1. リペック・トラクター工場では1960年代以来、対空ミサイルシステムの車台の生産に加えて、精緻に再現された模型自動車を作っていた。この工場では特に、ZIL-151やZIL-130を模した、車体が傾斜するトラックのおもちゃを生産し、これは当時ソ連のほとんどすべての砂場で見ることができた。そして、良い状態で保存されたものがいまも数多く残されている。
2. ソ連時代、もっとも人気があった金属製のおもちゃの兵隊は、トゥーラ薬きょう工場で作られていた。この工場は今ではロシア最大の弾薬製造工場になっている。
3. オスタシコフスコエFSUE「スヴェズダー」(現在はロシアの国営コングロマリット、ロステックの一部)では、おがくずを詰めた動物のぬいぐるみを作っていた(この工場で作られたおもちゃでもっとも人気があったのは電動ぬいぐるみ犬だった)。
4. ブリャンスク自動車工場(現在はS-400やS-500防空システムを製造しているアルマズ・アンティ・グループの一部)は、ソ連の男の子ならほとんど誰でも持っていた軍事車両や船舶のおもちゃを作っていた。
5. ヴォロネジ航空機工場(VASO、現在は国営コングロマリット、ロステックの中の統一航空機製造会社の一部)は動物やおとぎ話の登場人物の人形やセルロイド製のおもちゃを作っていた。もっとも人気があったのは、プラスチックの人形や民話の登場人物の人形だった。
6. チェボクサルィ共同生産組合「テフノディナミカ」(ロステックの一部)は、1960年以降、ロシア製の潜水艦用の音響保護システムとともに、子ども用のゴムボールを製造している。この工場はこれまでしばしば、この製品を、英国、ドイツ、オーストラリア、サウジアラビア、クウェート、モンゴルなどに輸出してきた。
7. もう一つの主要軍需会社である、ウラル車両工場(ロステックの一部)は、戦車や装甲車両の製造で知られている。この工場では、最新式T-90やT-14「アルマアタ」などのロシア製戦車を製造している。さらに驚くべきことに、この工場の傘下にあるヴォルチャンスキー機械工場では、木製の人形の家やゲーム盤、子ども用の家具を軍需製品とともに生産している。
8. タンボフ弾薬工場は、60年代から今日まで、すばらしい起き上がりこぼしをつくっている。この起き上がりこぼしの原理は次のようになっている。音が鳴る仕掛け(円筒状共鳴装置の中にいくつかのワイヤーと振り子がひとつ仕込まれている)が人形の中に組み込まれ、鋳鉄製の錘が円筒の下部につけられて起き上がりこぼしを安定させているのである。
9. 現在、タンボフ弾薬工場では、ウサギ、雪だるま、リス、クマ、ワニ、トラの子、アヒルの子などをモチーフにした起き上がりこぼしをつくっている。この他、まばたきをする起き上がりこぼしの人形なんていうものもある。この工場では限定品として、ロシア伝統のホフロマ塗りやグジェリ焼き、ウラル・シベリア様式描画の模様を職人が手描きした起き上がりこぼしも作っている。
10. 2018年に開催されたFIFAワールド杯を記念してつくられた、マスコットキャラクター「オオカミのザビヴァカ」の起き上がりこぼしや、ロシア陸軍の星や紋章がついた緑の迷彩服を着た「やさしいマーシャ」の起き上がりこぼしもある。