コロナウイルスでモスクワの何が変わったか?

ライフ
ヴィクトリア・リャビコワ
 モスクワの複数の会社は社員の一部をテレワークに切り替え、モスクワっ子たちは食料品を買い占め、外に出るのを控えている。しかしコロナウイルス感染拡大によるモスクワの変化はこれ以外にもある。

 3月16日、ロシアにおけるコロナウイルスの感染者の数は30人増加し、93人となった。現在、新型コロナウイルス(COVID–19)緊急対策本部を率いるタチヤナ・ゴリコワ副首相が月曜日、明らかにした。またヤンデクスのコロナウイルス感染状況マップによれば、感染者の53人がモスクワとモスクワ州の在住者であることが分かっている。これを受けて、モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長はモスクワ市民に対する新たな制限措置を講じ、一部のモスクワっ子の生活は大きく変わった。

テレワークに遠隔授業、オフィスでは検温

 2020年3月16日、モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長はモスクワで働くすべての職員に検温を義務づけ、発熱した場合はオフィスに出勤することを禁じるとした指示を出した。モスクワの学校は臨時休校となり、ロモノソフ記念モスクワ大学を始めとした高等教育機関は遠隔授業に切り替えた。

 一方、こうした決定が下される前から、すでにテレワークを導入していた会社もある。

 「3月13日、オフィスでの勤務は状況が改善するまで2~3ヶ月中止すると決まりました。最初はみんな喜んでいたのですが、今は不安でいっぱいです」とタス通信の社員の一人は、ロシア・ビヨンドの取材にこう述べている。

 ロシアのインターネット会社Mail.ru Groupもまた、社員のほとんどがテレワークに移行したと広報部が明らかにしている。

 Mail.ru Groupのお知らせには、「少なくとも3月31日までは在宅勤務を継続。オフィスは、遠隔では処理できない作業のために開業しているが、。食堂、レストラン、スポーツジム、フレッシュバーなどは閉鎖」と記されている。またオフィス通勤する社員には、往復のタクシーチケットが配布されるという。

 新聞Comnews.ruのアンナ・ウスチノワさんは1月からテレワークを行っているが、記者会見などがあれば外出することになると打ち明ける。 

 「できるだけ公共交通機関は使わず、歩くようにしています。人が集まるイベントの中では、あまり人が多くないような記者会見を選んで、出かけています。そのような場所ではたいてい石鹸と消毒液が置かれています」。

 ある国営企業のアナリスト、アレクサンドル(29)さんは3月16日、起床したときに、鼻が出ていて、熱があったが、会社ではなんの予防措置も講じられていなかった。

 「オフィスでは誰もわたしを気にすることもなく、体温を測らされず、仕事するよう言われました。在宅勤務は労働力が低下すると言われています。明日は休みをとるつもりです。健康第一ですから」とアレクサンドルさんは言う。

スーパーの棚は空っぽ、食料品はデリバリーで

 モスクワっ子たちは塩、砂糖、穀物、衛生用品などの買い占めを始めた。モスクワの店には、このような状況のところも出てきている。

 「トイレットペーパーはありましたが、手指の消毒用ジェルは取り合い、肉の缶詰や穀物は品不足になっています。スーパー“アシャン”では昨夜はそんな状況でした。皆、缶詰も買い込んでいました。皆さんも感染しないよう気をつけましょう」とある買い物客はインスタグラムにそう書き込んだ

 ロシア産業貿易省は、商品棚に商品がないのは、単に棚に商品を出すのが間に合わないだけで、すでに仕入れの数を増やしており、今後品不足になる心配はないと説明している

 さらにモスクワ市民の多くはすでに店に買い物に行くのをやめ、デリバリーサービスを利用するようになっている。

 「今日、月曜日はOzonから穀物が届くことになっています。配達された商品はドアのところに置いて、ベルを鳴らして教えてくれます。誰とも接触せずに済むデリバリーに満足しています」と話すのは24歳のナタリアさん。

 モスクワ市民のイリーナ・サブリンスカヤさんもデリバリーサービスを利用している。

 「消毒ジェルは1週間で終わってしまいます。今も1本使い切ってしまったのですが、新しいのを買えない状況です。店にも薬局にも売っていないんです。それでデリバリーを使うしかなくて」とサブリンスカヤさんは言う。

治療のための自宅隔離と感染者のための新しい病院 

 25歳のモスクワっ子、タチヤナ・モロゾワさん(25)は3月16日、朝目覚めると、咳と鼻の症状が出ていた。医者を家に呼び、念のためにコロナウイルスの検査を受けたいと思ったが、そうすることはできなかった。最寄りのクリニックは誰も電話に出ず、オンラインで予約を受け付けている保健のサイトでは、ホットラインのオペレーターは皆、通話中であった。数時間後、タチヤナさんの体温は38.5℃まで上がったときようやく、医者を呼ぶことができた。

 タチヤナさんは、 「医者は心音を聞き、喉を調べ、ここ数週間の間に外国人と接触したかどうか、外国に渡航したかどうか尋ねました。アスピリンとアセトアミノフェンを処方し、できるだけたくさんお水を飲むように言いましたが、検査はしてくれませんでした」と不満を漏らした。

 同じ日、モスクワのソビャニン市長は医療機関に対し、呼吸器系の症状がある患者全員にコロナウイルスの検査をするよう義務づけた

 「新たな感染者が出た場合は、感染者だけでなく、保菌者と接触した人で、何らかの急性呼吸器ウイルス感染の症状が見られる人は全員、入院してもらう」とソビャニン市長はブログに綴っている。

 これとともに、モスクワではコロナウイルスの感染者のための新たな病院の建設に使われる土地が確保された。また最近ヨーロッパ諸国から戻ったモスクワ市民とその家族は自宅隔離するよう義務づけられている。

娯楽も禁止

 市長は4月10日まで50人以上が参加するイベントの中止を決めた。

 この数日前に、モスクワの美術館「ガレージ」は臨時閉館すると発表していた。またロシア通信によれば、文化省もロシア全土で図書館の利用を禁止した。

 さらに新聞「ヴェードモスチ」が伝えるところによれば、エヴゲニー・ヴァフタンゴフ記念劇場と「ソヴレメンニク」劇場も3月17日から4月10日まで上演を中止。ユダヤ博物館、ロシア印象派美術館、収容所史博物館は開館しているが、すべてのイベントを中止する。

 自宅隔離で退屈するロシア市民のために、オンライン映画館は、映画やドラマを無料で閲覧できるサービスを開始した。新聞「ロシースカヤ・ガゼータ」がプーシキン美術館からの情報として伝えたところによれば、予定されている美術館の会議や講義はオンライン形式で行われる。またプーシキン美術館に加えて、サンクトペテルブルクのロシア美術館とエルミタージュ美術館ではバーチャルツアーのサービスを行う。

 モスクワで、映画館やレストラン、バー、ショッピングセンターなど、人が集まるその他の施設が閉鎖されるかどうかはまだ分からない。しかしモスクワに住む18歳の学生、アレクセイさんは休日にバーに行くのをやめるつもりはないと話す。

 「わずかな楽しみを奪われたくないんです。そうでないと、コロナウイルスではなく、退屈で死んじゃいます」とアレクセイさんは言う。

 しかしそれ以外の多くのモスクワ市民はかなり前から自宅隔離する準備を整えている。

 「もう2週間ほど家にこもっています」と話すのはロシア鉄道の職員、ナタリアさん。「食べ物はもうかなり前から買い置きしてあるし、予防用のマスクも買いました。クラブなんてどうでもいいです。とにかく落ち着くまでおとなしくしています。大丈夫、何とかなります」。

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