元旦、一年の最初の日:そのさまざまな過ごし方

ライフ
ゲオルギー・マナエフ
 驚くことに、2,000万人が住む都市、モスクワが一年に一度だけ、一日中眠ったようにひっそりとし、通りにもほとんど人っ子一人いない日がある。元旦の日に、仕事や、遊び、観光のために外出していた人たちに話を聞いた。

 「モスクワにもう30年暮らしているが、ある元旦の朝に、まったく違う町の顔があることが分かったんだ。もうテレビの前に座っている場合じゃなかった」と語るのは写真家のアントンさん。彼が、元旦は友達や家族と過ごすという習わしを初めて破ったのはこのときだった。そして、元旦の夜とその翌朝の写真を撮るようになったのだという。

 「この日、モスクワは違う顔を見せる。人気のない通り、静寂、人々もまったく違って見える。昼間に外に出て、カメラを片手に何か面白いものを探してうろつくんだ」と彼は付け加える。

職場で祝う

 医療関係者が一年の間でもっとも忙しいのが、新年の休暇期間だろう。新年のお祝いの席で起こる食中毒やアルコールがらみの怪我が多いためだ。

 救急隊で働くドミートリーが言うには、この期間で働いていると面白いことにも出会うと言う。「元旦の日に、24時間シフトで働いていたら、床を掃除するのにいつも使っていたバケツがなくなっていたんだ。僕は頭にきた。一体、誰に空のバケツが必要なのかと」。

 あとで分かったことには、それは救急車の運転手が持って行ったのだった。彼の友達が地元のスパークリングワインの製造元で働いていて、彼はその空のバケツいっぱいにシャンパンを入れてステーションに戻って来た。「彼は一滴もこぼさなかった。しかもサイレンを鳴らして新年に間に合うように大急ぎで戻って来た。それはもうすごい量のシャンパンだった。残った分は、マリネの缶に詰め替えて冷蔵庫に入れ翌朝のために取っておいたよ」とドミートリーは大笑いした。

人混みのない美しい場所を見る

 元旦はモスクワの本来あるべき姿を見ることができる数少ない貴重な日。歴史研究家のアルチョムは「自動車や通行人に邪魔されずに街の歴史地区を散策できる日は非常に少ないのです」と話す。「自動車がなく、人がいないと、モスクワの2世紀ほど前の姿を見ているように感じられる場所があります。19世紀、商いの中心地だったザモスクヴォレーチエ地区やクルティツコエ・ポドヴォーリエ(教会)などは歩いているとまるで歴史映画の中の17世紀にタイムスリップしたようだ。これらの場所は歴史を感じさせる素晴らしい写真の感動的な背景となる。ぜひトライして見ていただきたい。日没の前に行く方がよい。

より多く稼ぐ

 この日働いている人の中にいるのが、時間だけはたくさんあって、熱心にお小遣い稼ぎしている学生たち。ジャーナリストのダンは言う。「これまで何度か元旦に働いた。2年生のときにはホステルで働いたよ。みんな酔っ払っていて、とても楽しみながらもすべきことはきちんとこなした。その後、元旦にオーダーを入れるディスカウントサービス会社でも働いたんだけど、一番の問題は朝ちゃんと起きて、オフィスにたどり着くということだった。でもオフィスに行くと、同僚たちが「救いのウィスキーグラス」を持って待っていてくれた。でも何よりも素晴らしいことは元旦の賃金が普段の2倍だったことさ!」

 ツィオルコフスキーブックストアで働くマクシムは、彼も同僚たちも元旦に本を買いにくる人がいることを知り、驚いたと言う。

 「モスクワで元旦に開いているのはここだけなんです。午後3時に開店するのですが、3時10分にはもう購入客がやってきます。そして夕方まで人は途切れません。来年の2019年で、元旦に店を開くのは5回目となります」。