1/ ハンドルカバー
市場で売られている既成のカバーをつけることもあったが、カラフルな配線や革の端切れ、もしくは青色の絶縁テープなど、手軽なものを使う場合が多かった。とくに前衛的な人々はフェイクファーをハンドルに巻きつけていた。それはまるでくたびれたクマのぬいぐるみを握っているように見えた。
美しさという観点から見れば、意見が分かれるところだが、こうすることによって、ハンドルの摩耗を防ぎ、必要以上にハンドルに汗をつけずに済んだ。ハンドルカバーはトラックの遠距離運転手にとっては「マストハブアイテム」であった。トラックのハンドルは濡れた石鹸のようにツルツルしていたからだ。
2/ 扇風機
このデバイスはエアコンのない人たちが使っていた(つまりほぼすべての人)。のちに、市場には「A/C」と書かれた魔法のボタンのついた外国車が溢れることになるが、それまでドライバーたちはできる限りの方法で暑さをしのいだ。
もっとも扇風機の風はドライバーたちにしか届かなかったため、後部座席の乗客たちは窓を開けて、風を感じるしかなかった。
3/ 首振り犬の置物
この「スタイリッシュなカーアクセサリー」は2017年に流行したハンドスピナーと比較できるものである。この犬を見ているとたちまち眠くなるか、吐き気がするかだが、それは重要ではない。しかしこの犬の置物には誰もがすぐに飽きたが、誰もがなかなか飾るのをやめる決心がつかなかったのである。
4/ 取り外し可能なカセットデッキ
自動車から降りると、ドライバーはどこに行くにもこのカセットデッキを持ち歩いていたなんて信じられるだろうか?皆、これを外して持っていかなければ、すぐに盗まれることを知っていたからだ。カセットデッキは1990年代のドライバーたちが夢に見たデラックス自動車の必需品であった。これがあれば、常にイヤな音を出すラジオから聞こえてくる音を聞かずに済み、カセットで素晴らしい音楽の世界の扉を開くことができたのである。しかもオートリバース機能やFMチューナーもあったのだからすごい。
5/ カセット収納ボックス
カセットがあちこちに無造作に散らばっているのが許せない人々が、カセットデッキと共に購入した。しかしまもなく、これに代わって、しょっちゅう破れるCDケースが現れた。
6/ 吸盤付きメモ帳
自分はビジネスマンだと考えていた人々(1990年代、多くの人々がそうであった)なら誰でも、自動車の中にこのメモ帳を備えていた。ペンとセットになっている場合もあった。面白いことに、実際にこれを使っていた人はそう多くなく、メモ帳は乙女のように純白なままであることがほとんどであった。しかもメモ帳が重くて、それに耐えきれず、外れてしまうことも多かった。しかしそれはどちらでもそう変わらなかった。大切なのは、メモ帳なしでちょっと出かけることもできないほど、この人は忙しいのだと、皆に思わせることであった。
7/ バックミラー
まだ要るの?そう、普通のバックミラーの上につけるパノラマミラーが。何よりこれはカッコよかった。次にサイドミラーは盗まれることが多かったため、自動車内部に超大型のバックミラーをつけるしか他に方法がなかったのである。ときとともに、電子時計やコンパス(!)、暗い場所で光る温度計なども現れ、所有者のステータスをさらにアップさせた。
8/ ハンドルロック
1990年代、すでにセキュリティアラームはあったが、非常に高価で、また必ずしも効果的ではなかった。しかし盗難防止用のハンドルロックを打破するのはかなり難しかった。このハンドルロックを切断するか、インストルメントパネルを取り外さなければ自動車は盗めなかったからである(ちなみにインパネを外して盗まれることはあった)。
9/ アンテナ
実際的な価値はなかったが、周囲の人々に、この自動車の運転手はタダ者ではない(もちろん、車の中には吸盤付きメモ帳がある)と知らしめる意味があった。アンテナはフロントガラスに取り付け、さらにサイドと屋根にも取り付けられることもあった。しかも接続されていてもいなくても、関係なかった。
10/「もみの木」
ソ連崩壊後のロシアの自動車を魅了した車用芳香剤である。香りは「もみの木」とは程遠いもので、多くの人が吐き気をもよおした。しかしこの「もみの木」はアクセサリーとしての価値があったのである。香りがすっかり消えてしまった後も、バックミラーの下で何年も揺れ続けていたものである。
11/ 帯電防止テープ
車内の静電気を取り除くためと言われていた驚きのツール。ゴム製の帯電防止テープはバンパーの下に取り付けられ、アスファルトの上を引きずられていた。より見栄えをよくするため、2つ付けるのが普通であった。
12/ シートカバー
インテリアの基礎を成すものである。張り生地が何であろうと(ベロアであろうと、レザーであろうと、黒いキルトであろうと)関係ない。とにかく張ってあることが重要であった。これでシートの摩耗を防ぐことができ、また転売するときに価格を上げることができた。たいていの場合、カバーは自動車を手に入れると同時につけ、外すことはなかった。
13/ もう一つのブレーキランプ
怪しい赤いランプは、バンパーの上、バンパーの下、リアガラスなどどこにでもつけられていた。目立ちたがりの人たちはありとあらゆる場所にブレーキランプをつけた。張り出した四角いブレーキランプをつけた自動車は、アメリカのブロックバスター映画に出てくる自動車のようであった。
14/ フリンジ
フリンジ(古いじゅうたんから切り取ったものや市場で買ったもの)はフロントガラスの下に吊り下げられており、仮説としては、太陽の光から目を守るものであった。しかし実際には、周りの運転手や通行人の注意を引き、あるいは運転手に愛しの我が家と快適さを思い起こすものであった。
15/ 透明な把っ手
シフトレバーに被せる「ガラスの」把っ手で、中には花や虫、ガイコツ、熊の手など色々なものが入っていた。実用性はまったくないが、なかなか面白いものであった。