コロナウイルスの感染拡大によって、多くの人々が自宅で時を過ごすことを余儀なくされている。しかし同時にそれによって、人々は自分の才能を開拓するチャンスを手にすることにもなった。ロシアの芸術愛好家らが始めたチャレンジは今や世界中でますます大きな人気を誇っている。そのチャレンジとは、世界の名画を、自分の手元にあるもので再現するというものである。作品に使うものは、粘土、絵具、トイレットペーパー、下着、ペット・・・なんでもよい。
ロシア人のわたしがどうやってメキシコ人女性に変貌したか?
家にいながら絵画を再現するというのはまったく簡単なことではないことが分かった。わたしは長いこと、自分にぴったり当てはまるモデルは何か考えた。そしてロシアの女流画家ジナイーダ・セレブリャコワの自画像を選ぶことにした。
絵画作品を再現するために、まずペーパーナプキンを青く塗り、そこに、先端に粘土で丸い玉をつけた編み棒を刺した。編み棒はすぐに倒れてしまうので、ナプキンの下にレモンパイを置くことにした。
わたしは夫とともに1日に何度も写真を撮った。理想的な光の瞬間を捉えるためである。もっとも難しかったのは主人公の視線だったが、最終的にはすべて最初の構想通りに仕上がり、わたしたちの作品はテーマ別グループ「Izoizolyazia」で、1日に1万もの「いいね!」を獲得した。
その結果に気を良くしたわたしは次の日、メキシコの画家、ヘスス・エルゲラの「セニョリータ」を選んだ。その絵を再現するのには、まず母の天然パールのネックレスを赤く塗り(その後、色を落とすことはできなかった)、オレンジ色の粘土でネックレスを作り、上からゴールドのアクリル絵具を塗った。庭に出て、木に登り、フジの花を折った。そうして完成した作品は1回目よりも人気となり、「いいね!」の数は3万6,000に達した。
その後、わたしたちはプロジェクトの参加者に連絡をとり、絵画を再現するのに何か変わったものを使っていないか尋ねてみた。
ナポレオンを再現するための妻のブーツ
オホートニコフ家の大家族のメンバーたちは、この家庭での写真撮影が行われている間、死ぬほど笑い続けていた。
ユリヤ・オホトニコワさんは言う。「ナポレオンには長いこと笑いました。わたしのブーツが夫の足に入らなくて、ゴムの部分を切ることになり、それから彼の足に白いタオルを巻かなければなりませんでした。壁紙は塗りました。ガラスを覆うためです。なぜなら外は雪が降っているのに、暑い夏の日を再現しなければならなかったんです」。
撮影の準備で、ユリヤさんは夫をびっくり仰天させたこともある。「ピロスマニの鳥という作品で顔にペイントをしていたんです。夜中の2時だったんですが、夫が起きてきて、腰を抜かしそうになっていました」。
シーツの空、おばあちゃんのガウンの傘
ユリヤ・ネミチノワさんはラファル・オリビンスキーの絵「赤い傘」の再現で大人気を獲得した。
「シュールレアリスムの作品を再現するのは本当に面白くて、興味深いんです」とユリヤさん。「青い空は同じ色のシーツで表現し、セロハンテープで壁に貼り付けました。それから黒い傘を祖母の赤いスカーフで覆い、紙を切り抜いて雫をたくさん作り、糸をつけて、雨を表現し、傘に縫い付けました。これが一番難しかったですね」。
トマトを並べたとは信じてくれなかった管理者
マラート・キムさんはロイ・リキテンステインの絵を見て、これを野菜で再現することにした。ちょうど冷蔵庫にナスとトマトが入っていたのだそうだ。
「床にキッチンペーパーを敷き、目のところにナスのへたを置き、チェリートマトを置いてみたのですが、数が足りないことが分かったんです」。
彼はお店に2回足を運び、全部で800個のチェリートマトを使った。しかし2日かけて作品を仕上げ、投稿したら、グループの管理者に拒否されたという。「どうやら、四つん這いになって、半分に切ったチェリートマトをこんなにたくさん並べるバカはいないと思われたようです。自分の手で。それでこれは加工じゃないと説明し、ようやく公開できたんです」とマラートさんは笑う。
撮影が終わった後、マラートさんは大好きな野菜と羊肉の料理を作り、美しい食材はすべて使って食べたそうだ。
ブロックとアデーレ・ブロッホ=バウアー
タチヤナ・ゴリロフスキさんがこの作品を作る上でもっとも難しかったのはネコをじっと座らせることだったと言う。背景はマグネットの付いたブロックと輪ゴムで作り上げた。モデルの首には、母と娘が後ろからセロハンテープで飾りを貼り付けた。形を整えるために、ヘアスタイルにはっきりとして輪郭を作るため、髪の中に黒いパンツを入れた。
タチヤナさんは「まったく同じように作ることはできませんでした。クリムトはモデルの首をかなり長く描き、モデルの手を不自然に曲げて描いているからです。自分のモデルに好きなことをできるという点では画家の方が優っていますからね。写真の場合、加工が許されない限り、作品作りの可能性は小さくなります」と話す。
“Izoizolyaziya”のスターになったおばあちゃん
グループの参加者の中で、もう一人、人気を得ているのが、カリーナ・メルクモワさんのおばあさんである。カリーナさんはこれについて、「祖母は簡単に同意してくれました。ただ、わたしたちが衣装の準備をしている間に、何度も続けて着替えてもらうのが体力的に大変でした。少し横になってもらい、休憩してもらいながら撮影しました」と話している。
このプロジェクトのおかげで、カリーナさんの家族全員がこの創作活動で一つになれたという。もっとも難しかったのはボンネット、コック帽などの帽子を作ることだったそうだ。
カリーナさんは話している。「フェイスブックのIzoizolyaziaグループの作品作りに没頭していたときは、祖母の作品が上位に入り、記録を打ち立てるだなんて思ってもいませんでした。応援や感謝、称賛の言葉に溢れたコメントはものすごい数になりました。コメントのいくつかは祖母に読んであげています。とても喜んでいます」。