現代ロシアの10人の新星:来年世界は誰を話題にするか

 ロシア・ビヨンドのリストにはさまざまな活動領域からさまざまな功績のある人々が名を連ねた。ひょっとしたら、まさにこの人々を基準として、今後数年間のロシアとその達成が占われることになるかもしれない。

1. セルゲイ・カリャキン、チェス

 史上最年少のグランドマスター、彼は12歳でその称号を手にした。2016年に行われた彼と同世代のノルウェー人棋士マグヌス・カルルセンとの対戦は生中継され、700万人が見守った。世界選手権での勝利は成らなかったが、セルゲイ・カリャキンはこのスポーツへの視聴者の関心を呼び戻した。

 27歳のカリャキンは“チェス棋士=失敗者”というステレオタイプを打ち壊し、チェス棋士が高級住宅に住み、新型のメルセデスに乗り、若者の世俗的な集まりに足を運び、ロシア連邦副首相と親しくすることができるということを、身をもって示した。5年前にはチェス棋士に投資しようという民間企業は一つもなかったが、今ではスポンサーが彼の“顔”をめぐって争っている。

 事実上カリャキンはロシアのチェスを復活させた。彼を待っているのは、2018年に行われるマグヌスとのリベンジ戦と、輝かしいキャリアの継続だ(彼の“チェス革命”は始まったばかりにすぎない、と考えられている)。

 

2. ユーリー・ドゥーディ、メディア

 出版社Sports.ruのこの31歳の編集長は2017年にYouTubeチャンネルで“ヴ・ドゥーディ”という番組を始め、三ヶ月半でメディアの最も有力な個人ブランドの一人となった。ラッパーやポップスターから政治家やビジネスマンまで、“大々的に売り出されている”人物に対する“深く”批判的なビデオインタビューという形式は、並々ならぬ需要を示した。200万人以上のチャンネル登録者と1億6千万回の再生回数を誇る。

 ドゥーディは16歳でキャリアを始め、24歳にしてロシアで最も人気のスポーツサイトの編集長となり、25歳で連邦テレビの番組を持ち、多くの人が認めるところでは、30歳で国内最高のインタビュアーの一人となった。現在ドゥーディの職業上の夢は、ヴラジーミル・プーチンにインタビューすることだ。

 

3. ヴィタリー・ブテリン、ビジネス

 モスクワ近郊のコロムナで生まれバンクーバーで育ったヴィタリー・ブテリンは、2014年に自身のプロジェクト“イーサリアム”(Ethereum)で世界技術大賞を受賞したさい、フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグを追い抜いた。これは、ブロックチェーンに基づくプロジェクトの創造が可能となるプラットフォームの開発であった。言い換えれば、誰でも所有でき、しかし誰も個別には所有できない非集中型の“世界的コンピューター”だ。

 ブテリンの場合、ブロックチェーンへの道はマイニングを通過していなかった。最初のビットコインを彼は文字通り手ずから手にした。彼はインターネット・フォーラムで暗号通貨について小記事を書き、その対価がビットコインで支払われたのだ。その後彼は暗号通貨の基礎にある技術について、またその技術で何ができるか、思いを巡らせた。このプロジェクトのためにブテリンは大学を辞めたが、それは無駄ではなかったようだ。クラウドセールでこのプロジェクトは1850万ドルを集め、2017年にはマイクロソフト、JPモルガン・チェース、インテルを含む世界最大級の会社がエンタープライズ・イーサリアム・アライアンスを創設した。これのおかげで2017年の4月までにイーサリアムの資本は4倍に膨らみ、40億ドルになった。

 

4. ニーナ・クラヴィツ、電子音楽

 今日、グローバルなテクノの舞台に立つロシア人と言えば、ニーナ・クラヴィツだ。まさにこの人物が、ハニー・デイジョン、ゲルト・ジャンソン、エイフェックス・ツインを抜いてイギリスの雑誌Mixmagの世界最高のDJランキングのトップに立ったのだ。モスクワから東に5200キロメートル離れたシベリアの街イルクーツクに生まれ、2003年までは、ニーナは何より有能な音楽ジャーナリストとして知られていた。彼女は国の主要な出版社に勤めていた。しかし2012年にクラヴィツは自身のデビューアルバムを出し、自らジャーナリストたちの注目の的となった。 

 クラヴィツのプレーの持ち味は、自信と高慢さ、色っぽさと催眠にかけるような声だ。「世界最大のステージであろうと、最も親密な場であろうと、ニーナは大胆に選択し、並外れた実験を行い、通常のピークの型を破っていく」とMixmagは指摘する。

 

5. カンテミル・バラゴフ、映画

 ナリチク(ロシア南部のカバルダ・バルカル共和国の首都)出身の26歳の青年は、ノーランや初期のフォン・トリアー、『パルプフィクション』のファンであり、故国のユダヤ人家族のドラマ、花婿と花嫁の誘拐を描いた自身初の長尺の映画『窮屈』(Теснота)を撮影した。デビュー作は2017年にカンヌ映画祭で認められ、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)の名誉ある賞を受賞した。競合相手には黒沢清、マチュー・アマルリック、ローラン・カンテがいた。

 それまでアレクサンドル・ソクーロフ監督(『エルミタージュ幻想』、『牡牛座 レーニンの肖像』、『モレク神』)の若き弟子はコーカサスの若者たちについて、彼らがロシアの中心部の人々とそれほど変わらないことを描いたインターネットドラマを撮影していた。『窮屈』は率直さの映画であり、同時に自分の子供のために親ができることと、「他人が心に入り込む余地がないほどに没頭するとき」を描いた映画でもある。彼の次作は戦争から帰還した若い娘が主人公で、彼はすでに大きな成功を約束されている。

 

6. ナデジダ・カルポヴァ、サッカー

 ロシアのサッカー界の希望の星は女性だ。22歳のナージャ・カルポヴァは世界で最も有望な若きサッカー選手の一人だ。チーム・メッシ(世界の無名のサッカー選手10人からなるリオネル・メッシの仮想選抜チーム)で唯一の女性だ。

 この選手はロシア一部リーグのモスクワの女子チーム“チェルタノヴォ”でプレーしていたが、今年“ヴァレンシヤ”の女子チームが彼女を買収した。またナデジダはロシアのアディダス大使でもある。彼女はシャネルを身に付け、またタトゥー入りの腕をした長い髪のこの女性の業績には、Tatler、Elle、Numero、Esquireといった雑誌のグラビアがある。

 

7. グノイヌイ(ヴャチェスラフ・マシノフ)、ロシアのラップ 

 ロシアのラップ界の新しいスーパーヒーロー、キング、音楽界のプーシキン。それまで無名だった極東の街ハバロフスク出身で27歳のヴャチェスラフ・マシノフがこう呼ばれ出したのは2017年、最も話題に上るロシアのラッパーの対決で彼が勝利を手にしたときだ。マシノフはミロン・フョードロフ(Oxxxymiron)を5対0のスコアで破った。彼らの対戦はYouTubeにアップされてたった一日で1000万回以上の再生回数を記録し、「グノイヌイって誰?」という質問が検索システムになだれ込んだ。このジャンルの歴史においてロシアのラップがこれほどの関心を呼んだことはよもやあるまい。

 グノイヌイ(膿んだ、という意味)、スラヴァKPSS、ソーニャ・マルメラドヴァ、スラヴァ・カレリン――これらはすべてマシノフの偽名だ。しかしグノイヌイが彼の創作を最も良く特徴付けている。辛辣で図々しい歌詞。彼自身の言葉では「不道徳な言葉でいっぱいで、自分の性格が膿んでいることを自認した」。彼は自分をメインストリームともアンダーグラウンドとも結び付けていないが、「ただ楽しから」、「部屋が欲しいから」ろ正直に白状しながら家庭用テレビチャンネルのトークショーの収録に通っている。「俺は嫌われてる。そしてそれは素晴らしいことさ。」グノイヌイはこう話す。

 

8. クリスティーナ・グリカイテ、モデル・ビジネス

 一年前までは、シベリアの街オムスク出身の16歳の少女はロシアの一般的な学校に通い、長めのおかっぱ頭をして、へそと舌にピアスをし、もっとボーイッシュだった。今では、ミラノのプラダに登場し、ファッションの家との長期契約にサインし、ロシアのヴォーグのために写真のモデルとなっている。これほどにも突然にクリスティーナ・グリカイテはモデル業界の最も有望な若手の星の一人となり、毎年発表される“BoF 500世界のファッション産業を形作っている人々”にランクインした。

 彼女の言葉では、ある時彼女はただ「なにもかもうんざり」しており、地元のモデル学校に入った。この少女は見出され、モスクワに写真が送られた。この後、事態は急速に発展し、クリスは一日に何回beautifulと言われるか数え、なかなか慣れることができなかった。

 

9. アリョーナ・コヴァリョヴァ、バレエ 

 アリョーナはボリショイ劇場で働いてまだ一年だが、ニューヨーク公演で早くもセンセーションとなった。ニューヨーク・シティー・バレエ団やパリ国立オペラの役者との共演でアリョーナ・コヴァリョヴァはジョージ・バランシンのバレエ『宝石』の60周年を記念した祭典で主役を演じた。その後の秋、彼女はモスクワで『白鳥の湖』に出演した。堂々としていて腕が長く、バレエには似つかわしくないほど高身長。それと同時に「彼女は技術的に印象深いが、ほとんどそれに気付かない。なぜなら彼女はこれほどにも人を惹きつけ、優しく安定しており、明らかに踊ることを幸せと感じているからだ。彼女が怖気付いても、決して分からないだろう。彼女はファレルでもオデットでもなく、新しい魔法の創造物だった。」バランシンの作品の最大の研究者の一人であるロバート・ゴットリーブは彼女のデビューについてこう書いている。ボリショイ劇場の18歳のプリマが大出世することは明らかだ。

 

10. ディリャラ・イドリソヴァ、オペラ 

 ウラルにあるロシアの共和国バシキールの出身者、ディリャラ・イドリソヴァについてロシア中が話題にし始めたのは、国の主要な演劇祭“黄金の仮面2017”での華々しい成功の後だ。ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのオペラ『ヘラクレス』は同時に3つの賞でノミネートされ、そのうちの一つ“今年の女優賞”がイドリソヴァに授けられた。バシキール・オペラのソリストは“バロックのセンセーション”、“バシキールの黄金のソプラノ”と評されている。現在彼女は国内の賞や国際的な賞を総なめにしているほか、ヨーロッパ中でバロック・オペラを披露し、ベルサイユの王立劇場、アムステルダムの“コンセルト・ヘボウ”、クラクフのコングレス・ホール、マドリード国立音楽堂など、行く先々で成功を収めている。芸術界における長く極めて順調な道がイドリソヴァを待っていると言われる。

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