チュム、ヤランガ、ユルタをモチーフにしたロシアの現代建築

Marina Lystseva/TASS
 ロシアにはシベリアや極北の少数民族の伝統的住居にインスピレーションを受けて作られた建築物が少なくない。  ではどこでそれを見ることができるだろうか?

ノーヴィ・ウレンゴイ空港

 ノーヴィ・ウレンゴイはロシア最大のガス採掘の中心地であり、ヤマロ・ネネツ自治管区の交通結節点である。

 空港のターミナルは遊牧民の伝統的な住居であるチュムの形をしている。建物は極北の気候を考慮して設計されており、暖房完備のボーディング・ブリッジ3つ、バスのための暖房つきトンネル、近代的な光信号設備が整備されている。建設作業は2年かけて行われた。現在は地域最大の空港となっている。

ショッピングセンター「ゴスチヌィ・ドヴォル」(ハンティ・マンシースク)

 シベリアのハンティ・マンシースク(人口10万人強)には地元の民族色を感じさせる興味深い施設がいくつもある。中でも印象深いのが、街の中心部にある「ゴスチヌィ・ドヴォル」である。2006年に建設された。

 設計したのはモスクワの有名な建築家ウラジーミル・クバソフ。モスクワのVDNKh(全ロシア博覧センター)のパヴィリオンやゴーリキー名称モスクワ芸術座を設計したことで知られる。

 建物の中央部分がチュムのようになっており、鏡のパネルが張られている。メインの入り口はモザイク画で飾られ、吹雪の中の人、トナカイ、鳥が描かれている。

観光施設「ユゴルスカヤ・ドリーナ」(ハンティ・マンシースク)

 ハンティ・マンシースクにはもう一つ、面白い建物がある。「ユゴルスカヤ・ドリーナ」は、宿泊施設と健康センター、スポーツ複合施設を備えたものである。チュムのような形になっており、ハンティ人とマンシー人の伝統的な色である白、青、緑で仕上げられている。

 施設はタイガの自然の中に建てられており、地元の人々の間で人気を博している。現在は修復中で、2023年末に完了予定。

「ユゴルスク征服」の塔(ハンティ・マンシースク)

 街でもっとも高い建造物である。高さ62メートルのこの塔は2003年にハンティ・マンシースクに建てられた。北方のチュムのような形をしている。塔の中には展望台、博物館、レストランがある。

「ウラサ・モール」(ヤクーツク)

 ヤクーチヤは寒暖の差が激しい大陸性気候であり、冬は非常に寒く、夏は短いながらも非常に暑い。そんなヤクート人には伝統的な住居が2つある。防寒のためのバラガン、そして避暑のためのウラサである。いずれの住居も特徴的な形をしており、現代のヤクーツクの建築に取り入れられることも多い。

 ヤクーチヤの首都ヤクーツクでは、2020年の末にウラサの形をしたショッピングセンターがオープンした。その名も「ウラサ」で、中にはファーマーズマーケット、ショップ、イベント会場などが作られている。設計士らは、訪れる人々にアットホームな気分になってもらえるようウラサの形にしたと話している。

トモット鉄道駅

 ヤクーチヤ南部のトモット市には、伝統家屋の影響が感じられる変わった鉄道駅がある。2013年に地元の建築家によって作られた。ウラサの形をしているだけでなく、ヤクート独特の鮮やかな装飾が施されている。

民俗学複合施設「ウス・ハティン」(ヤクーツク)

 ヤクーツク市近郊のウス・ハティン(3本の白樺の意)には、冬と夏のヤクートの住宅でできた建築民俗学複合施設がある。

 1年間で、新年の祝う「ウィスィアフ」の数日しか訪問客を受け入れない。 ウラサやバラガンの中では、さまざまなイベント、ワークショップが開かれているほか、事務所も置かれている。驚くべき建築物である。

ベンチ(ムールマンスク)

 街の中心部にチュムの形をしたベンチという芸術作品がある。信じられないかもしれないが、実はこれは地元の女子中高生の設計で作られたもので、「北方の太陽」と名付けられている。街の子どもコンクールに出品されたもので、2019年に設置された。夜になると美しくライトアップされる。

熱帯植物園「ヤランガ」(コガルィム)

 2024年、ハンティ・マンシ自治管区のコガルィム市に、熱帯植物園がオープンする。外観は伝統的な移動住居を思わせる形をしている。中には400種以上の花や木が栽培展示されることになっている。

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