KGBが摘発したスパイの小道具

2017年8月10日 ボリス・エゴロフ
 ソ連とロシアの防諜や国境警備隊はこれまでに、数多くの外国のスパイ、密輸業者を逮捕、拘束するとともに、スパイの特殊な装備、小道具もあまた摘発、没収してきたが、そのいくつかをロシアNOWがご紹介する。

1. 刃のついた仕込み杖

 刃のついた仕込み杖=イリヤ・オガリョフ 刃のついた仕込み杖=イリヤ・オガリョフ

 内部に刃を隠した仕込み杖は、外国のエージェントが接近戦に使った。刃は鞘から引き出すタイプもあれば、折りたたまれているのを広げるタイプもあった。刃を出すと、杖は槍のようになる。杖の頭が重いものもあり、それをスパイたちは、自分の指さながらに使いこなして戦った。

 

2. スパイ、密輸業者の隠し場所

スパイ、密輸業者の隠し場所=イリヤ・オガリョフスパイ、密輸業者の隠し場所=イリヤ・オガリョフ

 この手の隠し場所は、外国から禁止された品を不法に持ち込む、密輸業者が使うものだが、外国のスパイの目的にも合っていた。

 

3. 時計とライターの小型カメラ

時計とライターの小型カメラ=イリヤ・オガリョフ時計とライターの小型カメラ=イリヤ・オガリョフ

 時計やライターのような小さな日用品に仕込んだ小型カメラは、最もよく使われたスパイの備品の一つ。これらは、ソ連およびロシアの領内で、外国のスパイから没収されたもの。

 

4. 録音機を改造した通信機

録音機を改造した通信機=イリヤ・オガリョフ録音機を改造した通信機=イリヤ・オガリョフ

 普通の録音機が、外国の特殊機関の専門家により改造されて、内部に通信機を入れることがよくあった。こういう装置は、ソ連領内のエージェントとの連絡手段に使われた。

 

5. 暗号解読のための本とフィルム

暗号解読のための本とフィルム=イリヤ・オガリョフ暗号解読のための本とフィルム=イリヤ・オガリョフ

 外国のエージェントたちは、暗号化されてはいってくる情報を解読するために、まったくありふれた内容の、外国語の本を使った。おとぎ話、長編小説から技術説明書にいたるまで。

 

6. ペン立ての中の隠し場所とヒゲソリのなかのカメラ

ペン立ての中の隠し場所とヒゲソリのなかのカメラ=イリヤ・オガリョフペン立ての中の隠し場所とヒゲソリのなかのカメラ=イリヤ・オガリョフ

 しばしば、まったくありふれた日用品が、スパイのカモフラージュのための特別な道具として用いられる。このペン立ての中には隠し場所があるし、電気シェーバーのなかにはカメラが仕込まれている。

 

7. ソ連の防諜で発見、没収された容器(秘密の隠し場所を経由してエージェントとの連絡を取るために使用)

没収された容器=イリヤ・オガリョフ没収された容器=イリヤ・オガリョフ

 これらの容器には、プラスチック、金属、木などでできた雑多なものが詰め込まれており、秘密の隠し場所を経由して、課題、暗号、録音装置、情報記録装置、金銭などを、エージェントに渡すのに利用されていた。

 

8. アタッシュケースに隠した携帯無線機

アタッシュケースに隠した携帯無線機=イリヤ・オガリョフアタッシュケースに隠した携帯無線機=イリヤ・オガリョフ

 携帯無線機は、情報を伝える一方で、特殊機関の本部からの指令を受けるのにスパイが使ったが、普通はコンパクトで、小さなアタッシュケースにおさまった。

 

9. 刃が飛び出すナイフ

刃が飛び出すナイフ=イリヤ・オガリョフ刃が飛び出すナイフ=イリヤ・オガリョフ

 刃が飛び出すナイフは、敵の特殊機関員の拘束を免れるために用いられた。

 

10. 秘密の隠し場所

木の角材で作った隠し場所=イリヤ・オガリョフ木の角材で作った隠し場所=イリヤ・オガリョフ

 木の角材で作った隠し場所は、密輸業者が金を隠すのに使ったが、スパイは機密情報や録音機器や暗号を隠すのに利用した。

 

11. 懐中電灯に仕込んだスタンガン(電撃銃)

懐中電灯に仕込んだスタンガン=イリヤ・オガリョフ懐中電灯に仕込んだスタンガン=イリヤ・オガリョフ

 懐中電灯に仕込んだスタンガン(電撃銃)は、外国のスパイや破壊工作要員が、接近戦で使った武器だ。その電気で、敵の戦闘能力を失わせ、追跡を逃れ姿をくらますことができた。

 

12. 巻き尺型ピストルとペン型ピストル

巻き尺型ピストルとペン型ピストル=イリヤ・オガリョフ 巻き尺型ピストルとペン型ピストル=イリヤ・オガリョフ

 フランス製の巻き尺型ピストル 「Le protector」は、弾丸を10発撃てた。コンパクトで、気がつかれずに掌やポケットにおさまるが、至近距離では、そのスパイの追跡者またはターゲットに、致命的な傷を負わせることができた。ペン型ピストルは、撃てるのは一発のみ。

 

13. CIAのエージェント、アドルフ・トルカチョフの小型カメラと指令書

アドルフ・トルカチョフの小型カメラと使用説明書=イリヤ・オガリョフアドルフ・トルカチョフの小型カメラと使用説明書=イリヤ・オガリョフ

 1985年、ソ連の秘密警察KGBの防諜で、研究所「ファゾトロン」の技師・設計者のアドルフ・トルカチョフが逮捕された。トルカチョフは、自らの意志で、アビオニクス(航空電子工学)の分野の機密情報を数年間にわたり、アメリカのCIA(中央情報局)に渡していた。1986年、トルカチョフは銃殺刑を宣告された。

 

14. CIA 職員、マイケル・セラースの変装道具

マイケル・セラースのつけ髭とかつら=イリヤ・オガリョフマイケル・セラースのつけ髭とかつら=イリヤ・オガリョフ

 1986年3月、モスクワでソ連のエージェントに関係するオペレーションが行われていた際に、アメリカ大使館2等書記官で米CIA 職員であるマイケル・セラースが逮捕された。このアメリカのスパイは変装のため、つけ髭とかつらを使っていた。逮捕後、セラースは、ペルソナ・ノン・グラータとして国外追放になった。

 

15. 樹木の枝で偽装した情報受け渡しの仕掛け

樹木の枝で偽装した情報受け渡しの仕掛け=イリヤ・オガリョフ樹木の枝で偽装した情報受け渡しの仕掛け=イリヤ・オガリョフ

 樹木の枝で偽装した、メモ、録音などの情報受け渡しの仕掛けが、ソ連の防諜で、旧東ドイツの軍用飛行場の近くで見つかった。この情報は、旧西ドイツ領内のNATO(北大西洋条約機構)の特殊機関により受け取られていた

 

16. 毒のアンプルを入れた眼鏡(米CIAエージェント、ゲンナジー・スメタニンが使用)と秘密のポケットのついた釣り針用バッグ(米CIAFBIのエージェント、ドミトリー・ポリャコフが使用

 

毒のアンプルを入れた眼鏡(米CIAエージェント、ゲンナジー・スメタニンが使用)と秘密のポケットのついた釣り針用バッグ(米CIA、FBIのエージェント、ドミトリー・ポリャコフが使用)=イリヤ・オガリョフ毒のアンプルを入れた眼鏡(米CIAエージェント、ゲンナジー・スメタニンが使用)と秘密のポケットのついた釣り針用バッグ(米CIA、FBIのエージェント、ドミトリー・ポリャコフが使用)=イリヤ・オガリョフ

 GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)大佐、ゲンナジー・スメタニンは、自らの意志で米CIAに協力したが、1985年にKGBの軍事防諜により摘発、逮捕された。その際、眼鏡が見つかり、そのテンプル(つる)の部分には、毒のアンプルが仕込んであった。また眼鏡ケースのなかには、CIAとの連絡に関する指令が記されていた。スメタニンは銃殺刑を宣告された。

 GRUの高級将校、ドミトリー・ポリャコフ少将は、米CIA、FBI(連邦捜査局)に20年以上協力した。しかも彼は、無事に年金生活に入り、あらゆる証拠の隠滅に成功した。ただ一つだけ、釣り針用バッグをのぞいては。これには、暗号ノートを入れる秘密のポケットがついていた。ポリャコフはそのことをうっかり失念していたのである。1987年、ポリャコフは銃殺。

 

17. CIAエージェントだった、ソ連外務省職員アレクサンドル・オゴロドニクのスパイ道具

ソ連外務省職員アレクサンドル・オゴロドニクのスパイ道具=イリヤ・オガリョフソ連外務省職員アレクサンドル・オゴロドニクのスパイ道具=イリヤ・オガリョフ

 在コロンビア・ソ連大使館2等書記官だったアレクサンドル・オゴロドニクは、1970年代初めに、米CIAにリクルートされた。ソ連KGBの防諜で摘発されたのは1977年。モスクワで逮捕拘束された際に自殺した。ところが、CIAは、オゴロドニクが死んだことを知らなかったため、KGBは、彼と西側諜報員との、モスクワにおける連絡網を暴く作戦を行うことができた。

 

18. アレクサンドル・オゴロドニクのナイフと、マルタ・ペーターソンが作った隠し場所

アレクサンドル・オゴロドニクのナイフと、マルタ・ペーターソンが作った隠し場所=イリヤ・オガリョフアレクサンドル・オゴロドニクのナイフと、マルタ・ペーターソンが作った隠し場所=イリヤ・オガリョフ

 上記のアレクサンドル・オゴロドニクのために、CIAの駐在員で外交官を装っていたマルタ・ペーターソンは、秘密の隠し場所の容器を設置しようとした。カモフラージュのため、モスクワのクラスノルシスキー橋の石の下に置こうとしたところ、ソ連KGBの防諜により、現行犯逮捕。ペルソナ・ノン・グラータとして国外追放になった。

 

 

19. エストニア特殊機関の装備。ロシア・プスコフ州のFSB支部の傍で発見、没収

エストニア特殊機関の装備=イリヤ・オガリョフエストニア特殊機関の装備=イリヤ・オガリョフ

 2000年代初め、ロシア・プスコフ州のFSB(連邦保安庁)支部の職員は、建物の傍に不審な車が止まっているのに気がついた。調べたところ、車の中には、録音、記録のための装備一式があり、それはエストニアの特殊機関のものだったと判明した。

 

20. CIAのエージェント、ピョートル・ポポフのスパイ活動用装備

ピョートル・ポポフのスパイ活動用装備=イリヤ・オガリョフピョートル・ポポフのスパイ活動用装備=イリヤ・オガリョフ

 1959年、ソ連閣僚会議に付属するKGBの防諜で、GRU中佐ピョートル・ポポフが摘発された。ポポフは、それに先立って、オーストリアでCIAにリクルートされていた。彼は、オーストリアにおけるソ連のスパイ活動や、ソ連最初の、核兵器を使用した軍事演習について、米国に情報提供していた。1960年、最高裁軍事法廷により、極刑すなわち銃殺刑を宣告された。

 

21. 日本の外交官のスーツケース

日本の外交官のスーツケース=イリヤ・オガリョフ日本の外交官のスーツケース=イリヤ・オガリョフ

 1935年12月、ソ連国籍の二人の女性が、日本の外交官のスーツケースに隠れて出国しようとした。外交官の個人の持ち物は調べなかったからだ。ところが、寒かったのと、ソ連・ポーランド国境を通過するのに時間がかかったため、女性の一人がしびれを切らし、事が露見。結局、二人とも見つかり拘束されてしまった。

 

22. 樹の切り株で偽装した情報受け渡しの仕掛け

樹の切り株で偽装した情報受け渡しの仕掛け=イリヤ・オガリョフ樹の切り株で偽装した情報受け渡しの仕掛け=イリヤ・オガリョフ

 ソ連KGBの防諜で、アメリカの高度な技術を使った情報記録装置が、モスクワ州のミサイル防衛基地の近くで見つかったが、樹の切り株で偽装されていた。それは、軍事技術の性能、指標を記録して、偵察衛星に送信していた。

 

23. 日本のスパイの小型カメラ

日本のスパイの小型カメラ=イリヤ・オガリョフ日本のスパイの小型カメラ=イリヤ・オガリョフ

 この小型カメラは、ソ連の防諜で、1942年に極東で日本のスパイから没収されたもの。

 

24. 米英特殊機関のエージェント、オレグ・ペニコフスキーのスパイ道具

オレグ・ペニコフスキーのスパイ道具=イリヤ・オガリョフオレグ・ペニコフスキーのスパイ道具=イリヤ・オガリョフ

 1962年、ソ連閣僚会議付属KGBの防諜で、英MI6と米CIAの大物エージェント、オレグ・ペニコフスキーGRU大佐が摘発された。小型カメラ「ミノックス」で撮った、ソ連軍事システムの5000枚以上のフィルムは、西側の特殊機関にとって極めて大きな価値をもっていた。1963年、ペニコフスキーは最高裁軍事法廷により、極刑の銃殺刑を宣告された。

 

25. 本に隠されたピストル

本に隠されたピストル=イリヤ・オガリョフ本に隠されたピストル=イリヤ・オガリョフ

 この『政治経済学の教科書』の内部には、1925年製のハンガリー製ピストル「Liliput Kal」(口径6.35ミリ)が隠されており、独ソ戦(大祖国戦争)勃発の少し前に、ドイツのスパイから没収された。

 

26. 毒を仕込んだ安全ピン、サイレンサー付きピストルの入った懐中電灯(アメリカのパイロットでスパイ活動をしていたフランシス・パワーズが所持)

フランシス・パワーズの毒を仕込んだ安全ピン、サイレンサー付きピストルの入った懐中電灯=イリヤ・オガリョフフランシス・パワーズの毒を仕込んだ安全ピン、サイレンサー付きピストルの入った懐中電灯=イリヤ・オガリョフ

 フランシス・ゲーリー・パワーズは、偵察機U-2機でソ連領空で偵察飛行していたが、迎撃ミサイルで撃墜された。このパイロットは、機外への脱出には成功したが、拘束され、その際に、毒を仕込んだ安全ピン、サイレンサー付きピストルの入った懐中電灯(米国特殊機関の武器Hi-Standard HDM)が見つかり、没収された。1962年、2月10日、パワーズは、米国で逮捕されたソ連のスパイ、ルドルフ・アベリと交換された。

 

27. ロッキードU-2機の胴体の断片

U-2機の胴体の断片=イリヤ・オガリョフU-2機の胴体の断片=イリヤ・オガリョフ

 米国のパイロット、フランシス・ゲーリー・パワーズは、偵察機U-2(写真はその胴体の一部)で、ソ連上空を偵察飛行していたが、1960年5月1日に、スヴェルドロフスク市(現在のエカテリンブルグ)上空で、ソ連の迎撃ミサイルで撃墜された。

 

 FSB中央国境警備博物館に対し、撮影にご協力いただいたことに感謝申し上げる。

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