ウィキリークスは2017年にサイバー諜報活動に関するCIAのデータを公開したが、その中に「PocketPutin(ポケットプーチン)」と名付けられた盗聴用の極秘サーバーが5つあった。本当に存在するとしたら、これはおそらくプーチン大統領のコンピューターや携帯電話などを盗聴できるものとされている。これに対してロシア政府は「注意するに値する」との声明を出す一方で、ウィキリークスがそれほど努力しなくとも、アメリカ政府はロシア政府高官の盗聴を行っていることを特に隠してもいないと付け加えた。ただしその盗聴の相手はプーチン大統領ではない。外国の特務機関や盗聴機関がプーチン大統領に近づくためにはかなり至近距離まで近づかなければならないのである。
2012年9月1日。パラリンピックロンドン大会の柔道の試合で銀メダルを取得したタチアナ・セヴォスチヤノワに祝いの言葉を述べるウラジーミル・プーチン。
アレクセイ・ドゥルジーニン撮影/Sputnik「スマートフォンを持つというのは、自発的に自分のすべてをさらけ出すものである。スマホを持ったなら、自分はすべてをあらゆる人に知られてもよいと思っているとアピールしているも同然である」。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は最近、このような発言を行った。大統領報道官によれば、プーチン大統領はスマートフォンを持っていてはならないと述べ、「特にロシアのような国の大統領は」と付け足している。ジャーナリストたちはほぼ毎年、スマートフォンに関する質問で報道官を困らせているが、それに対する回答はいつも同じである。
一方これについて大統領自身は隠喩的な表現を抑え、次のように述べている。「もしわたしが携帯電話を持っていたら、鳴り止むことはないでしょう。しかもわたしは自宅の電話がかかってきてもけして受話器をとりません」。この発言は2期目に入ったばかりの2005年のものだが、それ以来、これに関する状況はほぼ何も変わっていない。変わったとしたら、大統領と連絡をとるのはより難しくなったという点だけであろう。
骨形成不全症で苦しんでいる男の子、アルチョーム・パリャノフと話しているウラジーミル・プーチン。レニングラード州に住むアルチョームはサンクトペテルブルクのパノラマを見たいという夢があり、以前大統領はアルチョームのためにヘリコプター・ツアを主催することを約束した。
アレクセイ・ニコルスキー撮影/Sputnik例外のない決まりがある。それは、大統領が重要な問題について話すときは、完全に保護された政府専用の秘話回線(デスクの上に乗っている旧型の黄色い電話)しか用いないというものである。この回線を盗聴することは不可能である。なぜなら音声シグナルがデジタル化された後、複雑に暗号化されているからである。これを解読しようとすれば1年半はかかるとされる。しかしこれを盗聴する意味がないことは言うまでもない。暗号化キーは会話の途中で、異なる間隔で、規則性なく、何度も何度も変わるからである。これらすべては安全分野のロシアの専門家によって行われている。ドイツのメルケル首相はアメリカの政治関係者との会話を盗聴される可能性があるのに対し、プーチン大統領は未だに盗聴されたことがないというその差はここにあるのである。
クレムリンでのプーチンの書斎。
SHOWTIME/Youtube/Sputnikしかしクレムリンの通信部門の担当者らはこれでも十分に安全とは言えないと感じていた。そこで2015年、量子通信による秘話回線の開発とその他の量子技術に関するプロジェクトに対して2億3,000万ルーブル(およそ3億5,000万円)が国家予算から拠出された。そしてその技術はすでに確立されている。このシステムでは、通信は光子で伝達されることになっており、これを認識するにはその状態を変化させる必要があるのだが、これを秘密裡に行うことは物理的に不可能なのである。
この有名な写真を覚えているだろうか。ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領が電話でプーチン大統領と話しているときの画像である。トランプ大統領のそばには大勢の補佐官がいる。クレムリンではこうはならない。プーチン大統領のそばには、国際問題の補佐官がついていることがときどきあったり、またきわめて稀に、例えば石油やガスの問題について協議するときに専門の大臣が同席することがあるくらいだ。そして外務省の中に、同じ電話回線に入ることができるプロの通訳がいる。それだけだ。
大統領との通話の申し込みはまず外務省の外交ルート、あるいは大統領府を通じて行われる。直接電話することができるのは、大統領と同じ黄色い特別回線用の電話がデスクに置かれているきわめて数少ない人物(国防相など)である。しかし最初に受話器を取るのは秘書または副官となっている。
ソチのイメレチ谷でのオリンピック開催地をヘリーコプターで観察しているプーチン大統領。
アレクセイ・ニコルスキー撮影/Sputnik一方のプーチン大統領はどこにでも電話をかけることができる(もちろん特別回線を使ってであるが)。飛行機からでも、自動車からでも、潜水艦の中からでも、そして大好きなトゥヴァの森からでも。外国訪問の際にはプーチン大統領の乗った専用機の後ろに特別回線を搭載した航空機が飛んでいるのをよく目にすることができる。
ロシアでいたずら電話の犯人としてもっともよく知られるコメディアンコンビのヴォヴァンとレクサスは、トルコのエルドアン大統領やウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、ミュージシャンのエルトン・ジョンにもいたずら電話をかけているが、今のところプーチン大統領にいたずら電話をかけるきっかけはないと話している。また大統領府も、大統領自身も彼らのことをよく知っているとしている。しかしそんな彼らは、大統領に電話がつながる何か特別な方法があるはずだと心から思っているという。さてそううまくいくものだろうか?お手並み拝見といこう。
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