ロシアのフェミニストは「-ka」と戦う:ロシア語が突き付けるフェミニズムへの難題

アレクサンドル・キスロフ撮影
 ロシア在住のアメリカ人作家が、ある重要なトピックについて、つまりフェミニズムについてだが、ロシア人と話してみた。それで分かったのは、このトピックでストレートな議論をするのが意外に難しいということだった。原因は、ロシア語そのものにあった。

 アメリカなら、フェミニズムをめぐる対話は、言ってみれば、埋め立て地をはさんで両側からメガホンでがなり立て合うようなことが多い。彼らは大声でしつこくしゃべり散らす。そして、こう言っちゃなんだが、常識が勝利することはあまりない。が、米国ではこれを「進歩」と呼ぶ。

 一方ロシアでは、私が暮らしてきた間、身近なところでは、フェミニズムが話題にのぼることは滅多になかった。そう言えば、二人の男性が、それぞれぜんぜん別の機会に、同じ奇妙な質問を私にした。

 「女性がスーツケースを運んでいるときに手伝ったら、アメリカではセクハラで訴えられるの?」。私がしかめっ面をして、「まさか、もちろんそんなことないよ」と答えると、今度は、フェミニズムについて、また機内持ち込みの荷物の重量制限について、しばしばぶつくさ文句を言われる。

 ところで、英語圏以外のいくつかの国では、フェミニズムに言語的側面がある。これについては、英語の話者は考えずに済む。ロシア語には、ロマンス諸語と同じく、「性」があるのだ。ということはつまり、何らかのオブジェクトは、言語的に男性、女性、または中性だということ。

しかも、ロシア語にはまだまだ先がある。(生物学的な)男性または女性に言及するときには、言葉も変わる(たとえば、女性が主語なら動詞の過去形は女性形になる)。そして、あなたが男性または女性として話すなら、これはもうあらゆる相手――彼、彼女、彼ら等々――の脳みそをよじらせる。そして、米国でよく言われている論拠を与えることになる。米国には自分の性を男女どちらかに区別していない人がいるのだから。

 これはつまり、仮にある人がロシアで性を変えて生きることを選んだ場合、誰もがその人との話し方を変える必要があるだけでなく、その人自身がスピーチパターンを劇的に変えねばならないことを意味する。だから、このことは、単純な代名詞の議論をはるかに超えて(Heを使うかSheを使うかといった)、ロシア人にとって大きな障壁と一連の課題を生み出すことになるわけだ。

 あなたが性に関する或る人の選択に賛成か反対かは、まあ置くとして、私はロシア人がこのジレンマをどう処理するかに興味があった。で、私は友人(女性)に尋ねた。

 「ロシア人は、言語の性に大きく依存しているのに、どうやってフェミニズムの問題のかたをつけるのさ?」

 彼女は答えた。「kaよ!」

 「何それ?」

 「ロシア人はね、どんな職業でも、その職業に就いているのが女性であるときは、語尾にkaを付けるのよ。女性の博士は、博士- ka、作家なら作家- ka、ブロガー- kaという具合ね。すごく醜悪よね。言葉を台無しにしているわ!」

  私は、それは変だと思ったので、彼女にそう言った。

 「それは変だよ。アメリカでは、反対のことをしている。つまり僕たちは、すべての職業を言語の性としては中性にしているんだ」

 しかし、彼女はもう聞いていなかった。彼女はぶつぶつ「KA」をつぶやき、立ち上がって台所を出ると、今度は「メガホン」を持って戻ってきて、窓の外に向かってがなり始めた。「KA! KA! (カーカは『うんこ』の意味もある)。ええい、どいつもこいつも、いいかげんにせえ!」

 私は、この問題をもう少し深く掘り下げてみることにした。そして自称「ラドフェム」(ラディカルなフェミニスト)である、別の女友だちに聞いてみた。

 「KAの“落とし前”はどうつけるの?」

 「そうね…」彼女は私に言った。「ロシア語では、職業以外の多くの言葉にも、女性蔑視の言葉があるわね。だから、多くのフェミニストはこれを変えたいと思っているの。だって、たとえば、女性-医師に電話する、なんて言ってるわけだけど、アホみたいじゃない?」

 「で、それは職業だけに関係するのかな?」。私は重ねて尋ねた。

 「まあ、職業の呼び名を変えれば、ほとんどうまくいくわね。基本的にロシアでは、フェミニズムは次の二つの偏見の間に位置していると言える。一つは『フェミニストは、醜くて、毛深くて、怒りっぽくて、セックスに満たされていない』。もう一つは『良いフェミニストになろうとするなら、男をめぐっても競争すべきだ』」。彼女はこう言うと立ち上がり、台所の周りのキャビネットを開け、引き出しの中をのぞき始めた。

 「何してるの?」と私は尋ねた。

 「自分の冴えないメガホンを探してるのよ!」

 フェミニズムはほぼすべての国で大きな展開を見ている問題だが、ロシアには、他の国にない、克服すべき言語的なハードルがあるのだ。

 フェミニズムをめぐる問題、対話は、急展開し、白熱している。そして、男性を含むすべての人々を巻き込んでいる。だがこれは、かつての「スーツケースを持つ騎士道」の日々を懐かしみ、嘆くためにメガホンを手に取ることを意味しない。

 ***

ロシアにおけるフェミニズム:読者からの回答

ユーリアさん

 「ロシアのメディアは、フェミニズムをこんな風にしか見せようとしない。つまりそれは、ラディカルなフェミニスト・グループの運動で、ロシアの視聴者は、これを受け入れる用意は100%ない…。フェミニズムと、腋毛を剃りたがらないクレイジーな女性の、男嫌いの組織とを、人々は結びつける。これが一般的な男性の意見だが、でも、女性にとってもそれは負けず劣らず悲劇的。女性は、もし自分がフェミニストになれば、自分の夫や恋人はもう洟もひっかけないだろうと思い込んでいる。つまり女たちは、可愛らしいドレスを着た、か弱い主婦の伝統的な女性像を放棄すれば、男は彼女らに興味を持たなくなると考えている」

マリアさん

 「私は、他の国でのフェミニズムをめぐる状況は知らない。けれども、時々私は、ロシアのフェミニストは、家庭内暴力や中絶の権利のような問題に焦点を当てるのではなく、単に自分自身と戦っているように感じる」

カムチャツカのクセニアさん

 「私たちの小さな町にはフェミニズムなんてない。ほとんどの女の子は、ただサバイバルしようとしている。彼女らは働く。そして、約300ドルの月給をもらう。女の子は誰か男の子を見つけなければならない。一人では生きられないから。あるいは、両親とずっと暮らすこともあり得る」

*ベンジャミン・デイヴィスは、ロシア在住のアメリカ人作家。ロシア人との会話を通して、無意味そうなものから深~いものまで、さまざまなトピックを探る。来週、彼は、ロシア人がドナルド・トランプ米大統領についてどう考えているか探求するだろう。もしご意見、ご感想があれば、またはベンジャミンに何か特定のトピックを探求させたいなら、下のコメント欄に記入するか、フェイスブックでロシア・ビヨンド宛に書いてください。

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