外国に住んでいるロシア人女性が帰国したときに真っ先にすることとは何か?友人と会う?それともボルシチを食べる?答えはノー。彼女らがまずすることは、ネイル、眉毛、まつげエクステ、アートメイクに行くことであり、それからワクシングかシュガーリング(男性の皆さん、これは脱毛のため)をすませ、最後にボトックス注射に行く。なぜってとても安くて早いからだ。でも、何故、いま住んでいるところでこれをすることができないのか訊きたいところだろう。答えは簡単で、まったく同じ内容の施術をしても、品質と価格でロシアにかなうところはどこにもないからだ!これは事実である。
「運が良いことに、ベルギーでワクシングをしてくれるロシア人女性を見つけたんです」。ユリアは言う。しかしこの女性はとても人気があるので、予約を取ることがなかなか出来なくて、数週間から何か月も待たされることもあるのだそうだ。「ヨーロッパの美容室もいくつか試したけど、どこもとんでもなく高くて、しかも何時間かけてもよい仕上がりにはならないんです」。
これまでオーストラリアからアメリカまでこれまで多くの国に住んできたマリアは「ロシアのネイルサロンがあって本当によかった」と言う。彼女は美容サービスを受けるために(もちろん、夜遊びや文化を楽しむという目的にあるが)、モスクワに戻ってくる。現在、マリアはブダペストに住んでいるが、東欧であっても状況は変わらないようだ。
ロシア人女性はかなり若いうちから身だしなみを整えるよう教えられる。決して髪を「振り乱す」ことはせず、ちょっとゴミを出すときでさえちゃんと化粧をするといったようなことである。
もう一人のマリアは言う。「気の置けない男友達と出かけるときであってもマニキュアをしないなんてありえないとよくママに言われたものよ」。「誰かのお誕生パーティーに出かける前には必ず美容室を予約してセットとメークはプロにしてもらう。身だしなみにお金をケチることはしません」。
オランダ出身のニールスは、ロシア人女性は話さなくてもすぐにわかるという。「いつも赤くネイルしているか、まつげをとても長くしているから。そしていつも自撮りをしているか、いろんなポーズで写真を撮ってくれと頼んでくるのです」。もちろん、彼の話は少し誇張しすぎているかも知れない。必ずしもロシア人女性が全員、今にも空に向かって羽ばたいて行きそうな長い付けまつげをしているわけではない。しかしある意味当たっているとも言える。何故なら、ロシア人女性は一般的に自分をきれいに見せるために細やかな気を遣っているからである。
サロンは一般的に朝の8時から9時に開店し、夜9時から10時まで開いている。女性たちは仕事前や仕事帰りに自分を「きちんと」見せるために利用することが出来るのである。また、ランチタイムに昼食を取る代わりに美容室に行く人もいる。
「ランチは低カロリーのサラダを自分のデスクで素早く取るんです。貴重な時間は自分自身のために有効に使いたいから」とマネージャーのイリナは言う。
どの美容室も週末に閉まることはない。週末、女性たちは半日費やして一度にいくつもの施術をしてもらうことが出来るので、サロンは一番忙しい。中には24時間営業のサロンもある。(モスクワでは1年365日24時間、いつでも好きな時に洗車をしたり、花を買ったり、歯医者に行ったり、食事を注文したりできるが、これはまた別のテーマである)。
ロシアではそれぞれの予算に合う様々なサロンが100メートルも離れずにあるのは、おそらくこれが理由だ。予約をする必要もなく、ただサロンに行けば、前よりもきれいになって店から出てくればよいだけだ。
美容サロンは街のあちこちにあるので、その競争は熾烈だ。そのため、どこも最高のサービスを提供しようと努力しており、さまざまなスペシャル・キャンペーンやその他いろいろな方法で新たな顧客を獲得しようとしている。というのも、悪い評判が一つでも立つと顧客は別のサロンに行ってしまうからである。
ヨーロッパでロシア人女性は、道具がきちんと消毒されていなかったり、爪の仕上がりがなめらかでなかったりして、がっかりさせられることがある。しかしロシアのサロンには豪華さはないがそのような抜かりもない。もしそのようなことがあった場合、多くのサロンでは無料でネイルをやり直してくれたりする。
「きちんとした品質を求めるなら、たくさんのお金を払わなければなりませんが、モスクワだと完璧なマニキュアをしてもらうのに1,000ルーブル(およそ1,600円)で済むのです」。ロシアでの価格とアメリカやオーストラリアでの価格を比べて、マリアはこう言い放つ。
ネイルサロンが用意しているのは赤だけでない。数百では済まないほどの色を選ぶことができる。さまざまな陰影、ニュアンスを持つ「ヌードネイル」はいま大流行である。ロシアでネイリングするということは、芸術作品を作るということでもある。多くのサロンでは、複雑なデザインや、クリスタル、スパークル、磁気を使った複雑な柄を提供している。
ネイル以外にも、眉毛や目尻にいくつもの技術を使ってアートメイクをしたり、体の可能な限りのところを5種類の技術で脱毛したり、(おそらく)百万色ものヘアカラーリングをロシアの美容院では1日でしてもらうことが出来る。
マーシャが言うには、「外国のヘアサロンでは、モスクワではほぼどのサロンでも使われている熱ハサミをほとんど知らないのです」。
ここでは、ほとんどすべてのサロンが、提供可能なサービスを数多くを用意している。そして利用客はそれを見て、選べなくなってしまうほどである。「マイクロブレーディングを頼まないで済ますことが出来るかしら?」と。
たとえどこにでもある普通のネイルサロンであっても、ハンドスパやまつげエクステなどのいろいろなメニューが用意されている。
女性らしさのことばかり取り上げていると早とちりしないでほしい。男性のことももちろん忘れてはいない。男性たちもより美しくなりたい、その価値があると思う人が増えてきているし、たとえそうでないとしても、自分のために何かしたいと願う男性たちもいる。
そんなわけで、美容院は雨後のタケノコのように次々にオープンしている。あごひげを整えたり、もみあげをカッコよくすることも前よりずっと簡単にできるようになった。男性は美容院に頻繁に通うわけではないが、1人か2人はこっそりとこの美の世界に入り込み、隠れてペディキュアやマニキュアをしている(色は使わないが)。単にきれいな男性らしい爪に整えるのである。ビジネスのためだ。あるいは爪切りを持って足の爪を切るのに、ヨガのポーズのような体勢にはなれないからかもしれない。
面白いのは、これらの男性用美容院は普通、濃色の革やツイードの古い家具が置いてありかなりマッチョなデザインになっていることだ。サロンの名前やブランド名も「トップガン」「ブルータル」「ベア」など、その多くが非常にステレオタイプな男性らしさを連想させるものが多い。もちろん、「ガールフレンド」「サニーネイル」「女性の秘密」など、それとは比べものにならないような超個性的な名前の店もある。
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