米国の核戦力刷新にどう対応?

米軍の第5世代戦闘機F-22ラプター、ルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ空軍基地、4月25日、2016年=

米軍の第5世代戦闘機F-22ラプター、ルーマニアのミハイル・コガルニセアヌ空軍基地、4月25日、2016年=

AP
 米国は2020年より新型戦術核爆弾(自由落下式)B61-12の生産を開始する。欧州に配備されている老朽化した核兵器の後継となるもの。ロシアの専門家らによると、新型爆弾は露米の兵器削減への取り組みの再開を加速することになる。

 米国は欧州における戦術核兵器をアップグレードする準備をしている。 2020年以降、老朽化したB61-3、B61-4、B61-7、B61-10に代えて、新式のB61-12シリーズを配備していくという。

 ロシアNOWはタス通信の軍事専門家、ヴィクトル・リトフキン氏に話を聞いた。氏によると、新型爆弾の最大の特徴は、爆発を制御できる点だ。パイロットは任務に応じて、敵陣地の上空であれ、地上であれ、あるいは地下であれ、遠隔操作で弾頭を起爆できる。

 ロシア大統領府は欧州における戦術核兵器のアップグレード計画について厳しい発言を行うことはなかった。ドミートリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアが米国の動きに対応する必要性は軍事専門家が評価するべきだ、と述べるにとどめた。

 

新型B61の特長

 「B61-12は自由落下式の戦術核爆弾だ。爆発力は、攻撃目標が戦場の人的戦力なのか、居住地区なのか、ミサイル格納庫なのかによって、10〜340キロトンだ」とリトフキン氏。

 施設の攻撃には第5世代戦闘機F-22ラプターやF-35ライトニングII、さらには攻撃機A-10サンダーボルト、多目的戦闘機F-16が使われる。

 「現時点では、先行モデルの弾頭が、ドイツのラインラント=プファルツおよびビュヘル、さらにはオランダ、イタリア、ベルギーの米空軍基地、そしてトルコのインジルリク空軍基地に配備されている」とリトフキン氏。

 米軍が1945年8月6日に広島に投下した原子爆弾「リトルボーイ」の爆発力はおよそ13-18キロトンという。71年前のこの爆発で、15万人以上が死亡している。

 「340キロトンもの爆発力をもつ新型爆弾にどれほどの破壊力があるか想像してみてほしい」とリトフキン氏は付け加えた。

 

ロシアへの脅威はあるか?

 ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所の主任研究員ウラジーミル・ドヴォルキン氏によると、米国の戦術核兵器の近代化は定例行事であり、ロシアの安全保障にとっての新たな脅威とはならない。

 「いかなる兵器にも、臨戦態勢に置くことができる保証期間というものがある。今回のケースも、老朽化した爆弾から新型の、近代化されたそれへの、計画的な交換が始まるだけだ」とドヴォルキン氏。

 氏によれば、原子爆弾は、文明国の手中にある限り、抑止のための兵器であって、攻撃のためのそれではない。「米国がB6​​1の交換を行う。それは、欧州の戦術核兵器のアップグレードの必要性を数十年間忘れるためのことなのだ」とドヴォルキン氏は付け加えた。

 

ロシア側の対抗措置はあるか?

 専門家らによれば、モスクワは何らの軍事的対向措置も新たに取ることはない。

 「ロシアは核戦力の近代化も対空・対ミサイル防衛システムの近代化も計画通り進めていく。こうした措置により、問題への取り組みを、その軍事面から外交面へと転換できるようになる」と「イズヴェスチア」の軍事評論員、ドミートリー・サフォノフ氏。

 氏も言う通り、露米間のいずれの国際合意も、戦術核兵器の数量および性質については規定していない。

現在有効なのは、新戦略兵器削減条約(新START)のみである。本条約の枠内で露米両国は核弾頭の運搬手段を最大700機、戦略核弾頭を最大1550発に制限することで合意した。

「ロシアと米国の新型自由落下式核爆弾は高精度化しており、具体的な軍事的課題に特化している。弾頭の操作はどんどん簡略化されており、そのことが、局地的紛争での使用の可能性を高めている」とサフォノフ氏は付け加えた。

氏によれば、戦術/戦略核兵器の戦術的および技術的特性の問題が、次なる兵器削減合意の基礎となるかもしれない。

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