涙の中の真実:ロシア人の目を涙で潤ませる6つのこと

 ロシア人が微笑むことは滅多にない。一方で彼らはたまに突然涙を流すことがある。これはどうしてだろう。その答えは、魂のこもった曲から、叙事詩、また母国に対する感傷的なノスタルジーまで、さまざまな方面に及ぶ。

1. 魂のこもった悲しい曲

 ロシア人は友人や親戚とともにテーブルを囲む長い夜のパーティーを楽しむ。彼らはおいしい前菜をつまんだり、たくさんのウォッカを飲んだりしながら、心に染みる歌を歌うのが好きだ。ふつう、客の一人がギターを手に取り、有名な曲を弾き始める。どういうメロディーが最も感動的なのか。第一に、ロマンスとロシアのフォークソングが挙げられる。“ナナカマド”(Тонкая рябина)は特に悲しい曲の一つで、ふつう伴奏なしに歌われる。「なぜ揺れながら立っているのだ、ナナカマド、頭を柵まで傾けて。道を横切り広い川を渡ったところ、高い樫の木が同じく孤独に立っている。」

 酒の席で人気の曲としては、“ああ凍える凍える”(Ой, мороз, мороз)、“私が悪いの?”(Виновата ли я?)、“黒いカラス”(Чёрный ворон)などがある。

2. 心のこもった乾杯の挨拶 

 お酒一渡りごとに乾杯を提案するのは、ロシアに古くからある伝統だ。公式な場では乾杯の挨拶は真面目で真剣だ。しかし親しい友人と過ごすパーティーでは、乾杯の挨拶はふつう皮肉やジョークに満ちている。とはいえ、中には涙を誘うものもある。

 ソヴィエトの人気コメディーである『コーカサスの虜』(Кавказская пленница)はおかしなセリフの宝庫で、思い出すだけで強い感情を呼び起こす。あるエピソードでは、主人公のシューリクがレストランにてワインと乾杯でもてなされる。その一つはとても感動的だった。「冬に向けて南へと鳥の群が飛んで行くとき、1羽の小さいけれど勇敢な鳥が言った。『僕はまっすぐ太陽まで飛んで行くよ。』そして小鳥はどんどん高く飛んで行くが、やがて翼は燃え、地中奥深くのどん底まで落ちてしまった。というわけで飲もう。僕らのうちの誰も、どんなに高く飛ぼうとも、ずっとチームから離れることがないように!」意外なことにシューリクは泣き始める。「どうしたんだ?」と別の仲間が尋ねると、シューリクはこう答える。「僕は鳥がかわいそうだ」

3. 叙事詩

 詩が感情を激しく揺さぶることがある。それが私たちにとって重要なものや人物に関するものであればなおさらだ。今日においても、アレクサンドル・プーシキンやセルゲイ・エセーニン、マリーナ・ツヴェターエワの詩はロシア人の魂の奥深くまで染み入る。20世紀半ばに録音されたアンナ・アフマートワの声を聴いてほしい。彼女がロシア史上の悲劇的な出来事に関する自作の詩を読み上げるのを聞けば、涙を流さずにはいられないはずだ。

4. 母国に対するノスタルジー

 ノスタルジーはしばしばロシア系移民の間で悲しみと愁いを誘う。彼らは時に孤独と悲しみのあまり、涙をこらえることができない。彼らが懐かしく思うのは、友人や親戚だけでなく、ロシアの文化もだ。「白樺の木々の写真を見ると泣かずにはいられない。」ロシアの有名なバンドBi-2の歌詞にこうある。彼らは1990年代の数年間を外国で過ごした。

5. 古き良き時代の回想

 故郷に加えて、ロシア人は“あの頃”のことも懐かしむ。“あの頃”とはどういうことだろう。昔のロシアはすべて今より良かった、という共通認識がある。「あの頃」はソビィエト時代(ロシア人の半数がこの時代を懐かしんでいる)だけを意味するのではない。中には1990年代の荒々しく無法だった時代を懐かしく思うロシア人もいるのだ。人々が懐かしむのは雇用の保障と安価な食品、それから若さと、もう二度と戻らない青春時代だ。

6. テレビで風変わりなコメディー番組を見ているとき 

 ロシア人は悲しさから泣くだけでなく、時に笑いすぎて泣くこともある。笑いの涙が溢れ出すのは、“満員御礼”(Аншлаг)や“歪んだ鏡”(Кривое зеркало)、エヴゲーニー・ペトロシャンのパフォーマンスなどのおかしな番組を見ているときかもしれない。国営放送のチャンネルで放映されるこうした番組は主に中高年に人気だ(若い人々はむしろVKや他のソーシャル・メディアでのインターネット・ミームを見て笑うことを好む)。ご自身でお試しください。この動画であなたは泣くだろうか?

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