ほとんどのロシア人は、銃所持を合法化すれば、路上で発砲事件が多発するのではと恐れている。簡単なアンケート(数十人の無作為回答)の結果は、目覚ましいものだった。実に90%以上が銃所持の合法化に反対している
このトピックに関するいちばん最近の主な調査は5年前に行われたが、似たような結果が出ている。すなわち、国民の約80%が、ロシア人は銃を持たない方が良いと考えていた。
数字の背後に恐怖が
数字の背後には、ロシア人が互いに抱いている不信感があり、それが深く根付いている。 「ロシアが秘めている『攻撃性』は極めて高い。とくに貧困層ではそうだ。だから、銃規制を撤廃したら碌なことはない」。モスクワに住む25歳のコンスタンチン・エロフェーエフさんは、ロシア・ビヨンドにこう述べた。
銃規制撤廃のせいで家庭内暴力が殺人事件にまで発展するリスクは、ロシア・ビヨンドが話を聞いた人のほとんどが心配していた。しかし、ロシア人の深い相互不信こそが、彼らが規制撤廃に反対する主な理由であるようだ。
「ロシアには銃を扱う文化はなく、誰もそれを発展させもしない。これは、弱い者いじめをするゴロツキがはびこる国だから、銃は自己主張と自己顕示の手段として使われるだけだろう」。29歳のモスクワっ子、エヴゲニー・ノヴィコフさんはロシア・ビヨンドにこう語った。彼は、銃砲の愛好者だと自認するにもかかわらず、それをオープンに販売することには断固反対だ。
しかし、時折こんな印象も受ける。ロシア人の多くは、武装した凶悪犯に遭遇することなどよりも、自制心のない悪意を抱いた隣人のほうを心配しているようだ――彼らが銃で武装した場合には、ということだが。
33歳のモスクワ市民、ニコライ・マケーエフさんはロシア・ビヨンドに、「公衆道徳が崩壊しつつあるというのに、武器の合法的流通を許可するなんて狂気の沙汰だ」と語った。
銃規制撤廃派がじりじり拡大
数では圧倒的に劣勢だが、銃規制撤廃派は、自分たちに対する差別(と彼らは考える)に声高に抗議する。
「ロシア人が銃所持に適していないなどと決めつけるのは、ナチズムの一形態だ。例えば、フランス人やアメリカ人はロシア人より攻撃的でないとでも言うのか?どの国にだって兵器使用の面で信頼できない人がいるではないか」。31歳のモスクワ市民、セミョーン・シェフツォフさんはこう言った。彼はロシア・ビヨンドに対し、銃所持擁護派の気分をあからさまに表した唯一の人だった。
驚いたことに、社会学者たちは、ロシアの銃所持擁護派の数が安定して増えていることを示している。つまり、2010年に14%だったのが、2012年には22%に増加。ただし、その1年後には18%に後退しているが。
「我々は2013年以降は、このトピックについて調査していない。…調査が必要なのは明らかだ」と、社会意識と市場の調査を行う「ZIRCONリサーチグループ」の社会学主任研究者、イーゴリ・ザドリンさんはロシア・ビヨンドに語った。
その2013年の調査は、ロシアで大いに注目を集めて議論を呼び、そこでは銃所持反対派が擁護派を上回った。
ザドリンさんは、はっきりしたデータがないので、推測にとどまるとしながらも、現在の状況は5年前に見られたものとあまり変わらないだろうと言う。
「間接的な推論だが、この問題に関する世論に大きな変化はないと言っていいと思う。今は銃所持擁護派の新たな論拠は出ておらず、古い主張は説得力を失っているからだ。というのは、ロシアの犯罪発生率が下がっている一方で、銃所持が合法化されている国では、銃砲による大量殺傷事件が増えているため」。ザドリンさんはこう語った。
正確な数字を得るためには、大規模な調査を行うことが必要だが、少なくとも向こう数年間は、ロシアで銃所持が合法化されることはまずないと考えてよさそうだ。
*ロシア人がその歴史において、いかに再び銃所持の権利を失ったかについては、こちらをご覧ください。