ロシアでは3人に1人が自分の車を持っている。2021年初め、ロシアで登録されている乗用車の数は4500万台だ。そのうち3分の1がロシアの自動車メーカー「ラーダ」の車である。現在2番目に人気なのはトヨタで、ロシアに400万台以上がある。中でもRAV4とカムリが最も人気だ。次に人気なのがヒュンダイ(現代)とキア(起亜)で、ロシアにそれぞれ200万台以上が存在する。
3人に2人が自分の車を持つ米国や欧州の大半の国と比べて、ロシアの自動車市場はまだ開拓の余地があり、発展を続けている。ロシアは外国の自動車メーカーにロシア国内で車を製造させるため、輸入車に比較的高い関税を掛けている。結果として多くの外国の自動車メーカーが生産をロシアに現地化し、場合によってはロシアの道路事情やロシア人の好みに合わせた改良を施している。
ロシア人は低価格のクロスオーバーやセダンを好む。ハッチバックやステーションワゴンはさほど一般的でなく、小さな電気自動車はほとんど見かけることがない(ロシアの電気自動車はわずか11000台で、うち9000台が日産リーフだ)。
「ロシア人がハッチバックに関心を示さないのは、社会的な地位の高さと結び付かないからだ」と自動車市場の専門家、アレクセイ・コジュホフ氏は言う。彼によれば、ソビエト時代、車体の長いセダン「ヴォルガ」が上流の車として力の象徴と見なされた。この連想が後の世代にも受け継がれているというわけだ。
メーカーはロシア市場に合わせて安価なセダンやSUVを作ってきた。欧州ビジネス協会によれば、2021年上半期に売れた新車のうち約45パーセントはクロスオーバーだった。
2021年にロシアで最も売れた車
1. ラーダ・グランタ
ロシア市場で最も素朴かつ安価な車、グランタは、トリヤッチのアフトヴァースで作られている。顧客の評価として多いのは「信頼できて問題がない」や「大きな幻想は抱いていなかったが、期待通りのものだった」などだ。エアコンなしのセダンは56万ルーブル(約92万円)で、熱線入りガラスを持つラグジュアリーモデルは78万ルーブル(128万円)だ。
2. ラーダ・ヴェスタ
ラーダの最新モデル、ヴェスタは、セダンとクロスオーバーとして設計されているが、スポーツタイプもある。多くの顧客のニーズを満たし、かつ外車よりも安い。「買った時は、これがアフトヴァース製で、将来的に問題が起こるかもれないと分かっていたが、この美しい車を買いたいという思いが勝った。それに、どうしてもこの予算で新車を買いたかった」とロシアのドライバーは綴っている。彼は中古車を買うことは望んでいなかった。
マニュアルトランスミッションでエアコンとエアバッグ付きの最も単純なモデルは79万5000ルーブル(130万円)で、最も高価なスポーツタイプは120万ルーブル(197万円)だ。
3. ヒュンダイ・クレタ
このクロスオーバーはこのクラスではロシアで最も安価な車の一つだ。価格は120万ルーブル(197万円)からで、最高級モデルで200万ルーブル(328万円)ほどである。「1.6リッターエンジンのクレタに乗るドライバーの多くは、動きが鈍いことを不満に感じている。私はレーシングカーを探していたわけではないので、この車で満足している。私にとって最優先事項は四輪駆動であることで、十分なはたらきを示している。今や私はいつでも自然の中に行くことができ、泥道にはまり込む心配もない」とウラル地方在住のドライバーは綴っている。
ヒュンダイはロシアで初めてディーラーを通さずに工場から直接購入できるオンラインセールスを始めたメーカーでもある。
4. ヒュンダイ・ソラリス
ソラリスはアクセントの派生版で、2010年にロシア向けに現地化されたものだ。サンクトペテルブルクで組み立てられている。ロシアのドライバーはこのモデルに満足しているようだ。低価格のセダンで、気温の変化や厳しい天候に強く、概して信頼できる。「ボンネットの中を調べることなく最低でも5年間は使いたいと考えていた」と、あるドライバーは購入理由を記している。
ソラリスの価格は89万ルーブル(146万円)から130万ルーブル(213万円)だ。
5. キア・リオ
キア・リオもまた、2021年からサンクトペテルブルクで生産されており、ソラリス同様、ロシアで人気のセダン・モデルのみが販売されている。ロシア版リオのデザインと性能は他国で売られているものと若干異なる。多くのドライバーが、暖房が良いこと、氷点下30度でもエンジンが動くことを指摘している。この結果、この車はロシアで最も売れ筋のモデルの一つとなった。価格は95万ドル(155万円)から130万ルーブル(213万円)だ。
6. フォルクスワーゲン・ポロ
欧州で売られているポロはすべてハッチバックだ。しかしロシアのフォルクスワーゲンはこの伝説的なモデルをロシアで最も人気のセダンの一つに作り変えた。「これこそ必要な車だ。トランクは大きく快適だ。車内の空間は前部も後部も広い。乗り心地は悪くなく、同じクラスの他の車よりも良い」とあるユーザーは綴っている。
セダンのポロはカルーガ州(モスクワから約200キロメートル南西)の工場で生産されている。最も安いモデルは100万ルーブル(164万円)で、最も高いモデルは190万ルーブル(311万円)だ。
7. ラーダ・ニーヴァ
ソビエト製初のSUVは今なお生産が続いており、非常に安く、オフロード走行に強いため、根強い支持層を持つ。多くのロシア人がこれに乗って遠くのダーチャ(別荘)に向かう。
最も単純なモデルで66万ルーブル(108万円)だ。最も高価なモデルはニーヴァ・トラベル(正式名称はシボレー・ニーヴァ)と呼ばれ、価格は99万3000ルーブル(163万円)である。これには、過酷な道路状況で水に呑まれた時のためのシュノーケルが備わっている。「その情熱は泥道と強靭なサスペンションだ。路上の穴を『呑み込み』、凹凸に気付かない」と極東アムール州のドライバーは記している。しかし、顧客らは車内が特に快適ではないこと、燃費が悪いことも指摘している。
8. シュコダ・ラピッドPA II
これも手頃な価格のセダンで、多くのロシア人の心をつかんでいる。「新しいラピッドは運転が快適で、多くの機能が自動化されている」とサンクトペテルブルクのドライバーは話している。また彼らは「ハンドルを回してアクセルを踏み、高速道路でクルーズコントロールをオンにする。すると後は車が自分自身で全部やってくれる」。
シュコダ・ラピッドはカルーガの工場で生産されている。最も単純なモデルは99万ルーブル(162万円)で、それでもタッチパネルとブルートゥースが備わっている。最も高価なモデルは140万ルーブル(229万円)だ。
9. ルノー・ダスター
ルノーの車はモスクワで組み立てられている。長年、ルノーで最も人気のモデルはセダンのロガンだったが、今年SUVのダスターがその座を奪った。「もはやただ急ぐだけでない人生を誰が想像できるだろうか」とあるドライバーが冗談交じりに記している。「ダスターはファミリーカーだ。渋滞に巻き込まれても楽しく過ごせる」と別のユーザーも書いている。
マニュアルトランスミッションの最も単純なモデルは100万ルーブル(164万円)で、最も高いモデルは四輪駆動で、価格は倍になる。
10. ラーダ・ラルグスVP
このリストで唯一のワゴン車で、これもロシアのアフトヴァースが生産している。ラルグスは低価格の車で、ダーチャ愛好家の間で人気がある他、商用にも使われている。「主な長所はサスペンションと路面での安定性だ」とチュメニ(シベリア)のドライバーは綴っている。「ラルグスなら冬に高速道路を走っても心配ない」。
どのモデルもマニュアルトランスミッションで、78万ルーブル(128万円)から97万8000ルーブル(160万円)だ。