ロシアのパイロットが奇跡的な胴体着陸で乗客乗員233人を救う

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ロシア・ビヨンド
人々はこの出来事を「ハドソン川の奇跡」に例える。

 ダミル・ユスポフ機長とゲオルギー・ムルジン操縦士が、8月15日、モスクワのジュコフスキー空港近くのトウモロコシ畑に、降着装置を出さずにエアバスA321を不時着させ、乗客乗員233人の命を救った。

 クリミアのシンフェロポリへ向かうウラル航空の飛行機が、モスクワの空港から離陸する際に鳥の群れに衝突した。「珍しい」事故はエンジンの動作不良を招き、パイロットらは燃料が満タンの飛行機を手動で着陸させなければならなくなった。幸い空港の滑走路の一キロメートル先に大きなトウモロコシ畑があり、パイロットらは降着装置を出さず、緊急着陸の数秒前にエンジンを切って飛行機を地上に降ろした。乗客226人、乗員7人が搭乗していた。

 直ちに脱出が始まり、226人全員が非常口から安全に飛行機を去った。乗客らは事故に衝撃を受けながらも、脱出を助けたパイロットと乗組員に拍手喝采を浴びせた。

 空港から近かったため救急車はすぐに到着したが、乗客らは歩いてトウモロコシ畑を出なければならなかった。

 救急隊員が駆け付けたが、近くの病院に入院することになったのは乗客23人だけだった。当局の発表では、合わせて55人が負傷した。

 何よりもまず、乗客らはパイロットの適切な判断と優れた技術に称賛を送った。

「着陸は激しかったが、飛行機が地面に機首を突っ込むことはなかった。私たちはパイロットらに賛辞を呈さなければならない。彼らはあの状況において可能な限り柔らかな着陸をしてみせたからだ」と乗客の一人はジュコフスキー空港で報道陣に語っている

 ダミル・ユスポフ機長とゲオルギー・ムルジン副操縦士は、乗客だけでなく、インターネットユーザーやプーチン大統領の報道官からも英雄と称された。特筆すべきことに、41歳のユスポフ機長がパイロットとしてキャリアを始めたのは33歳の時であり、この長年の夢を追い始める以前は、スィズラニ市(モスクワから750キロメートル東)の当局で弁護士として働いていた。

 メドゥーザのインターネット記事には、ユスポフ機長の同僚が匿名で寄せたコメントが引用されている。彼によれば、今回の着陸の質は、パイロットが「きっとこのような状況での行動を完璧なものにし、自動的に実行できるよう、シミュレーターで練習し続けたのだろう」ことを示しているという。

 乗員の行動および着陸そのものが、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる2009年の出来事に例えられている。この際には、チェズレイ・サレンバーガー機長とジェフリー・スカイルズが操縦するエアバスA320が、ニューヨークのハドソン川で同様の緊急胴体着陸を行った。

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