ロシア科学アカデミー会員のミハイル・キルピチ二コフ生物学博士は、「議会新聞」からのインタビューに応じた中で、コロナウイルス感染拡大のピークは2020年4月末から5月初旬になるだろうとの見解を明らかにした。博士によれば、この時期に感染者の数も、死亡者の数も最大限に増加するだろうとの見方を示している。
「それ以降は増減なしの横ばいになると見られますが、その状態がどのくらい続くのかは分かりません。とにかく何より政府が指示する衛生予防措置を遵守する必要があります」と博士は指摘する。
感染者数は25,000人となる可能性があるとの予測を示すのは、ロシアの感染症医で、ロシア消費者権利および福祉監督庁の疫病研究所の所長顧問で、ロシア科学アカデミー会員のヴィクトル・マレーエフ氏だ。
マレーエフ氏は、モスクワで感染のピークが過ぎ感染者が減少し始めたころには、その他の地域で感染者が増加するとの考えを示している。
一方、ロシア政府はより楽観的な予測を示している。タチヤナ・ゴリコワ副首相は、4月12日、自己隔離による最初の効果は4月14日から16日には見られるだろうと述べた。
「まずは増加のない状態に持っていきたいと考えている。なぜなら今はまだ感染拡大が続いているため、4月14日から16日を一つの目処とし、現状維持できるのか、さらに拡大するのかを見極めたいと思っている」と副首相は述べた。
タチヤナ・ゴリコワ副首相によれば、ロシアが、5月9日の戦勝記念日までにコロナウイルスをめぐる現在の状態から完全に抜け出すことは不可能だという。ゴリコワ副首相は、ロシアが制限措置を完全に解除できるのは2020年6月くらいになるだろうと予測している。しかし、これはロシア市民が自己隔離体制を厳格に遵守した場合の話である。
ロシアの感染症医、ヴィクトル・マレーエフ氏も、この予測は“もっとも楽観的なものである”と前置きした上で、コロナウイルスの感染拡大が6月に終息する可能性があるとの考えには同意している。
一方、医学博士であるアナトーリー・アリシテイン教授は、ロシアがコロナウイルスに完全に打ち勝てるのは、最後の感染者が回復し、それから14日経過したときだと指摘し、さらに自己隔離体制はロシアのすべての都市で一斉に解除してはならないとの考えを強調する。
アルシテイン氏は、「疫病の終息は突然、完全に終わるものではなく、感染はどこかで残るものです。検査を行い、個別のグループに対して部分的な隔離体制を行う必要があります。急激に元の生活に移行できるわけではありません」との確信を表している 。
サイトHabr.comのユーザーの一人は、数学的研究を基に、現在の自己隔離体制を行えば、37日後、つまり5月初旬にコロナウイルス感染のピークに到達し、1日あたりの重症患者数は10万人を超えるとの計算を発表している。
「ロシアにおけるコロナウイルスの感染者数は毎日25%以上増加しています。つまりこれは10日間で10倍、1ヶ月で1,000倍になることを意味しています。この割合で増加していけば1ヶ月後には感染者数は10万人となります。もっとも厳格な隔離措置によって、1日の感染者の増加の割合を半分、つまり13%(イタリアを例に)にまで減らすことができます。隔離措置は経済に打撃を与えており、医療に対する負担を受け入れ可能なレベルにまで緩和するという目的は達成できないでしょう」。
またこのユーザーは、毎日の感染拡大のテンポを緩めるには、高齢者施設や療養施設において高齢者と慢性疾患を持つ患者たちを厳格に隔離するしかないとの考えを示し、その場合は1日の感染者数を8,700人まで減少させることができると試算している。
「厳格な体制を敷き、 職員は地元の人間を使わず、隔離場所から離れないようにすること。また隔離場所は国家親衛隊によって警護します。最初の2週間は個人で隔離すべきで、その他のロシア市民の隔離は解除するか緩和することができます」と確信を示している。
投資ホールディングAEONの所有者であるロマン・トロツェンコ氏は、4月9日、オンラインサミット「パンデミック後のビジネス」の中で、ロシアのビジネスの30%が消滅すると指摘した。
さらに市民の収入は減少し、数年にわたって、人々の消費も減少するだろうとの見方を示している。
このほか、社員をテレワークに移行した多くの企業が、パンデミックが終息した後もこの勤務体系を継続するだろうと述べるのは、商業不動産Cushman & Wakefield社のパートナーで、調査部を率いるデニス・ソコロフ氏。またソコロフ氏は、多くの大規模なイベントやフォーラムもオンライン形式で行われていくだろうとの見解を表している。
一方、ロシア経済学校のルーベン・エニコロポフ学長は、食料品以外を扱う多くの店もオンライン業務に移行し、現在ショッピングセンターがある場所は、個人で仕事をする人やテレワークをする人々に賃貸されるようになるだろうと考えている。また学長は、都市中心部だけでなく、ベッドタウンでも、コワーキングが行われるようになるだろうと述べている。
エニコロポフ学長は、義務教育の学校はオフライン体制での授業に戻るだろうが、親は子どもにさまざまなインターネット授業を用意するようになるだろうと指摘する。
そしてロシアはこれでついに、資金を医療に拠出せざるを得なくなるだろうとも強調している。
「今、国がどのようなリスクを負っているのか、またロシアの医療が脅威に十分対応できないということが今まで以上にはっきりしました。ロシアにより高度な検査システムがあれば、ロシアは自国の危機を小規模に抑えることができるでしょう」。
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