コロナウイルスで儲けるロシア人

Evgeny Kurskov/TASS
 コロナウイルスに効く薬として抗ウイルス薬やビタミン剤が売られ、ビデオブロガーは感染者を装って「いいね」を稼いでいる。

 2019年12月末、中国の武漢市でコロナウイルス2019-nCoVが原因の肺炎の流行が確認された。世界保健機関(WHO)のデータによれば、1月29日現在、6057人がウイルスに感染し、うち5970人が中国にいる。132人の感染者が死亡、110人が快復した。

 ロシアでコロナウイルスの感染例は確認されていないが、ロシアの国民肺結核医療研究センターの報告では、ロシアにウイルスが現れる危険性は高い。ただし、ロシアで流行が始まっている可能性は低いと伝えられている。RBCは、同報告を基に、2020年2月にはウイルスがロシアに達するだろうと報じている

ノヴォシビルスクのトルマチョーヴォ空港では検疫所の専門医が北京から到着した乗客の体温を計る。

 ロシアの一部の製薬会社や薬局は、すでにコロナウイルスに関するニュースに乗じて儲けを出している。コメルサントによれば、1月半ばから「ドクトル・ストレトフ」「オゼルキ」「36,6」といった薬局チェーンで抗ウイルス薬の売り上げが急激に伸びており、その伸び率は50パーセントから80パーセントになるという。ロシアの薬局チェーンはロシア人のパニックに乗じてどのように儲けているのか。流行の噂は誰の得になるのか。

 

コロナウイルスを「治す」ビタミン剤 

「アルビドル」はふつう、インフルエンザやウイルス性呼吸器感染症の治療に用いられるものだ。

 RBCによれば、1月26日と27日にラジオ局「ラジオ-7・ナ・セミ・ホルマフ」および「アフトラジオ」の放送において、ロシアの製薬会社「オチシファルム」がコロナウイルスに効く薬として「アルビドル」という錠剤を宣伝した。この薬はふつう、インフルエンザやウイルス性呼吸器感染症の治療に用いられるものだ。

 宣伝文句はこうだ。「危険な肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大しています。ウイルスは人から人へ感染します。感染のリスクは高いです。研究によって、『アルビドル』のコロナウイルスに対する効用が証明されました。『アルビドル』は、幅広い抗ウイルス作用を持ち、子供から大人までを守る薬です。禁忌がありますので、専門家に相談してください。」

 連邦独占禁止庁はすでにこの宣伝に対する苦情を受理し、オチシファルム社に然るべき質問状を送ることを確約しているという。ロシア通信が同庁広報の情報として報じた

 ニュースサイト「オトクルィティエ・メディア」によれば、グーグルで「コロナウイルスの治療法」と検索すると、「インガヴィリン」という別の錠剤の宣伝も出てくる。これもウイルス性呼吸器感染症の治療に用いられる薬だ。

 この他、ソーシャルネットワークのユーザーの情報では、モスクワの薬局で「オメガ-3」というビタミン剤を推奨する広告が目撃されている。これはふつう11歳以上の子供や大人(特に妊婦や乳児を育てている母親)が飲むと良いとされる錠剤だ。インフルエンザの治療や予防に用いられる「レマンタディン」という薬も宣伝されていたという。

 

マスクの流行 

 またロシアでは、マスクの売り上げが大いに伸びている。コメルサントは、薬局チェーン「リグラ」のアレクサンドル・フィリポフ社長の話として、同チェーンでは1月21日からマスクの売り上げが8倍になったと報じている。1月25日と26日には、薬局チェーン「36,6」でもマスクの需要が伸びた。一週間前の1月18日と19日と比べると13倍以上の売り上げだと「36,6」小売部門のアレクサンドル・クジン部長は語っている。

 

オンラインショップでもマスクが人気 

 「マスクの売り上げは1月20日から伸び始め、一週間で6倍になった。例年大都市のネットユーザーらは、秋と冬のシーズンに毎日数百枚のマスクを買うが、現在は数千枚買っている」とロシアの人気オンラインショップ「オゾン」の広報担当者はロシア・ビヨンドに話す。「オゾン」では、手の消毒液の売り上げも30パーセント伸びたという。 

 コメルサントの報道によれば、別のオンラインショップ「ワイルドベリーズ」では、1月20日から27日までにマスクの売り上げが2019年12月の最終週に比べて5倍に伸びている。

 

「なんちゃって」コロナウイルス 

 マグニトゴルスク(モスクワから1693キロメートル東)では、コロナウイルスのニュースに乗じて、あるブロガー集団が現地住民を騙すことを計画した。ある街路で衆人環視の中、一人の男性が咳き込んで倒れ、死んだように動かなくなる。一分後、防護服を着た謎の人々が男性を運び去った。これを見た住民は怯え、男性がコロナウイルスに感染して体調を崩したのだと考えた。この悪ふざけを写した写真は、ロシアのソーシャルネットワーク「フ・コンタクチェ」の同市のコミュニティーでアップされた。ユーザーらはこれがフェイクであることを見抜き、指摘している。防護服の一部に見せかけた作業用手袋でブロガーたちの悪ふざけがばれたのだ。

 さらに、テレビチャンネル「モスクワ24」のウェブサイトでは、別のパフォーマンスが取り上げられている。モスクワ・メトロで防護服を着た人物が「コロナウイルス、糞食らえ」と書かれたプラカードを掲げ、自身のテレグラムのチャンネル登録を呼び掛けたとのことだ。

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