TikTokやYouTubeでは、今、ショート動画をスクロールするのに、この曲を見ないでいることなどほぼ不可能な状態である。あるブロガーはこの曲を、雰囲気たっぷりのメランコリックな動画に使用し、また別のブロガーたちはこのキャッチーなチューンに合わせてサラダ用の野菜を切っている。そして「Piyala」は正真正銘のセンセーションとなった。
この楽曲は2020年にエレクトロ・ヒップ・ホップ・バンド「AIGEL」がリリースしたもの。バンドは、詩人のアイゲル・ガイシナとミュージシャンのイリヤ・バラミヤから成るデュオである。タタール人のルーツを持つアイゲルはタタールスタン共和国のナーベレジヌイェ・チェルヌイ出身だ。
「Piyala」はこのバンドの最大のヒット曲で、同名のタイトルのアルバムの代表曲でもあり、曲はタタール語で歌われている。「Piyala」というのは、文字通り「ピヤラ」という名詞で、中央アジアの陶器のボウルを指す。またタタール語で「Piyala」にはガラス、「ガラスの破片」という意味もある。
アイゲルによれば、曲の歌詞は、愛する人のせいで痛みと傷心を経験する少女について歌われているという。
「Piyala」は元々2020年にリリースされたが、真の成功を収めたのは2023年になってからである。人気の新しいテレビドラマ「Slovo Patsana: Krov na asfalte (少年の言葉、アスファルトの血)」のサウンドトラックに含められてからだ。
ドラマは、ソヴィエト崩壊直前のタタールスタンの犯罪界におけるティーンエイジャーの奮闘について描いたもので、2023年11月にロシアで初めて放映された。「Piyala」はドラマの中で、もっとも緊張感のある場面で使われている。
そして曲は瞬く間にロシアのすべての音楽チャート、そしてヤンデックス・ミュージックやVKミュージックなどのプラットフォームで上位に入り、ロシアのTikTokで大バズり。そしてまもなく、Shazam、Apple Music、Spotifyなど世界的なトップリストで上位に躍り出た。一方、TikTokビルボードトップ50にもランクインしている。