この慣用句が生まれたのは、寓話作者イワン・クルィロフ(1769~1844年)のおかげだ。1813年に彼は、料理人について韻文の教訓的な物語を書いた。料理人は、猫のワーシカを当てにして、自分の留守中は、この猫がネズミから食べ物を守ってくれると期待していた。ところが戻ってみると、猫は食べ物をすっかり食い終えるところだった。
「猫のワーシカはずるがしこい!猫のワーシカは泥棒だ!
だから、ワーシカは調理場だけじゃなく、
庭に入れるのもだめだ、
羊小屋に貪欲な狼を入れるようなものだ
こいつは、こういう場所じゃ厄介ごとをまき散らす疫病神みたいなもので、とにかく害悪だ!
(ワーシカは、話は聞いたけど食べてるよ)」
こうした状況での似た表現として、「彼は耳をピクつかさえしない(彼は聞く耳さえもたない)」 “он и ухом не ведет” がある。つまり、まったく注意を払っていないということだ。