アナスタス・ミコヤン(ソビエトの食品産業担当人民委員)によって、廉価な「棒つきエスキモー・アイス」の大規模生産が決定された。彼はこのアイスをソ連国民一人当たり、年間最低5キロは食べると確信していた。
エスキモー・アイスがソ連に現れたのは1930年代で、まもなくソ連はアメリカに次いでアイスクリームの生産と消費量で世界第2位になった。
しかしながら、アメリカやフランスの製品と比較してもその品質は優れたものであった。エスキモー・アイスは、GOSTとして知られる評価の高いソ連国家標準に則って生産されたことから信用されるものとなった。ソ連のアイスクリームには保存料などは一切使われておらず、天然ミルクだけが使用された。すべての種類のアイスクリームがただひとつの技術を基に生産されていたので、ソ連のどの都市で作られても、提供される製品はほぼ同じ味であった。
年配の人々は、ソ連時代はアイスが店の棚に残っていることはなかったとよく言う。というのも、アイスは入荷されるやいなや売り切れたからである。店に入って来るのは多くとも週に3回であった。そのため、アイスクリームを買い求める人々の行列はとても長くなった。
しかも、地方の村々の店ではアイスクリームというものは売られていなかった。そのため、地方に住む人々は、それを埋め合わせるために、家庭で、独自のレシピでアイスクリームを作り、買ったものでは味わうことができないアイスクリームを楽しんだ。そのレシピはとてもシンプルで、ただカップの中で雪とサワークリームと砂糖を混ぜ合わせるだけというものであった。すると見た目は悪いが、本物のようなものができた。
つまり、基本的な材料と技術の知識があれば、本物の雪がなくても、家庭で有名なエスキモー・アイスをつくることができるというわけである。ここでは、1959年のソ連の料理本に掲載されていたものを紹介する。この作り方で、必ず素晴らしいエスキモー・アイスが出来上がる。
材料(アイスキャンディー8本分)
クリームベース:
- 牛乳(脂肪分3.2-6%) - 400 ml
- 生クリーム(脂肪分 33%) - 130 ml
- 卵黄 – 4個分
- 砂糖 - 130 g
- バニラ・シュガー – 5〜7 g
プロンビール・アイスクリーム:
- 上記のクリーム部分すべて
- 生クリーム(脂肪分33%) - 130 ml
チョココーティング:
- バター - 100 g
- チョコレート - 100〜150 g
作り方:
1. クリームベースから作る。まず卵黄、砂糖、バニラ・シュガーを白っぽくなるまで混ぜる。砂糖が完全に溶けていなくても、卵黄が白っぽくなっていればよい。
2. 牛乳と生クリームを混ぜ火にかける。沸騰する寸前で火からおろす。
3. 熱した牛乳と生クリームを混ぜた卵黄に加えていく。このとき、必ずかき混ぜ続けること。
4. 合わせたものを弱火にかけ、かき混ぜ続ける。ここでも沸騰させないこと。最後に、牛乳と卵を合わせたものが、半透明の層がスプーンの裏につくくらいどろっとする。この工程には、鍋の底の大きさにもよるが、15分から25分かかる。
5. クリーミーなアイスクリームはこれで出来上がり。漉して、室温に冷ます。表面に膜ができないように混ぜ続けること。室温まで冷めたら、冷蔵庫に入れ、10〜20分冷やす。
6. ここからプロンビール・アイスクリームを作る。残った生クリーム130gを角が立つくらいに泡立て、漉して冷やしたクリームに少しずつ加えていく。ミキサーは使わないこと。スパチュラを使って、ふんわり感を残す。
7. 冷蔵庫に入れ、20〜30分冷やす。取り出したら、全体を混ぜてから、ラップをひいた型に流し入れ、冷凍庫に入れる。
8. 最初の1時間ほどは、15〜20分おきに取り出し、かき混ぜる。そのあとの3〜4時間は30〜40分おきに取り出し、しっかりと混ぜる。泡立て器を使うか、スプーン、ブレンダーでもよい。とにかく型の中のすべてのアイスを崩して混ぜること。そのあとは密閉容器に入れ、6〜8時間、冷凍庫で冷やす。
9. 次にアイスクリームをエスキモーにする。まず、容器からアイスクリームを取り出し、長方形にカットする。そのあと、棒を差し込み、必要であれば、形を整え、もう一度、冷凍庫に戻して、1時間ほど冷やす。
10. バターとチョコレートを溶かし、なめらかになるまで混ぜ、チョココーティングを作る。チョコレートは少し冷やす。
11. 高さのある細いグラスを使ってコーティングする。グラスにチョコレートを注ぎ、アイスクリームを浸していく。取り出したら、チョコレートが少し乾いたら、持ち上げ、光沢がなくなるまで待って、その後でクッキングシートの上に置く。この工程は手早く行うこと。
12. これでオリジナル・エスキモーの出来上がり。密閉容器に入れるかアルミホイルで包んでおけば3ヶ月は保存できる。