タタール民族はロシアで2番目に人口が多い民族である。彼らはとてももてなし好きで、週末にはお互いの家を訪問し合い、さまざまな料理をふるまう。そこでしばしば登場するのが「大きなパイ」を意味するズール・ベリシュ。このパイは古来より伝わる伝統的な大きいパイで、パン種を入れていない生地もしくは、イースト生地に脂肪分の多い肉(羊肉、牛肉、ガチョウ肉、鴨肉など)と麦またはジャガイモを詰めて作られる。ズール・ベリシュを小さめに作れば、それはワク・ベリシュと呼ばれる。
近年、フィリングに使われるのは牛肉、ジャガイモ、玉ねぎだけである場合が多い。昔はいくつもの種類があり、ガチョウをつぶす機会があれば、親戚中が集まってガチョウのモツとジャガイモでズール・ベリシュを焼いた。フィリングには溶かしたバターとガチョウの脂肪が惜しみなく使われるので、お腹にはやや重いのだが、味はこの上なく良くなる。タタール共和国の主婦は、蕎麦の実を他の材料と一緒にフィリングに詰めてパイを焼くときもある。そうすれば、肉汁や脂肪分がすべて蕎麦の実に吸収されるのからだ。
ズール・ベリシュは単なる食べ物以上のもので、家族が集合するよい口実になる。今は、ズール・ベリシュは切り分けられてそれぞれの皿で食べるのであるが、昔は、真ん中に置かれたパイの周りを囲んで、スプーンですくって食べ、くつろいだ会話をのんびりと楽しんだ。
結婚式では、用意されたズール・ベリシュを祖母たちが見て、この若いカップルの未来の生活がどのようなものになるか占った。そんなわけで、新婚カップルの母親たちは、このパイを焼くときには最高で新鮮な材料を使う。
材料(8人分):
- 小麦粉 450 g
- サワークリーム 150 g
- ケフィール 150 g
- ベーキングパウダー 小さじ1
- バター(出来上がったパイに塗る) 15g
- ジャガイモ 700g
- タマネギ 200g
- 牛肉 600g
- ブラックペッパー、塩 適宜
作り方:
1. 牛肉から作り始める。洗って切った肉を、水を入れた鍋に入れ、数時間茹でる。調理中に塩コショウを加える。
2. 生地を作る。サワークリーム、ケフィール、塩小さじ1/2を混ぜ、小麦粉とベーキングソーダを加えて、生地をこねる。小麦粉は一度にすべて加えないで、少しずつ入れて調整する。
3. 生地が柔らかくなったら、ラップかふきんをかぶせて30分休ませる。
4. フィリングを作る。茹でた肉を小さな角切りにする。
5. ジャガイモとタマネギは皮をむき、小さな角切りにする。
6. フィリングの材料を合わせ、塩コショウをし、しっかり混ぜる。
7. 生地から150〜170gくらい取り除いておく(パイの穴を塞ぐ蓋になる)。残りの生地はトルティーヤ状に丸く伸ばし、バターを塗った型に、端が少し型の上に乗るように入れる。
8. フィリングを等分に入れる。
9. 生地の残りから100g取り、丸く伸ばす。型よりも少し小さめにすること。フィリングの上に置き、周りを固定する。
10. 残った生地から15〜20g取り、蓋のつまみを作る。残りの生地から、「蓋」の直径サイズの薄くて丸い飾りを作る。写真のように、ローラーかナイフで生地に切り込みを入れる。
11. 生地を真ん中に置き、写真のような柄になるよう切り込みを合わせる。
12. パイの中央に、直径1.5〜2㌢くらいの穴を開け、つまみで蓋をし、180℃のオーブンで2時間ほど焼く。40〜50分ほどしたら、蓋を開け、少量のブロスを注ぐ。温度を150〜160℃に下げ、パイを焼く。
13. タタール・パイをオーブンから取り出し、バターを塗る。パーチメント紙(またはアルミホイル)とタオルで包み、15〜20分室温でおいておく。ズール・ベリシュは、本格的なランチにもディナーにもなる。新鮮な野菜とハーブと一緒にいただいてもよい。どうぞ召し上がれ!