アイスホッケーのユニフォーム(背番号は11番)を着たプーチン大統領が、「赤の広場」のアイスリンク脇の小さなカフェに立ち寄る。塩をまぶした茹でたトウモロコシを見て、大統領は、「ライバル」のサクソフォニスト、イーゴリ・ブトマンにこう言う。
「私はトウモロコシを食べたし、ショイグ(*ロシア連邦国防相――編集部注)はドーナツで腹ごしらえした。今度は君たちをやっつけてやるぞ」
「はあ、でも私もトウモロコシは食べましたよ。ゲンナジー・ニコラエヴィチ(*ロシアの億万長者ゲンナジー・ティムチェンコ――編集部注)は、ドーナツも食べたな」
「なるほど、でも、こっちのドーナツのほうが大きいよ」とプーチン大統領は答えた。
休憩中にちょっと会話した後で、大統領は数回ゴールを決め、彼のチームは8:5のスコアで勝った。
露紙「コメルサント」のジャーナリスト、アンドレイ・コレスニコフによると、2019年12月末に「赤の広場」のスケートリンクで、新年の前祝のホッケーの試合があった。この試合にプーチン大統領は2017年から毎年参加しており、すでに年末年始の恒例イベントになっている。彼とプレーするのは、大臣閣僚、財界人、ホッケーの往年の名選手たち。
2019年には試合前に、オリンピックのアイスホッケー・チャンピオンでスタンレー・カップの優勝者であるワレリー・カメンスキーが、大統領といっしょにウォームアップした。
「我々はいっしょにプレーする。大統領が良いプレーをできるように、我々は努めている。実際、今日の試合はその成果を見せてくれたと思う。大統領は素晴らしいプレーをした。彼のスケジュールは厳しいが、それでも良いホッケーを見せてくれた」
カメンスキーは、国営テレビ「第1チャンネル」のインタビューで、プーチン大統領の試合ぶりについてこうコメントした。一方、大統領自身は試合後、ここ1週間は毎日4~5時間しか寝ていないので、十分な睡眠が取れていないと不満を漏らした。
2020年11月末、ウラジーミル・ペスコフ大統領報道官は、コロナウイルスの蔓延にもかかわらず、大統領が新年の試合に参加する可能性はあると述べた。
「通常、それは年末に臨機応変に計画される。今年はまだ計画はない。しかし、その可能性はある。屋外で行われることを考えると、一定の注意を払えば、安全に行えるだろう」。ペスコフ報道官はこう語った。
サンクトペテルブルクの「主の変容大聖堂」(救世主顕栄大聖堂)でクリスマスを祝うプーチン大統領
Kremlin.ruロシアでは、正教会の降誕祭が、ユリウス暦に基づき1月6日から7日にかけての夜に祝われる。プーチン大統領のもう一つの毎年不変の行事は、さまざまな都市の教会で降誕祭の礼拝に出席することだ。
大統領は、サンクトペテルブルクの「主の変容大聖堂」(救世主顕栄大聖堂)で何度かクリスマスを祝ってきた。生後1か月半のときに洗礼を受けたのがこの教会だったからだ。毎年、大統領は他の信者たちといっしょに礼拝に耳を傾け、蝋燭に火を灯し、そして信者たちにお祝いの言葉を述べる。
「降誕祭おめでとう。新年おめでとう。ご健康とお幸せをお祈りします。おめでとう」。2020年1月7日の礼拝で、プーチン大統領はこう述べた。
プーチン大統領は、ソチ市、トヴェリ州、コストロマ州、カレリア、スーズダリ、ヴェリーキー・ウスチュグでもクリスマスを祝っている。2006年には、極東のサハ共和国の教会で降誕祭を祝ったが、このとき、当地の気温は-46℃だった。
2006年1月7日。ヤクーツクの教会で降誕祭を祝ったプーチン大統領
Reutersジャーナリスト、アンドレイ・カレスニコフの回想によると、 大統領はこのとき、蝋燭に火を灯した後、子供たちに囲まれて40分ほど立っていたという。以下は、その回想からの引用だ。
「あの人はあそこで何をやっているのかね」。背の低い年輩のヤクート人女性が、思い切り背伸びしながら、私に尋ねた。「祈っているのかね」
「蝋燭を持っていますよ」。私は答えた。
「へへえ!」。彼女は感心しながら囁いた。
数分後、彼女はあちらこちらに頭を向け始めた。
「まだ立っているかい?」
「立ってますよ」。私は彼女を落ち着かせようとしながら言った。
「汗びっしょりになったんじゃないかね?」。彼女は心配そうに聞いた。
私はこれにははっきり返答できなかった。
カレスニコフはこのように礼拝の一部始終を振り返っている 。そして、大統領を予備の飛行機でサハ共和国から運ばなければならなかったと付け加えた。厳寒のせいで専用機のエンジンをかけられなかったからだ。
2013年、大統領は洪水の被害に遭った住民とともに、極東のハバロフスクで新年を迎えた。
Kremlin.ruメディアは、プーチン大統領が自宅以外で新年を迎えたケースをいくつか知っている。たとえば、2013年12月31日、大統領は、洪水の被害に遭った住民とともに、極東のハバロフスクで新年を迎えた。この年、13万5千人の住民が洪水で被災し、3万2千人が避難しなければならなかった、とメディアグループ「RBC」は報じている。当地で新年を迎えた大統領は、避難民に新年のお祝いを述べ、彼らの新しい住宅をチェックした。
クラースナヤ・ポリャーナのスキー場
Mikhail Klementiev/Sputnik仕事のスケジュールに出張が入っていなければ、プーチン大統領は、家族や親しい友人と自宅で正月を過ごすことを好むと、ペスコフ報道官は2019年に伝えている。
大統領は、年末年始にスキー、ホッケー、水泳などのスポーツをするのが好きだ。たとえば、2018年の新年を自宅で迎えた後、シベリアに出かけている。
プーチン大統領とドミートリー・メドヴェージェフはラウラ・クロスカントリースキー&バイアスロン・センターの訪問中
Reuters「ただそういう習慣なだけで、別にどこにも(*海外に――注)、行く気にならない。年末年始は家にいて、それから数日間シベリアに出かけた。気温はマイナス33度だったが、私はそういうのは嫌いじゃない」。大統領は自分の休暇について語っている。
大統領は来る2021年の正月も、たぶん自宅で過ごすだろう、とペスコフ報道官は、2020年12月13日に述べた。
クラースナヤ・ポリャーナのスキー場。プーチン大統領はスノーモービルに乗っている。
Reuters「まあ、例年通りだろう。大統領は、完全に休むことは決してないが、一息入れるかもしれない」。ペスコフ報道官は、国営テレビ「ロシア1」のドキュメンタリー「危険なウイルス:その最初の年」で言った。
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