プーチン大統領を警護するのは誰

マクシム・シェメトフ撮影/タス通信
 ロシア連邦警護庁(FSO)の長官が代わった。ここは大統領の命を守る機関であるが、他に何をしているのだろうか。ロシアで最も秘密めいた特殊機関について、ロシアNOWが特集する。

 FSOは強力、多機能、そして極めて閉鎖的な機関である。ロシアの特殊機関の中でこれほど秘密めいたところは他にないであろう。活動については憶測するばかりだ。任務に関する公開データもないし、一般人が見れる報告も一切ない。FSOを16年率いてきたのは、エヴゲニー・ムロフ上級大将である。ウラジーミル・プーチン氏の長年の盟友であり、プーチン氏と同様、ソ連国家保安委員会(KGB)の出身者である。プーチン大統領は5月28日、ムロフ上級大将を解任した。新長官に任命されたのはモスクワ出身のドミトリー・コチネフ氏。

 ムロフ上級大将の解任理由は、国家機関の年齢制限に達したこと。昨年11月に70歳の誕生日を迎えていたため、マスメディアは長官を代えることが不可避だと書いていた。ロシアで最も影響力のある人物の一人であるムロフ上級大将が、FSOの長官に就任したのは、プーチン氏が大統領になった11日後のことであり、立場はずっと確固たるものだったという。そして今、名誉退職である。

 次の長官についての情報は極めて少ない。コチネフ氏の人物像はよくわからない。クレムリンの公式サイトにも、FSOの公式サイトにも、一言も書かれていない。わかっているのは、FSOの一部である大統領安全局を、2015年末から率いていたということだけだ。今後率いるFSOについては、その閉鎖性にもかかわらず、わずかに情報は多い。

 

「NO.1のボディ」ガード

 FSOのルーツは、ソ連時代から権限の絶大だったKGBの組織の一つにある。この組織は最高指導者の安全を担当していた。現在はFSOの関係者が担当している。その責任が「NO.1のボディ」ガードであることは、何よりもよく知られている。15年続く噂がある。それは大統領の最も危険なパフォーマンス(バイカル湖底までバチスカフすなわち潜水艇で潜る、または戦闘機で飛行するなど)に、FSOがプーチン氏の替え玉を使っているというものだ。

 FSOの関係者は、真っ黒なスーツを着て耳にイヤホンをつけていることもあれば、私服で群衆の中に紛れ込んでいることもある。FSOの関係者は、大統領だけでなく、裁判官、証人、高官、またクレムリンや下院といった施設も警護している。だがこれは多くの課題(と可能性)の一つにすぎない。FSOはムロフ上級大将の時代、その主要なライバルであるロシア連邦保安庁(FSB)と、新たな権限およびロシアきっての特殊機関の地位をめぐり、猛烈に競っていた。そして、勝利したようだ。

 

数十億の管理

 FSOは2000年代半ば、他の特殊機関とともに、大統領の最側近の激しい争いに参戦した。舞台裏の争いは、「NO.1」への近さだけでなく、資金の流れ、資産、資源の管理をめぐっても行われた。2007年、争いは公になり、国内の主要なマスメディアだけでなく、各機関のトップも「特殊機関の内紛」に触れるようになった

 FSOは、FSB(いつもFSOが有利というわけではない)とも、大統領総務局(大統領総務局に対してはFSOが勝利)とも衝突した。争いは国の財産をめぐっても行われた。大統領総務局の管理下には保養所、運輸建設機関、連邦政府の食糧コンビナート、海外の不動産および数十件の開発プロジェクトがあった。RBC紙の報道によると、今日、統一登記簿では大統領総務局の管理下にある大統領邸は一軒もなく、ロシア連邦またはFSOで登記されているという。

 

大統領のための社会学

 数十億の話だけではない。FSOは特殊機関として、ほぼオールマイティである。関係者は捜索活動を行い、盗聴し、手紙のやり取りを調べ、市民を拘束し、家宅捜査を行い、自動車を没収する権利を持っている。

 FSOは国の機関やその他の施設を警護しながら、その周辺の道路に対する責任も負っている。モスクワの道路の12本に1本がその管理下にあり、そこに暮らすことになった住民については、従来から調査書類が集められている。

 FSOはついでに、住民の社会学的調査も行っている。当然ながら、オープンではない。これらのデータは国の指導者のために収集され、そして、大統領、安全保障会議、政府が意思決定を行う際に、これらを参考にすると考えられている。政党、野党の指導者の評価、地方の社会経済状況のモニタリング。もしも知事の誰かが信頼喪失に関連して解任されたとしたら、FSOが動いた可能性が高い。

 最近のFSOの全権拡張の一つは、国家公務員用のインターネットのロシア・セグメントの開発である。暗号化された安全な通信チャネルを担当するのもFSOの関係者になった。

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