もっとも多く入れられているタトゥーのデザインのひとつで、ロシアの犯罪社会ではよく眼にされる。刑務所に入ったことのある囚人だけが体に教会やクレムリンのタトゥーを入れることができる。彫られたドームの数にも意味があって、タトゥーが入れられた囚人の受刑回数と一致している。
1匹の蜘蛛のタトゥーは、盗賊であることを意味する。上に登っている蜘蛛だとこの人は泥棒専門で足を洗うつもりがないということ。反対に、下に降りている図柄だともう泥棒は止めると誓った人であるという意味である。もし、自分の巣に囚われている蜘蛛は麻薬中毒者を意味する場合もある。
ネコのタトゥーはスリ、 泥棒を象徴している。「KOT」(『ネコ』の意)はロシア語で「Korennoy Obitatel Tyurmy」(生来の受刑者)という文句の頭文字でもある。ネコが鍵を持っていれば、それは空き巣など侵入窃盗の泥棒を意味する場合もある。
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ロシアの犯罪者が入れるタトゥーで、バラは若者のワルを意味する。有刺鉄線が巻かれたバラを入れている人は、未成年の間に投獄されたことがあり、監獄で成人したということだ。このタトゥーが体にある人は少年鑑別所にいた経験があると考えてよいだろう。
このタトゥーが入っていれば、過去に人を刺したことがある人物であることを意味する。一般的にこのタトゥーを入れていれば、その人はとても危険だということだ。
虫のタトゥーは、もう一つのスリや泥棒の象徴だ。ネコのタトゥーとは対照的に、これは泥棒仲間へのメッセージにもなっているーー「Zhelayu Udachnyh Krazh」(盗みが成功することを祈る)。この文句の頭文字「ZHUK」はロシア語で『虫』という意味を持つからだ。
一般的に、囚人が入れる星のタトゥーは、標準的な五芒星より頂点が数が多く、ロシア人犯罪者にとっては自由の象徴となっている。しかしながら、この人気のある囚人のタトゥーの意味するところは、体のどこに入れられているのかで違う。肩にあると、それは犯罪組織のトップである「規律ある泥棒」だ。鎖骨あたりに入っていると、犯罪者は生まれながらに自由だというメッセージを伝えている。一方、膝にあると、その人物は決して刑務所側に屈しないという意味だ。
ロシア語で「SLON」とは『象』のことだ。しかし、ロシアの長い歴史の間に、この言葉は別の意味を持つようになった。たとえば、「SLON」は1923年に白海のソロヴェツキー島につくられた悪名高き「ソロフキ監獄」の頭文字(Solovetskii Lager' Osobogo Naznacheniya)だ。プリズンタトゥーとしても、後に別のことを示すようになる。よく知られた例を二つあげると、「ナイフでおまわりに死を」(Smert’ Legavym Ot Nozha)と「幼いときから不幸せばかり」(S Malykh Let Odni Neschastya)だ。
プリズンタトゥーには指輪を描いたものも多くあり、それぞれが特別な意味を持つ。囚人の指に入れられたタトゥーの意味をすべて理解することができるのは、プリズンタトゥーの専門家だけだ。
ある指輪のデザインは、その囚人は刑務所側の言うことは聞かないということを示し、あるいは、その人物は犯罪者の血を受け継いでおり父親の後を追っていることを意味する。もしくは、有罪判決を受けた殺人犯、また、指輪のタトゥーはその人が属する囚人間の階級を意味する。
このタトゥーはおそらくロシアの犯罪社会でももっとも目にすることが少ないもののひとつだろう。もっとも権威のある囚人のみが肩に肩章のタトゥーを入れることに値するのだ。というのも、この図柄の意味は明確で、救済を完全に拒絶したということを意味する。このタトゥーを持つ人は最も尊敬される危険人物だ。しばしば、肩章のタトゥーを入れた人はもっとも堅固な刑務所から出た人で、おそらく、刑務所での暴動を扇動したか、積極的に支持したということなのである。
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