1.博物館員タイプ
お気に入りのセリフ:どんなに美しいか見てください! 素晴らしい!
服装:なんだか折衷的で、1970年代のイヴニングドレスの上にウールのセーターを着ていたりする。外は25度だというのに。
ロシアには、以前にもここでお伝えしたように、たくさんの博物館がある。事実、約1000もあるのだ。博物館はアルバイトのガイドを雇っていて、彼らは仕事を引退した後、フリーランスのガイドとして働くことが多い。というのも、ロシアでは引退した人たちも、生活のために副収入を得るぐ必要があるからだ。
彼らはたいていとてもいい人たちだが、彼らの知識は、若い時分、つまり、ソビエト時代に習ったことに限られていることも多い。「なんて美しい」とか「なんて古い」とかいう喜ばし気な感嘆詞を使って埋め合わせようとしている何かがある。さらに、この手のガイドが英語を使うと、独特のぎこちないソビエト英語に出くわすことだろう。
2.歴女タイプ
お気に入りのセリフ:正確には分からないのですが、お調べいたします。
服装:あまりにも地味なので、派手な傘でも持たせない限りは、都会の人混みの中ですぐに見失ってしまうだろう。
「歴女」が勤勉なのは、自分の仕事の最初と最後の部分だ。彼女は、何日もかけて準備をし(ほとんどは夜。というのも日中は仕事や勉強をしているから)、ツアーに必要なことの5倍は知識がある。彼女はとても恥ずかしがり屋で、小さな声で話す。だから、なるべく近くで説明を聞くようにしよう。
この手のガイドは、すべての質問に最善を尽くして答えてくれる。しかし、複雑な質問となると、もっと研究が必要となるため、1、2日してからメールをくれる。あなたがすっかり忘れ果てたころに長い論文が添付されたメールが届くだろう。
3.横柄な地元っ子タイプ
お気に入りのセリフ:あなたはこの辺の方じゃないんですね?
服装:ポケットがたくさんついたベスト、サンダル履きに靴下、拡声用のハンドマイクを持っている。というのも、彼は長年煙草を吸っているせいで喉が弱いからだ。
この中年の男性(女性のこともある)は、彼(女)の生まれた町のことならなんでも知っていて、歴史学の学位を持っているようなものだ。そして、どんな建物や記念碑についてでも、いくらでも喋ることができる。
しかし、こうした長所はしばしば横柄な態度を伴うことがある。この手のガイドは、どんな質問もくだらないと思うのだ(“そんなこと当たり前の知識だろ!)。それで、質問した人を無知だという言い方をする。まあ、よくも我々の歴史をすべて知らないでいられるもんだね?
情報という点でいえば、この手のガイドは最高だ。でも、もしも彼(女)のお気に入りのテーマに触れてしまうようなことがあれば、何時間も説明を聞かされる覚悟でいよう。
4.総合保障タイプ
お気に入りのセリフ:「手短に言うと…」(30分の説明が続く)
服装:現代的で、最新のブランド物を着ている。しゃれたサングラスに腕時計、きっちりと整えられた顎ひげ。
ロシアでの、とりわけモスクワでの、最近の観光ブームのおかげで、若くて知的なイケメンの多くが、腕試しにツアーガイドにチャレンジしている。このビジネスでは、すでに地元の「スター」となった人たちもいる。
彼らは、この仕事のためにしっかりと丁寧に準備している。彼らのツアーは短くて気さくで、非公開の建物や個人所有の歴史的な建造物の中に連れていってくれたりもする。彼らの英語は申し分がない…唯一の欠点と言えば、こうしたツアーは値段が高い。
5.酔っ払いの歴史家タイプ
お気に入りのセリフ:ど忘れしてしたんだが、これには別の話があってね…
服装:なにかこう完全にカオスなのだが、ほんのちょっとスタイルがある――1960年代のTシャツの上に紫のシルクのスカーフとか。
このガイドにとって、ツアーはただでさえご褒美みたいなものだ。彼は長いこと正規の仕事からは外れている。というのも、悪癖と時間を守らないせいだ。しかし、自分の歴史の知識を分け与えるチャンスの到来は、彼にとって常に喜びなのだ。彼は、ほとんどすべての通りに行ったことがあるし、すべての街角で飲んだことがある。だから、彼のツアーの大部分は、ソビエト時代だった彼のすさまじい青春時代についての話だ。
歴史的な事実に関していえば、すっかり混乱した頭の中から出てくるので――彼らは多くのことを知ってはいるが、体系化されていないため、ユニークな事実が、ゴシップや都市伝説と一緒くたになってしまっている。これは、折衷的なツアーとなるかもしれないが、実に面白いこと請け合い!ただし、ガイドが飲み始めないようにしよう。というのも、酔いつぶれてあなたたちをほったらかすことになるからだ。