ロシアでは、ウェイトレスや店員などに、若い女性、娘を意味する「devushka」で呼びかける。「娘さん!」というわけで、これを知ると外国人はみな驚く。しかも、外国人にとって残念なことに、この言葉は「devochka」に発音が近いから、うっかりするとそのように聞こえるリスクもある。これは「小さな女の子」という意味だ。だから、ちょっと舌がもつれるだけで、その女性を怒らせ、あなたはヤバい立場に陥るかもしれない(注文した食事をよけい待たされるかも)。
だが、本当の悪夢のシナリオは、あなたが間違って「dedushka」(年配の男性、老人)と言った場合だ。そうすると、あなたはその女性の年齢を間違えるだけでなく、彼女を「おじいさん」呼ばわりすることになる。ご注意ください!
まず警告させていただく。ロシア語のストレスに慣れるまでにはかなり長い時間がかかる。あなたが新しい言葉に直面し、それをどう発音すべき見当もつかないことがしばしばあるだろう。
「いちばんフラストレーションがたまるのは、簡単な言葉を間違ったストレスで発音してしまったとき」と、モスクワ国立国際関係大学のイギリス人留学生、クリス・パッチマンさんは語る。「あるときレストランを予約しようとしたところ、場所はどこにあるのか知るために、約10分間『住所』という意味のロシア語の単語「adres」を繰り返した。後で私は「Adres」ではなく「adrEs」のように言っていたことが分かった。そのせいでその女性は私が何を言っているのかぜんぜん分らなかった」
誤解されるのが実際には最良のシナリオというケースもある。例えば、レストランで「ya plachu」(私は払います)と言うときに、ストレスを「a」に置くと、「私は泣きます」という意味になり、支払うつもりはないことを宣言することになる。
また、もしあなたが単語 「pisat」のストレスを間違えたら…神よ、救い給え!「a」にストレスを置くと、「書く」を意味するが、「i」だと「おしっこする」に。文脈次第では、すごくまずいですよ、皆さん!
信じてもらえるかどうか分からないが、「I very like」をロシア語にそのまま移すと、「ya ochen lyublyu」となり、ロシア語として完全に正しい。だから、あなたが英語をそのまま露訳しようとすると、いろんな問題にぶつかることになる。例えば、「I like very much」を機械的に直訳すると、「ya lyublyu ochen mnogo」と、まったく意味不明になる。
しかし、結局あなたはそういうことに慣れるだろう。そしていつの日か、あなたは熟達したロシア語でロシア人のパートナーに「とても愛している」と伝えられるかもしれない。すばらしい!
「khorosho」(よい)と「moloko」(ミルク)はたぶん、あなたが学んだ最初のロシア語の単語のなかにあっただろうが、残念ながら、あなたはそれらを間違って発音したのではないか。つまり、すべての「o」を同じように発音しがちなわけだが、実は、ストレスのない「o」は、例えば、「Moskva」(モスクワ)の場合のように、「a」と発音される。 「khorosho」(よい)と「moloko」(ミルク)の場合は、最後の「o」にストレスがあるので、「mahlahko」、「kharasho」のように聞こえる。
しかし、ロシアの地方の中には、「o」をすべて同様に発音するところもある(例えば、ウラジーミル州)。ということはつまり、もしあなたがついていれば、あなたがその発音を間違えても、相手はあなたがそういう地方からやって来たと思うだけかもしれない。もっとも私はそんな幸運は当てにしないが。
「ロシア語の3回目の授業にときに、私は先生に「『行く』はロシア語でどのように言うのですか?」と尋ねた」と、クリスさんは振り返る。「すると彼女は、『あなたはまだそれを習う準備ができていない』と答えた」
ロシア語では、「私は行った」とか「私は行くだろう」は、以下の条件によって千差万別となる。つまり、乗り物に乗って行くのか、歩いて行くのか、目的地に直行するのか、迂回していくのか、行って帰ってくるのか(往復するのか)、それとも行ったきりか…。また無数の接頭辞がいろんな意味、ニュアンスを添える。迂回する(об-)、中へ入る(в-)、外へ出る(вы-)、立ち寄る(за-)などなど。
しかし、これらの「運動の動詞」をすべて習得することは非常に重要だ――もしあなたがロシア人と話しているときに、彼(彼女)がビックリ仰天することを望まないならば。間違った動詞を使うと、「私はオーストラリアに徒歩で行った」というようなことになりかねない。
「こんな音を発明した人は悪魔よ」とサンクトペテルブルク工科大学に留学したアメリカ人、エレノア・ウィルソンさんは言う。「お腹のあたりに軽くパンチを見舞われたときに出るような音ね」
これは非常に独特な音なのだが、残念ながら、外国人はちゃんと発音するのをあきらめて、「i」のように発音しがちだ。だがそれは危険である。そうすると、「ネズミ」(мышка, “myshka”)と「小熊」(мишка, “mishka”)の区別がつかなくなる。もっと深刻なのは、「存在する」(быть, “byt”)と「殴る、打つ」(бить, “beet”)がごっちゃになってしまうこと。
これはロシアにいるすべての外国人に起こることだ。外国人が平叙文みたいに聞こえる何かを言うと、数秒間、「気まずい沈黙」があった後で、「ところで、今は質問したんだけど」と、その外国人は「解説」する羽目になる。
こうしたロシア語のイントネーションの変化に慣れるには、しばらく時間がかかるが、調整する方法はある。短い文の場合は、イントネーションのみが、平叙文と疑問文の違いになる。たとえば、 「Это ресторан(Eto restoran).」(これはレストランです)と「Это ресторан?」(これはレストランですか?)のように。うまく言えるようになるために、驚いたような調子で発音してみよう。それで、疑問文に必要な、誇張されたようなトーンを与えることができるだろう。
「僕はサンクトペテルブルクに旅行に行き、ある男性に「Eto Ermitage?」(これはエルミタージュですか?)と聞いてみた」と、モスクワ大学に留学していた、ウェールズのスコット・ジョーンズさんは言う。「そしたら、彼は振り向いて、それを見て、答えた。『Ya znayu(知ってるよ)』」
もしそれが長い疑問文なら、文を発音しながら上向きのイントネーションを抑え込み、最後に語尾のところで、最初の調子に戻る。奇妙に思えるかもしれないが、「習うより慣れよ」だ。
ヨーロッパの他の言語を話す人は、ロシア語の「симпатичный (“sympatichniy”)」は、例えば、フランス語の「sympa」とかスペイン語の「simpatico」と同じもので、要するにだいたい「nice」と訳せるだろうと思う。ところがそのつもりで使うと、精神分析学の「フロイト的失言」(無意識の動機、願望などを暴露する失言)になりかねない。というのも、このロシア語は、「感じのよい、チャーミングな、外見の美しい」などの意味だからだ。
ロシア語で「nice」と言いたいなら、「приятный (priyatniy)」か「добрый (dobriy)」を使った方がいいだろう。
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