自宅での隔離生活に退屈した多くのロシア人は数々のチャレンジに参加した。しかし、そんな中で、パンデミックが終焉した後も一つの文化現象となったのがこの「名画再現チャレンジ」である。この芸術は世界中でますます人気を博するようになっている。
チャレンジ「イゾイゾリャーツィア」(イゾは造形芸術を略したもの、イゾリャーツィアは隔離を意味する語)とは、世界的な名画を自宅にある日用品で再現するというものである。加工を行わずに撮影することと、すぐそばにある日用品を使うことがルールである。
一部のユーザーは、この課題に真剣に向き合い、名作をできるだけ忠実に再現した。
一方で、とにかくユーモアに重点を置き、似ている別のものを使い、絵の雰囲気を伝えるような作品に仕上げたものも多い。こうした作品は特に人気を博した。
「イゾイゾリャーツィア」と名付けられたフェイスブックのグループは2020年3月20日に開設されたが、4月2日には数十点もの「再現作品」が投稿され、4月17日には50万点に達した。
「イゾイゾリャーツィア」の管理人たちは、ロシア・ビヨンドの取材に対し、「このグループは、パンデミックから偶然生み出された素晴らしい産物です。友人たちを楽しませようと始めたことが、一瞬にして50万人ものメンバーが集まるグループになったのです」と話している。
「イゾイゾリャーツィア」には外国人も積極的に参加した。しかも、管理人たちは特にこのグループを広めようと宣伝したりしたわけではない。プロジェクトには12人のボランティアが協力し、いまも同じ数の管理人が作業を続けている。
「わたしたちの課題は、すべての時差をカバーすることでした。そこで、管理人の中にはアメリカやニュージーランドに住んでいる人もいます」とグループの代表は明かしている。
参加者たちが取り上げる作品の数と多様性は幾何級数的に増えた。とはいえ、やはり世界的に誰もが知っている絵画や彫刻は、題材としてもっとも人気があった。
中でももっとも多かったのが、オランダのヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」で、2021年にASTから出版された、優れた作品を集めた作品集の表紙にも選ばれている。
実に多くの参加者が再現に没頭した。ロシア・ビヨンドの編集者であるマリア・グリゴリャンも傑作を生み出すため、家族を巻き込んで作品作りに励んだ。結果、母親の首飾りは使えなくなったという。グリゴリャンは作品づくりの裏話をネットのユーザーたちと共有している。(名画再現の詳しい体験談についてはこちらから)。
サンクトペテルブルクのリーザ・ユフネワさんは1年間、毎日、何かに姿を変えていたという。「とても面白いアート日記ができました」とリーザさんはフェイスブックに綴っている。しかも、自主隔離は1日もせず、2カ所の仕事を掛け持ちし、旅行もしたと打ち明けている。肖像画を再現した作品群は、彼女にとって純粋な芸術への献身である。
イゾイゾリャーツィアはフェイスブック以外の場でも取り上げられた。グループは「ルーネット」賞を受賞し、モスクワ・アーバン・フォーラム・コミュニティ・アワード2020の「ともにコロナ撲滅を」賞にノミネートされた。さらにグループは、一コマではあるが、グーグルの「今年のトレンド」でも紹介されたほか、ジャーナリスト、レオニード・パルフョーノフの伝説的テレビ番組「ナメードニ」でも取り上げられた。
イゾイゾリャーツィアはまた、プーシキン美術館とも共同プロジェクトを実施し、入賞作品が入り口を飾った。
多くの組織から高い評価を得たグループだが、管理人たちは、自分たちにとって重要なのは、困難な時期に世界中の数百人、数千人の人々を支えたことだと語っている。
グループは今も存在し、毎日、ますます素晴らしい新作品が続々、投稿されている。
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