なぜソ連軍はナチスの戦車の爆破に「自爆犬」を使ったか

レニングラードの防衛。1943年。

レニングラードの防衛。1943年。

TASS
 1941年にドイツ軍がモスクワに向かって侵攻すると、ソ連軍は対戦車兵器の欠如のためほとんど絶望的な状況に陥った。絶体絶命のソ連軍は、高度に訓練された軍用犬を敵の撃破に用いることにした。

   第二次世界大戦の独ソ戦序盤、ソ連の対戦車犬は侵攻するドイツ軍にとって大きな脅威だった。爆発物を取り付けられた犬たちは、敵の兵器を破壊するために戦場に送り込まれた。今日では、この事実は動物愛護団体にとって不快極まりないだろうが、当時の状況がどれほど絶望的だったかを考慮することも重要だろう。

 恐るべき邪悪な敵がクレムリンの門のすぐそこまで迫っていたのだ。 ドイツ軍戦車の機関銃の位置は高すぎて、低い位置を走り込んでくる「自爆犬」を仕留められなかった。ソビエト歩兵部隊の援護射撃のために、ドイツ兵は安易に戦車から出て小銃で犬を撃つこともできなかった。

 ドイツ軍の戦車部隊は、戦場で犬を連れた対戦車砲兵部隊を見ると、しばしば攻撃をやめた。犬を用いた攻撃を防ぐ唯一の方法は、火炎放射器を使うことだった。ドイツ軍が攻勢に出れば、道中のすべての犬が仕留められた。ドイツ空軍機が空から犬に弾丸を浴びせることもあった。

「自爆犬」のルーツ

 ソ連軍が対戦車犬を使い始めたのは、1941年のナチス軍の侵攻がきっかけではない。実は彼らは、大祖国戦争勃発以前の1930年代からすでにそうした犬の訓練を始めていた。

  対戦車犬は、体に据え付けられた爆発物(TNT火薬換算で12キログラム)を運んで敵の戦車の下に潜り込むよう訓練されていた。爆弾は、長いレバーが標的に触れると爆発するようにできていた。

 犬は、戦車の下に潜り込む方法を調教された。調教師は犬に何日も餌を与えず、練習用の戦車の下に肉片を置いた。こうして、すべての戦車の下に食べ物があると犬に思い込ませた。重火器を恐れないようにも教え込まれ、また、敵の機銃攻撃を避けるため戦車の後ろ側から潜り込むようにも訓練された。

  対戦車犬たちは1939年に初めて赤軍に配属され、その2年後に実戦で効果を試されることになった。

破滅的な緒戦

 第一特殊砲兵部隊(212匹の犬と199人の調教師)は、モスクワ近郊の戦いで初めて実戦に臨んだ。

  犬を用いた最初の大規模な攻撃は、破滅的な結果に終わった。ソ連軍歩兵部隊の援護射撃がなかったためだ。結果として、ドイツ軍は容易に犬を仕留めることができた。さらに調教師は、ディーゼルエンジン式のソビエト戦車を使って犬を訓練するという重大なミスを犯していた。犬はディーゼルの匂いに慣れていたが、ドイツ軍の戦車はガソリンを使っていたのだ。このため、犬たちは戦場ですっかり困惑してしまった。

 生き残った兵士は犬とともに投降した。捕虜となった調教師は、尋問でソ連軍の対戦車犬の訓練法を明かしてしまった。

あらゆる前線での参戦

赤の広場でのパレード、モスクワ。自転車に乗っている軍用犬の調教師。

 第一特殊砲兵部隊は一掃されてしまったが、ソ連軍はドイツ軍に対して犬を使い続けた。戦略を変えた上で犬の訓練を再開した。1941年末までに1000匹の犬が前線で戦い、翌年にはその数は2000匹を超えた。

  1942年7月21日、自爆犬たちはアゾフ海沿岸の街タガンログ近郊の大規模な戦闘において、勝敗の行方を決定付ける働きをした。

 ドイツ軍の戦車40台がソ連軍の対戦車砲攻撃の中を猛進し、海軍歩兵部隊の陣地を制圧しつつあった。この時司令部とナチスの間に唯一残っていたのが第四対戦車犬中隊だった。

  56匹の犬が同時に攻撃を開始し、敵の多くの戦車を破壊した。これらの犬は敵の攻撃を止めただけでなく、ドイツ軍を撤退させた。

  レニングラード包囲の間、犬の一団が敵の戦車や要塞を吹き飛ばした。犬たちは有刺鉄線を巧みにかいくぐり、敵の位置を突き止め、人がいることを感じ取った掩蔽壕の入り口へと走った。彼らはいくつかの掩蔽壕と弾薬庫とを爆破した。

勝利への重要な貢献

地雷検知部隊の軍人と犬。1945年6月24日に赤の広場で行われた勝利のパレードにて。

 1943年半ばまでに戦線の状況は変わった。赤軍は戦争序盤に不足していた対戦車兵器が十分に手に入るようになった。結果として、ソ連軍は犬を使った自爆攻撃をやめた。

 犬たちは、この戦争で敵の戦車を合わせて304台破壊した。おそらく情勢がソ連側の有利に傾いたのは彼らの働きによるものであり、ナチズムに対する勝利に多大な貢献をしたと言っても過言ではない。

  勝利が確実になると、残った犬は地雷検知の任務のために再訓練され、その多くは終戦まで生き延びた。

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