ロシア鉄道はワールドカップの開催都市間を移動するサポーターたちを輸送するため、720を超える臨時列車を運行している。個室寝台車がついている快適な列車である。しかし、サポーターの中には普通の列車のチケットを買う人もおり、中でもかなりの人が3等車を選ぶ。しかしどれを選んでも、ロシアでの列車の旅で退屈することはない。
あるニューヨーク・タイムズの記者はエカテリンブルクからサマーラに旅をしたとき一緒になった乗客たちに驚かされたという。記者はワッフルを一袋持っていただけなのだが、彼らはゆで卵とキュウリのピクルスをいきなり取り出し、記者にも勧めてきたのだそうだ。彼は非常に驚いた。そんなことはイギリスの列車では絶対にありえない。
エジプト出身のラチャさんは「プラツカルト」と呼ばれる3等車でヴォルゴグラードへ旅をしたとき、面白い体験をした。
「ロシアの長距離列車で何をするのか?飲み比べをして、5分ごとにありとあらゆる理由で乾杯するのです」。彼女はインスタグラムにこう綴っている。
モスクワからサンクトペテルブルクに向かう別の「プラツカルト」車輌。こちらも外国人観光客でいっぱいだ。
メキシコ出身のマリオは、出発時間と到着時間が常にモスクワ時間で表示されていることに困惑している。それはたとえウラジオストクにいてもそれは変わらないのである。
「ロシアのすべての列車が出発と到着の時間をモスクワ時間を採用しているのです。ロシアには11の時間帯があるはずなのに。モスクワ以外の時間帯の場所にいても、列車がモスクワ時間で運行していることを忘れないようにしなければならないのです」。
「最後にロシアの列車に乗ったのは20年前にロシアを相手に働いていたときのことです。多くのことが変わりましたが、変わっていないこともたくさんあります。これは貴重な経験です。ちょっと飲みにバーに行くだけだとわたしたちは言ったのです・・・。おそらくわたしが人生で経験したもっともおかしな夜のひとつでしょう」とオーストラリアのサポーターは書いている。
他の人たちはこんな風にロシアの列車に乗っている。楽しみ方を知っているようだ。
夜行列車でモスクワからカザンに移動してきて、激しくエキサイトするコロンビアのサポーターたち。
「あれはもうすごい経験でした。コロンビアにはあんな列車はありません。コロンビアの列車は産業用の貨物列車しか走っていません。石油用とかそういうものです。人を運ぶものではないのです。ロシアの列車はとても快適でした」。ローカルメディアからの取材に対し、あるサポーターはこう答えている。
ワールドカップを取材している日本のある記者はツイッターで、エカテリンブルクからモスクワまで普通の列車に乗り、そのときある老紳士に明治維新が日本に与えた影響について尋ねられショックを受けたと書いている。また彼は若いロシアの兵士のグループにも遭遇したそうだ。
残念ながら、すべての人の旅行がスムーズに進んだわけではない。アルゼンチンの2人のサポーターは間違えてワールドカップの開催都市であるニジニ・ノヴゴロドではなく、ヴェリーキー・ノヴゴロドに到着してしまったという。しかしパブで出会った地元の人たち(おそらく同情してくれたのだろう)は、ノヴゴロドが2つあることを説明したうえで、アパートを借りるのを手助けしてくれたそうだ。しかし不運は列車の乗り間違いだけでは終わらなかった。アルゼンチンはその夜クロアチアに3–0で敗北を喫した。