1人の英国系アメリカ人ライターで冒険家でもあるマイケル・ジョン・グリストが初めて新潟ロシア村にやってきたのは、2008年のことである。
日本の僻地に、マトリョーシカやロシア正教の教会が奇妙に点在するこの施設は、わずか6ヶ月しか持たず打ち捨てられ、まるで薄気味悪くなっている。このロシア・テーマパークはその後全く機能を失い、建物荒らしの注目を集めるばかりだ。
「この試みはスタートから不運だった」。グリストは2008年9月に初めてここを訪れた時にこう書いた。彼によると、「このテーマパークは交通手段も何もないところの真ん中に存在していた」。
彼の言っていることは正しいに違いない。何故なら、ここで撮られた薄気味悪い写真を見ると、建物はボロボロになっており、来訪者はおらず、内部は建物荒らしによって破壊されていた。
「丸天井を持つ「ロシア」教会の色鮮やかな青の玉葱型のドームは少しずつ色褪せて白っぽくなり、かつては店一杯に置かれていたマトリョーシカやロシアの宝飾品類は荒らされ放題になっていた」。グリストは自分のブログにそう綴る。
このテーマパークは持っていた地図にちゃんと記載されていなかったため、グリストは仲間3人とともに暗くなってから中に入ることになった。4人が夜中に荒れ果てたをこの場所を歩き回る恐怖は想像を絶する。
「夜の廃墟と昼のそれは別の場所のようだ。ひとつには神秘や謎、さざめき動く影、闇の中の音に満ちている。ここでは全部がのっぺらぼうのようで色合いというものはまったくなく、自分の足音が響くのみだ。そこにあるのは虚無的殺風景だけだ」。とグリストは書いている。
スズダリにあるユネスコ世界遺産、生誕教会を模した建物は打ち捨てられていた。グリストと仲間は内部を探検して空のハープボックス、アコーディオン、巨大なんちゃってパイプオルガン、日本語やロシア語で書かれた数冊の聖書を見つけた。
髪を後ろで束ねたキリストが描かれた教会のドームもそこを訪れた者の興味を引いた。
仲間たちは、2つのマンモスも見つけた。1つは、マンモスの骨格標本で、もう1つは、人が実際に乗れるように、車輪といすがついた小さな毛で覆われたマンモスだ。グリストはそれに乗ってみた。
パークを一回りした後、4人は廃棄されたホテルに入って、部屋の中で休憩した。ここもパークと同じように不気味で、建物荒らしが内装を破壊しており、ベッドの脚をダーツのように壁に投げ刺してさえいた。
「わたしはぐっすり眠れた。おそらく雰囲気がすこし重苦しかったので他の何人かはよく眠れなかったようだが」とグリストは書いている。
4年後の2012年にグリストは、新潟ロシア村がその後どうなったのか確かめるために、そこを再び訪れた。「より酷くなっていた」と彼は言う。
4年前に仲間たちと滞在したホテルは、火災によって大きく損なわれていた。さらにひどい破壊が建物荒らしによってなされ、家具は壊され、マンモスの骨格標本も破壊されていた。
グリストは何枚かの「テーマパークの完成図、もしくは、将来の全事業予定図」を見つけた。言うまでもないが、これらの計画は決して行われることは無かった。
新潟ロシア村以外にも日本には外国をテーマにした場所がある。この筆者によれば、新潟にトルコ村、栃木にはウェスタン村、九州にはオランダ村、その近くにはヨーロッパ村もある。
「これはおそらく、多くの日本人にとって、海外旅行は高いし困難であるからではないか。そのために、外国の文化を日本に持ち込んでテーマパーク式の村をこしらえればお客が来るのではと夢見る人が現れる。しかしその多くは失敗する」とグリストは自身のブログで語っている。
マイケル・ジョン・グリストは現在英国ロンドンを拠点に活動している、廃墟写真家及びスリラー作家である。マイケルの日本の「廃墟」の写真をもっと見たい方はこちらから、彼のクリストファー・レン・スリラーシリーズの最新作を知りたい方はこちらからどうぞ。
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