ロシアの主要な料理本「おいしくて健康的な食べ物について」を信じるならば、1937年にソ連にあった缶詰の種類はおよそ700にも上った。「ロシア・ビヨンド」では、船乗りやダイバーたちが緊急事態に必要とした水の缶詰についてお伝えしたが、当時のちょっと変わった缶詰はこれ以外にもあった。
1. そばの実の粥
おそらく、そばの実がこれほど愛されている国はロシア以外にないだろう。ロシアでは、そばの実は実にさまざまな形で食されている。砂糖を加えたり、塩を加えたり、ときにはカツレツが作られることもある。そばの実は煮なくても、熱湯で数時間蒸すだけでも食べることができる。そんなそばの実の缶詰が、時々ソ連の露店で売られていた。一般的なものは豚肉か牛肉と一緒に缶詰にされていた。これをよく買ったのはツーリストである。このようなカーシャ(粥)は長時間歩いた後にお腹を満たしてくれ、温めるときは缶に10分ほど熱湯をかけ、そのまま食べることができた。そこで人々の間では、この缶詰は「観光客の朝食」と呼ばれていた(このような名前で売られている缶詰もあり、煮込みや魚肉の団子が入っていた)。材料には添加物は入っておらず、しかしそれでも2年は保存することができた。缶詰の粥は今でも売られており、そばの実だけでなく、パール麦やお米で作られたものもある。
2. 白樺の樹液
白樺の樹液を集めるのは多くのソ連市民にとっての楽しみであった(今でも楽しんでいる人もいる)。しかし、春の森に朝早く出かけていきたくはないという場合は、近くの店に行けば、この樹液を買うことができた。今のフードコートのように、コップに注いでくれるところもあれば、缶詰に入って売られているところもあった。
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3. マカロニ
缶詰に入ったマカロニは、女性を「キッチンの奴隷」から解放するという問題を解決するために作られたものである。この半加工品は、1950年台の末に缶詰のカタログに加えられるようになったものであるが、肉が一緒に入っており、牛肉入り、豚肉入り、チキンのパテ、チキンのラグーなどのマカロニが売られていた。
4. カニの缶詰
ソ連の缶詰の大部分は魚を使ったものであった。オイルサーディン、ゴビウスのトマトソース漬け、カラフトマスの水煮などである。しかし、このほかにソ連では今では高価なカムチャツカのカニも缶詰にした。カムチャツカにはカニを漁獲する特別な船があり、海に浮かぶ缶詰工場として機能していた。
5. 鯨肉
鯨肉産業がソ連で禁止されたのは1987年であるが、それまでは鯨肉の缶詰が販売されていた。トリヤッチのブロガー、マクシム・マリャヴィンさんは、「鯨肉の缶詰を何度か食べた。牛肉の煮込みのような味だったが、食感はもっと柔らかかった。そして肉だけで作られていた。それから何度も店の棚を探してみたが、それからは一度も見たことがない。どこかに消えてしまい、それから店に並ぶことはなかった」と書いている。
6. オキアミ
オキアミというのは、エビに似た小さな甲殻類で、主に餌として用いられていたものである。しかし1960年代、ソ連はこれを「オケアン」というペーストとオキアミの身の缶詰にしようと考えた。最初は多くの人々がこのオキアミで何を作れば良いのか分からなかったが、宣伝のおかげで、皆が食べてみることになった。そして、パンに塗るおいしくて栄養のあるペーストができたのである。材料はオキアミと塩のみ。オキアミの身は小さなエビのようで、味はより塩っぱく、「魚」っぽかった。そこでシーフードが好きな人たちの間で評価されることとなったのである。
7. キンコ属
もっとも奇妙な(しかしながら人気のあった)ソ連の食品の一つが、キンコ属あるいはナマコである。見かけはあまり美しいものではなかったが、この軟体動物は、甲状腺に問題を抱える人に効能があった。生の姿を見ることはなかなかなかったが、缶詰はときおり、魚売り場でみることができた。
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8. ピーマンの肉詰め
お米と挽肉を詰めたピーマンは今でもロシアでは非常に人気のある料理である。ソ連時代、ピーマンの肉詰めは半加工品の状態で製造されており、温めればすぐに食べられるようになっていた。
9. ボルシチ
ソ連時代、ロシア人が大好きなスープであるボルシチも缶詰に入って売られていた。中に入っていたボルシチは、ビーフブイヨンにビーツ、キャベツ、ジャガイモが加えられており、すべての正しいレシピ通りに作られたものであった。ボルシチ以外にも、シチー、ウハー、ラソーリニクなど、ロシアのその他の伝統的なスープの缶詰もあった。
10. ビーツ
多くのロシア人がズッキーニやナスのイクラ(マッシュ状態にしたもの)の味を覚えている。この缶詰はソ連時代、とても一般的なものであった。しかし、これらの野菜以外にも、ビーツの缶詰というのもあった。ビーツは潰したものだけでなく、カットして酢漬けされたシンプルなものもあった。