアは、長く難しい交渉の後に達せられた合意を「ブレイクスルー(突破口)」と形容している。

 ロシア国立研究大学・高等経済学院(HSE)・世界経済世界政治学部のセルゲイ・カラガノフ学部長も、合意はシリア危機における重要な契機であるとし、こう述べる。「ロシアは、シリアにおける行動の調整を一度ならず提案したが、米国は、そうした可能性を否認しつづけ、情報交換すら、行われてこなかった。それが、今は、軍事的なものを含む緊密な連携が、初めて問題となっている」

 同氏によれば、露米は、現在、かつてないほど真剣に協力を模索しており、これは、9月12日からの停戦に関する合意が実現されて真の停戦を保障するチャンスが、これまで以上に大きい、ということを意味している(先の停戦は、2016年2月27日に発表されたが、ほどなく状況が悪化し、戦争が再開された)。

 

成功への遠い道程

 専門家らは、露米間の合意が、その重要性にもかかわらず、トルコやイランやサウジアラビアやクルド人組織などの多数のプレーヤーがさまざまな形で巻き込まれたシリアの内戦の停止を保証するものではない、という点を強調しており、アラブ学者でロシア科学アカデミー・東洋学研究所・上席研究員のウラジーミル・アフメドフ氏は、「今のところ、ロシアが米国と合意した内容を受け入れる用意があることを相手側が保証するような、敵対勢力側との文書による合意が存在していない」と述べている。

 アフメドフ氏は、次なる必要な措置は、紛争に参加している中東諸国を含む国々が賛成するであろう国連安保障決議の採択によって、今回の露米合意を確実なものにすることであるとし、「もしも露米だけで行動するならば、和平プロセスは行き詰るおそれがある」と述べる。同氏によれば、地域のプレーヤーなしに露米だけでシリア問題を解決できると考えるのは、誤りである。

 シリア北部におけるトルコの軍事活動、および、イラン軍や「ヒズボラ」その他の外国の部隊の参加が、シリア紛争をいっそう複雑化しており、アフメドフ氏によれば、露米の努力は、テロリストらの潰滅ばかりでなく、すべての外国の軍隊のシリア国外への撤退にも、向けられるべきである。

 

オバマ氏の後継者を待ちながら

 シリア紛争の行方に影響を及ぼしうるもう一つの要因は、バラク・オバマ大統領退任後の米国の政権交代である。セルゲイ・カラガノフ氏は、新政権が、21世紀で初めてロシアにかなり敵対する形で行われてきた選挙戦の末に誕生し、これは、とりわけヒラリー・クリントン氏が勝利する場合にシリア問題に関する露米対話を難しくする可能性がある、という点を指摘しており、「この奇妙に見えるロシア・ファクターをめぐる闘いが、新政権のシリア政策に影響を及ぼすことも考えられる」と述べている。

 ウラジーミル・アフメドフ氏も、同じ見方をしており、同氏によれば、米国の外交は、大統領選挙後に変わる可能性があり、シリアに関する合意は、法的に保証されない場合には「忘れられ」かねない。