制裁でロシアの“東方シフト”が加速する

ロイター通信撮影

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ウクライナ危機後の制裁および西側の投資家の撤退を受けて、ロシアは、東方の近隣諸国との関係を深めつつある。中期的に、アジアは、ロシア製品の主な市場ならびに資本およびテクノロジーの供給源となりうる。

障害の総和 

 米国のバラク・オバマ大統領は、クリミア共和国を併合したロシアに対する新たな一連の経済制裁を発表するなかで、こう述べた。「制裁は、ロシア経済に深刻な影響を及ぼすばかりでなく、世界経済にとって破壊的なものとなりうる。ロシアは、さらなるエスカレーションが自国を国際社会からいっそう孤立させるだけであることを理解すべきだ」。

 アメリカが導入している制裁には、ロシアの一連の高官、国営企業のトップ、および、ロシアの政権と密接な関係にある数人の有力な実業家を対象とした、アメリカ資産の凍結および米国への入国の禁止が含まれている。制裁を受けた唯一の組織となったのは、ロシア銀行。EUも、似たような措置を講じている。また、ロシアは、G8からの除外、投資の促進と保護(米国)および査証制度の簡素化(EU)に関する交渉の停止、ならびに、軍事技術協力の凍結といった制裁に晒されている。

 

格付け引き下げによる影響 

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西側の覇権なき世界

 国際ビジネス界は、一様に、ウクライナをめぐる状況をロシアに関連したあらゆる取引にとっての大きなリスクと捉えている。ロシア経済にとって打撃となりうるのは、グローバル金融市場の反応。ムーディーズやS&Pは、すでにロシアの格付けを下げる可能性を示唆したが、仮にそうなると、国家、および、ズベルバンク(貯蓄銀行)、VTB、VEBといった大手国営金融機関、さらには、連鎖的に、西側において借入を行うすべての会社にとって、国外市場における借入価格が上昇することになる。

 ロシア中央銀行の資料によれば、2014年初めの時点のロシアの対外債務の額は、銀行がほぼ2150億ドル、企業が約4380億ドルだが、向こう二年以内だけでも、銀行はほぼ880億ドル、企業は1820億ドル以上を返済しなくてはならない。現在、政府は、ロシアの戦略的企業の対外債務を肩代わりする場合に備えて準備金を用意している。2008~2009年の危機の際にも、同様の措置が講じられた。

 

ロシア産燃料への依存度低下 

 ロシア企業を対象としたグローバルな金融センターへのアクセスの停止も、西側との関係悪化の結果となりえる。長年、ロシアの多くの会社は、IPO(株式公開)のために、ロンドン証券取引所(同取引所の基本セクションでは、約5000億ドルのキャピタリゼーションのロシア企業53社の証券が取引されている)、アメリカのニューヨーク証券取引所、ナスダックを選択してきたが、今後は、多くのIPOが、廃止もしくはしばらく延期されるかもしれない。もうひとつのマイナスの結果は、資本の流出で、その額は、一四半期で500億ドルに達しうる。

 ロシア産化石燃料への依存度を低下させるEUの志向も、深刻な影響を及ぼすおそれがあり、それは、ロシアに対するより強硬な政策の実施を可能とする。しかし、ロシアに対するエネルギー依存度を考慮すれば、欧州は、すぐにはロシア産化石燃料を手放せない。主な脅威となるのは、考えられる米国からのLNG(液化天然ガス)の輸出の自由化。

 

東方シフト

 どうやら、ロシアは、すでに損失を穴埋めする方法を考えついたらしい。西側の制裁に対抗するには、東方との通商経済関係を発展させることが重要である。香港の投資ブティック「Eurasia Capital Partners」の管理パートナーであるセルゲイ・メン氏は、アジアは実際に欧州市場のオータナティヴに十分なりえる、と確信しており、同氏によれば、東および東南アジアは、化石燃料、金属、化学、食品といった重要なロシアの輸出品にとっての最も急速に発展しつつある市場である。中国は、2009年から、ロシアの最大の貿易相手国となっている(2013年には890億ドル)。また、中国は、ロシアのパートナーに手を差しのべる用意がある。中国は、クリミアの出来事に対する政治的反応は控えめだったが、制裁に晒されるロシアを経済面でサポートする用意がある。

 

露中同盟に追いやるのか 

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日米も日露も大事

 韓国、そして、中国の台頭を極度に懸念する日本、というオータナティヴなパートナーとの協力の強化が、考えられる「保険」となろう。日本政府に助言をしているある専門家は、こう述べる。「安倍晋三氏が新首相の座に就いた後、日本政府は、ロシアとの協力に大きな望みをかけている。狙いは、ロシア極東における日本企業のビジネスを発展させることばかりでなく、中国の原料供給国とならないようロシアを手助けすることにもある」。ロシアおよびウラジーミル・プーチン氏個人との関係を深めるために、安倍氏は、G7加盟国の首脳のうちでただ一人ソチ五輪に出席した。しかし、日本政府に対する風当たりは、現在、強まるばかりである。

 アメリカは、重要な地政学的選択に迫られている。ロシアの孤立を深めるべく日本と韓国にプレッシャーをかけつづけるのか、それとも、ロシアが否応なく中国と手を組むことのないようにもっぱらシンボリックな制裁にとどめることをアジアのパートナーたちに許すのか、という選択に。

 

元記事(露語)