ロシアのバシコルトスタン共和国では、2月5日から「コロナ罹患証明書」あるいは「ワクチン接種証明書」と呼ばれるものが交付される。つまり、新型コロナウイルスに対する抗体を持っているということを証明する書類である。この証明書を受け取ることができるのは、すでにコロナに感染し、回復した人と、ワクチンの接種を受けた人である。共和国当局はこの証明書を所持している人に対しては、特定の施設での割引などの特典を与えると約束している。しかし、世論調査では、ロシア人の多くがこの証明書には懐疑的だ。
新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の接種を受ける男性、クラスノダール地方
Vitaliy Timkiv/Sputnik証明書を所有するには、共和国の公共サービスのホームページからQRコードを読み取り、それをスマートフォンに保存する。ワクチン接種をしたバシコルトスタンの住民には、2回目の接種から21日後に自動的に送付される。この記事を執筆している時点で、バシコルトスタンではおよそ3,000人がロシア製ワクチン「スプートニクV」の2回目の接種を終えており、7,500人が2回目の接種を待っているところだという。
コロナウイルスに感染し、回復し、証明書の交付を受けたい場合は、共和国で指定された病院で抗体検査を受けなければならない(料金はおよそ1,500円)。そしてその結果は、公共サービスのサイト上の個人アカウントに自動的に反映される。
ワクチンを接種した人が受け取る証明書の有効期限は1年、回復者の証明書は3ヶ月となっているが、回復者への証明書は、抗体検査でIgG抗体値が10U/ml以上であることが認められた場合に限られる。
マスクをつける高齢者はモスクワのコローメンスコエ公園で散歩している。
Mikhail Metzel/TASSバシコルトスタンでは、現在、65歳以上の住民には自己隔離体制が敷かれているが、この証明書があれば、自由に外出することができるようになる。またこの証明書を所持している人は、稼働率が30%以下のカフェ、コンサート、劇場、映画館などに出かけることができることが法で認められる。また共和国当局は、これ以外にも、スイミングプールやジム、博物館、劇場、共和国内のサナトリウムでの割引を提供するとしている。また教師はこの証明書があれば、3日間の追加休暇を取ることができる。
一方で、証明書があっても、公共の場でマスク着用の義務が免除されるわけではない。
新型コロナウイルスPCR検査を行う看護婦、タンボフ
Aleksei Sukhorukov/Sputnikロシアでもバシコルトスタンのような証明書の発行を計画している地域は他にはない。ロシア連邦議会のワレンチナ・マトヴィエンコ上院議長は、1月20日、「ワクチンは市民の間に不平等を生むために使われるものではない」と述べ、ワクチン接種は自由意志によるものだと強調した。一方で、政府は、ワクチン接種を受けた人を電子登録システムで管理していくともしている。
これを前に、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアや外国での出入国の簡素化を目的に、ワクチン接種の国際証明書を発行について検討していたことを明らかにしつつ、現時点では公式なものではないと述べていた。
一方で、各地域がそれぞれの方策を打ち出している。たとえばサハリンでは、ワクチン接種を行った人にはデジタルバッジを交付するとしている。サハリンではおよそ2,000人がすでにワクチンを接種した。
ワクチン「スプートニクV」の2回目の接種を受けた人は、公共サービスのホームページから電子証明書を受け取ることができる。ただし、現時点では証明書を持っていても何か特典があるわけではないとのこと。
ヴォルゴグラードの病院で新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の接種する看護婦。
Kirill Braga/Sputnik多くのロシア人がこの書類については懐疑的な見方をしている。というのも、証明書を持っていないからといって、何か生活に不都合が生じるとは考えていないからである。1月半ばにインターネットサイト「スーパージョブ」上で実施された調査によれば、59%の回答者がこうした証明書には反対すると答え、12%が支持する、およそ30%が分からないと答えた。反対と答えた人の理由は、抗体に関する情報は医療上の秘密であるというものである。一方、証明書の所持を支持すると答えた人の多くは、仕事や旅行のために何度も、新型コロナの検査を受けなければならない人であった。
公式データによれば、1月13日時点で、ロシアでは100万回以上のワクチンの投与が行われたとされているが、「スプートニクV」ワクチンが有効となる2回の接種を終えた人が何人で、まだ1回しか接種していない人が何人かというデータはない。ロシアでは、すでに650万回分のスプートニクVが製造されており、2021年3月末までにさらに3,300万回分が製造される予定である。また2月には2つ目のロシア製ワクチンである「エピヴァクコロナ」の大量生産がスタートする。国内では、1月18日からワクチンの集団接種が始まっており、希望者は誰でもワクチンを接種することができる。
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