2016年、結婚件数に対する離婚件数の比(ロシア語)は、1対1.6だった。つまり、ロシアでは結婚より離婚が多いということだ。ここ二、三十年、ロシアにおける全結婚の60パーセント以上が離婚に終わっている。
人々は幼稚さや厳しい生活事情を離婚の原因に挙げるが、研究者はこれらが離婚と全く関係ないと指摘する。一つ確かなことは、夫婦の2組に1組が離婚するロシアが、国際的な統計をリードしているということだ。
幼稚な新婚夫婦と自由度の高い法律
「これ[高い離婚率]は結婚前の若者の無責任さと考えの浅さのせいよ! 彼らは子供じみた遊びを続け、結婚後に何が待ち受けているかほとんど想像できないの」と、家族の問題を扱ったインターネット掲示板でマリーナさんは書き込んでいる(ロシア語)。
実際には、夫婦の別れ方は、この感情的なコメントが示唆するほど劇的ではない。もちろん時にはそもそも選択を誤ったことがきっかけで離婚に至ることもあるが。
「私が元妻と出会ったのは二人とも若い頃でした。若者が成長するにつれ、人生観が変わることもよくあります。そういうことが私たちにも起こりました。」32歳で離婚したアレクサンドル・ピロゴフさんはロシア・ビヨンドの取材にこう話す。
研究者によれば、ソビエト連邦の崩壊から数十年を経て、ロシア人の生活における選択肢が増え、離婚に対する抵抗が少なくなったことも部分的には真実だが、この国の離婚率の高さは、人々が幼稚で無責任な選択をしてしまうということだけが原因ではないという。
「ロシアの離婚率を他国の離婚率と単純に比較するのは誤りです。国によって法的な離婚手続きが大きく異なり、それが統計に大きな影響を持つからです。」ロシア高等経済学院人口学研究所のセルゲイ・ウラジーミロヴィチ・ザハロフ副所長はロシア・ビヨンドに対しこう話す。
ザハロフ氏によると、凄まじい高離婚率の主な要因はロシアの自由度の高い家族法だという。ロシアではあまり手間も金も時間もかけずに離婚ができる。
ロシア人はネット上で、顧客に「ターンキー離婚」を提供する無数の法律事務所の広告を簡単に見つけることができる。料金は190㌦から400㌦程度で、「経験豊かな法律家と弁護士が、あなたが不在でも、お相手の同意なしでも、ご夫婦にお子様がいても、結婚生活を終結させます。」これはそうした広告の一つに書かれた文言だ(ロシア語)。
生活が厳しい
「そもそもロシアでの生活は厳しい。収入は低く、仕事はきつい。人々はこうした状況で人生を楽しむことができない。頭の中は、愛ではなく収入のことでいっぱい」と掲示板でアナスタシアさんは書いている(ロシア語)。
2015年の離婚に関するラジオ番組では、電話をかけてきた多数の男性が、金銭的な問題と妻の叱責を離婚の主な理由に挙げた。
驚くべきことに研究者は、経済はロシアの離婚率にさしたる影響を持たないと主張する。
「結婚と離婚は経済よりもっと基本的なものです。これらは人間の基本的な行動パターンで、人々の生活観に規定されます。人々は経済的要因を自らの基本的な必要に合わせて調整しますが、その逆はありません」とザハロフ氏は話す。ただし彼は、概して人々は経済が成長している時のほうが幸せに感じるということは認めている。
しかし、不十分な収入の悪影響が実際にこの国の高い離婚率につながっている可能性もある。ある全国調査では、離婚経験のあるロシア人のうち約40%が配偶者のアルコール依存を離婚の理由に挙げている。自分たちの住居を持たないことによる厳しい生活条件(23%)と口うるさい義理の両親(14%)が次に多い理由だ(ロシア語)。
離婚を防ぐもの
子供、共用資産、どちらか一方の金銭的独立が離婚のリスクを低減するが、これらもまた、幸せな結婚生活を必ず保証してくれるものではない。
「子供たちが事を複雑にしています。」30歳で離婚し、3児の母であるエレナ・ドヴレチェンスカヤさんはロシア・ビヨンドにそう話す。「3人も子供がいると、適当な仕事を見つけるのが難しいのです。それに、当然夫婦が収入を合わせたほうが子供を養うのは楽ですから」とこの女性は言う。
この家族の場合、子供が夫婦の鎹となることはできなかったが、世論調査(ロシア語)によれば、ロシアの夫婦の35パーセントが、結婚生活に不満があっても子供たちのために離婚はしないと答えている。