ロシアに女性大統領が誕生する可能性は?:クセニア・サプチャク氏に続き女性2人が名乗り

クセニア・サプチャク氏

クセニア・サプチャク氏

Reuters
 女性がロシアの大統領になる現実的な可能性はあるだろうか。もしあるとすれば、一般国民の心をつかむのはどんなタイプだろう――有名な若い美女か、50代の賢い「鉄の女性」か?

クセニア・サプチャク氏とは

 先日、ゴージャスなテレビタレント、クセニア・サプチャク氏(36)が、2018年3月のロシア大統領選への立候補を表明すると、他の2人の女性もすぐさまこれに追随した。ロシアは美女が多いことで知られるとはいえ、この国が最初の女性大統領を受け入れる用意があるかどうかはまだ分からない。

 ウラジーミル・プーチン大統領が、来年の大統領選に出馬するかどうかまだ発表していないというのに、サプチャク氏はすでに話題をさらった感がある。

 「彼ら(政権)にも、私にも賛成しないが、現体制の下で生きることは望まない――そんな多くの人たちを私たちは結集させる」。サプチャク氏は、立候補を表明した最近の記者会見でこう述べた。

 サプチャク氏はかつて、野党寄りのポーズをとったことがあり、政権に批判的なリベラル派のテレビ局「ドーシチ(雨)」で、ショーの司会もしていた。

 彼女は、その辺の“隣の女の子”ではない。名門「モスクワ国際関係大学」を卒業している彼女は、プーチン大統領の「師」、故アナトリー・サプチャクの一人娘だ。彼がサンクトペテルブルク市長だったとき、プーチン大統領は副市長を務めていた。

 

女性2人が続いて出馬宣言

エカテリーナ・ゴルドン氏

 サプチャク氏の出馬宣言は、「女の誇り」を刺激したのか、他の女性たちにも、後に続くよう促した形だ。元ニューヨーク在住のジャーナリスト、エカテリーナ・ゴルドン氏(37)も、大統領選を戦う意向を示した。彼女の元夫は、辛辣なテレビ司会者アレクサンドル・ゴルドン氏。彼女は夫ほど有名ではないが、非常に多面的な才能に恵まれている。また、サプチャク氏と同じくブロンドの美女。ラジオ司会者、映画監督であり、小説も書いている。彼女の基本政策は、女性と子供の権利を守ることに焦点を当てている。

アンフィーサ・チェーホワ氏

 3番目の女性候補は、19世紀ロシアの有名な作家、アントン・チェーホフの名字を芸名につけたアンフィーサ・チェーホワ氏(39)。もっとも、作家のほうは、『ワーニャ伯父さん』のような魂の漂泊を描いた傑作で知られるが、その姓を冠した若い女性は、テレビショー「Sex with Anfisa Chekhova」で最も有名なセックスシンボルだ。

 潜在的候補者として、これら3人の女性が出現したことで、ロシア社会の様々な層に、急激に意見の分裂が生じた。彼女たちの勇気を賞賛する者もいるが、大統領選がサーカスに堕すると信じている者もある。

 「大統領選のために女性を見つけようとする試みが、映画のキャスティングみたいになってしまった。美女のショーか、ソ連時代のテレビ番組『さあ、女の子たち!』に近いものになっている」。ニュースサイト「Gazeta.Ru」は、最近の論説でこう書いた。

 多くの専門家は、プーチン大統領が出馬を決めれば、大統領選はもう決まりだと述べている。しかしそれでも、これらの若い女性にとっては良い経験になるし、国に議論を呼び起こす機会になると言う者もある。テレビ出演の時間を割り当てられ、何百万もの人々の前で国の問題について話す機会を得るのは、将来の政治指導者には良いチャンスになるだろうというわけだ。

 しかし、政治学者でかつて選挙戦の参謀だったコンスタンタン・カラチョフ氏は、この“女性トロイカ”は政治の「濫用」にすぎないと確信している。「有権者もそう見るだろう。もちろん、どんな女性にも投票する用意がある、ガチガチのフェミニストなら話は別だが」とカラチョフ氏。

 だが、女性候補の話はこれだけではない。長年下院議員を務め閣僚経験もあるオクサナ・ドミトリエワ氏(59)も、女性候補の一角に加わる可能性が高い。彼女はビジネス振興を掲げる「成長の党」の幹部。

 彼女は最近ジャーナリストに対し、「成長の党」が彼女を候補者に立てることを検討するかもしれないと語った。ドミトリエワ氏なら、重みのある選択肢になり得る。彼女は、民主リベラル陣営左派に近く、才能あるエコノミストで、1998年に労働大臣を務めている(セルゲイ・キリエンコ内閣当時)。

 

笑顔をふりまかない重量級の女性候補たち

2000年には、エラ・パムフィロワ氏(64)が、ロシア初の女性大統領候補となった。

 女性政治家はすでにロシア大統領選を戦ったことがある。2000年には、現在、中央選挙管理委員会委員長を務めるエラ・パムフィロワ氏(64)が、ロシア初の女性大統領候補となった。彼女は経験豊かな政治家だが、リベラル派のパムフィロワ氏の得票率は、1%にすぎなかった。

 2004年には、鋭い舌鋒と知性を持った日系ロシア人のイリーナ・ハカマダ氏がこれに続いた。彼女のパフォーマンスは、パムフィロワ氏をはるかに上回り、4%近くの票を集めた。ハカマダ氏は日系ロシア人で、企業問題担当相や国家会議(下院)副議長を務めたこともある。

イリーナ・ハカマダ氏

 社会学者によれば、ロシア人の全般的な気分は依然として女性候補者に有利ではないという。世論調査機関「レバダセンター」の2017年3月の世論調査では、女性候補者に投票する用意のあるロシア人は33%にすぎない。とはいえ、気分は変化しているようで、同じく世論調査機関「VCIOM」の最新の調査によると、54%が、候補者の性別は重要ではないと答えている。

 広告代理店「Depot WPF」のマネージングパートナー、アレクセイ・アンドレーエフ氏は、女性候補者が一般有権者の心を勝ち取るには、2つの戦略しかないと言う。そのうちの一つは、性別にこだわらない戦略。「その女性候補者は、いろんな外部要因の試練に対応し、あらゆる内的要求を満たす準備ができていると宣言する。そして、他の候補者よりもそれをうまくやると約束するわけだ」。アンドレーエフ氏は、これは多くの国で共通していると付け加えた。

 もう一つの戦略は、ニッチ(隙間)の問題に焦点を当てるもの。「女性候補者は、他の女性や老人や犬猫の問題等を解決するよう訴える。この戦略では国全体をカバーすることはできないが、それなりに社会的魅力があるから、あまり成熟していない有権者を集めることが可能」。アンドレーエフ氏はこう述べたうえ、今日のロシアではどちらの戦略もうまくいかないだろうと言った。

 大統領職を目指したい女性は、ロシアの最高権力者だった女性の一人を参考にすべきかもしれない。エカテリーナ2世(大帝)は、選挙で選ばれたわけではないが、今日にいたるまでロシアで最も偉大な指導者の一人とみなされている。神聖ローマ帝国領内の小さな公家に生まれたにもかかわらず、彼女は経済改革を推し進め、学芸を庇護し、強力な軍隊を創った。

 VCIOMが実施した3月の世論調査によると、エカテリーナ2世は、ロシア史上最も賢明な女性の一人と考えられていた。もし彼女が今生きていたら、2018年の大統領選に勝つチャンスは大いにあっただろう。

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