ロシア人の家に招かれたときには、お茶うけのお菓子やお酒のボトルなど、何か手土産を持っていかなければならない。もしその家に子どもがいるなら、子どものためのプレゼントも持っていくと喜ばれる。もしその家の主人の妻の誕生日でないならお花は必要ないが、もし誕生日に招かれたなら、必ず偶数の本数のお花を持っていくこと。ロシアでは奇数の花は弔いのときにしか持って行かない。こうした重要な慣習で間違いをすると、大きな代償を払わなければならなくなる。ロシア人というのはとても迷信深いからである。
今でも信じられているロシアの古い迷信に敷居に関するものがある。それはアパートでも戸建ての家でも同じで、敷居をまたいで何かを渡したり、受け取ったりしてはならないというものである。敷居というのは、家と外界との境界線と考えられているためであり、プレゼントを渡すのは家に入ってからでないといけない。
ロシアの床はほぼ1年中いつでも冷たい。そんなわけで、どこのアパートの床にもたいていカーペットが敷いてあり、そのカーペットを汚したいと思う人はいない。そこで、あなたがロシア人の家を訪ねたときに、もし家の主人が「靴を履いたままでいいですよ」と言ったとしても、靴は必ず脱ぎ、スリッパを貸してもらうこと。もしもスリッパがない場合(大きなパーティで、招待客がたくさんいるときにはよくあることである)でも、靴は脱いだ方がよい。ロシアは東洋の国であり、ロシア人は「外靴」を家の中では絶対に履かない。ロシアには家用の靴かスリッパがある。
あなたがロシア人の家を初めて訪れたとき、家の主人はきっとアパートの周りや家の中、あるいはダーチャ(郊外のサマーハウス)の敷地を案内してくれるに違いない。そのとき、たとえば屋根から水が漏れていたり、壁に穴が開いていても、それを指摘するのはやめること。出された料理についても同様だ。ロシアではその家の人が作った料理に文句をつけたり、助言をしたりするのは、とても失礼なことだと考えられている。
たとえ、あなたがその家の友人であっても、家計に関するテーマはロシア人の間ではタブーとされている。この点においては西側の習慣とは対照的である。そこで、収入やお金に関する話をするのはやめ、また自分の金銭的な問題も包み隠しておいた方が良い。それはロシア人が自分たちの給料を恥ずかしいと思っているからではない。収入は人それぞれであるのだが、自分の裕福さを自慢するべきではないという、これも古い迷信があるからである。
ロシア人の家を訪れるときには、食事をせずに行く方がよい。それはロシア人の家に行けば、4つのコースにサイドディッシュのついた料理を出される可能性が高いからである。そして主人はそのすべてを食べるよう勧めるだろう。それぞれのお皿から一口だけでもいいから、すべての料理を食べ、おいしいと褒めよう。きっとホストを満足させるに違いない。
もしあなたが何かしらの手料理を持っていくことになっていなかった場合、食べ物を手土産にするのはやめたほうがよい(デザートやプレゼントとしてのお茶うけならよい)。その家の主人の計画した料理に介入するのは失礼だと考えられている。またテーブルの上を片付けるのを手伝う場合も、手伝っても良いか尋ねたほうがよい。自分の家で、来客が自分の家のように振る舞って、手伝うのが好きではないという人もいるからだ。
そして、もちろん、家の主人が飲み物(酒)を勧めたときには断ってはならない。「今日は車で来たので」と断ることもできるが、タクシーを捕まえればいいとか泊まっていけばいいと必ず言われる。いずれにしても、いかなる理由も通用しない。酔っ払いたくない場合には、その家の主人のスピードに合わせることなく、ショットグラスに1杯か2杯飲めば、十分である。
奇妙なことに、招かれた家には何も食べ物を持って行かないのに、帰りにはその家から何かしらの手土産―ピローグ(パイ)やヴァレーニエ(ロシアのフルーツジャム)、あるいは保存食などを持って帰ることになる。そのガラス瓶が古くさくても気にすることはない。中にはとってもおいしいものが入っているはずだから。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。