ソ連の時代、外国人がソ連を旅する理由は3つだけだと信じられていた。バレエ、サーカス、そしてアイスクリームだ。
この伝説はどのくらい真実なのかはわからないが、ソ連のアイスクリームは確かに来て食べる価値はあった。当時、アイスクリーム製造の基準はとても厳しくてGOST(国家標準規格)で厳密に管理されていた。
この天国にあるような冷たいクリーミーな食べ物で、一番なのが「プロムビール」である。これは、フランスで最初につくられた簡単なミルクアイスが基本であるが、とても人気となりソ連全土に広まった。プロムビールは乳脂肪分が多く含まれているのと、ソ連では白砂糖に加えて甘いコンデンスミルクを使っているのが特徴である。しかしながら、乳脂肪の生産が追い付かなかったので、プロムビールはいつも品不足であった。特にモスクワ、レニングラードやソ連内の共和国の首都以外ではそうであった。それほどプロムビールが人気があったと言えるのである。
当然、プロムビールはエスキモーのようないろいろな他のアイスクリームを作るのにも使われた。エスキモーは、チョコレートをコーティングした棒付きアイスである。スタカンチクというのもあり、これは柔らかいコーンに入ったプロムビールだ。
1960年代の後半になって、ソ連ではようやくアイスクリームを棒状につくることができる装置を導入した。これを使った最初のアイスクリームは、ホイップチョコグレーズでコーティングされたもので、「ラーコムカ(グルメ)」と名付けられた。チョコレートを使ってコーティングすることは、ソ連のシェフによって考案され、このアイスクリームはたちまち大人気となった。
しかし南米での天候不順の結果カカオ豆の輸入が激減すると、シェフたちは新たなアイデアを思い付いた。
カカオ豆が無いとラコムカの生産は減少せざるを得ないので、代わりにナッツによってコーティングした「ナッツクラッカー」を考え出したのである。
しかしながら、海外からのナッツの供給が不安定になるという問題がまた突然あらわれて、シェフたちは工場の閉鎖を免れるためのあらたなアイデアをまたまた思い付いた。それが、「ボロジノ」が1977年に登場した背景である。
アイスクリーム「ボロジノ」
Vasilisa Malinka撮影コーティングに使うクレームブリュレはバターとクレームブリュレシロップから作られた。このシロップは国内で生産されたコンデンスミルクと砂糖から製造されるので常に十分な量が確保できたのである。
この棒状アイスはアルミ箔か紙でくるまれた。それは1812年のロシアとフランスとの間で戦われたボロジノの戦いで使われた大砲をイメージしたものである。
ロシアはロシア軍が勝ったと主張しているが、西側の歴史ではナポレオンが勝利したことになっている。
このアイスがボロジノと言われるのはどうしてか?想像するにフランスのデザートであるクレームブリュレを材料に使っているからであろう。さらにボロジノの戦いに関連させて、ロシアが戦いに勝利したことを誇示しようとしたのかも知れない。
子供のころ棒状アイスを買うことは許してもらえなかった。アイスが溶けて服を汚すからである。でも、このアイスは大好きだった。
ボロジノはもう売られていないが、大人になった今ではどんなアイスを食べても文句を言われない。
でも、今でもこのクレームブリュレとプロムビールで作られたアイスが最高で忘れられない。
さあ、このソ連時代の棒状デザートを今風にひとひねりして作ってみよう。
ゼラチンを冷たい牛乳50gに浸し、置いておく。
卵黄と砂糖を混ぜ、色が明るくなるまで泡立てる。
残りの牛乳(300g)を鍋に入れ、クリーム200gを加え、温め始める。ミルクパウダーを加え、かき混ぜ続けながら沸騰させる。
沸騰させた牛乳とクリームの一部を卵黄の中に入れる。完全に混ざるまで混ぜ、残りの牛乳とクリームと一緒に鍋に注ぐ。液体の温度が83度になるまで弱火にかけたら、氷の入ったボウルにつけて冷やす。
残りのクリーム(300g)を2倍の大きさになり、固くなるまで泡立てる。コンデンスミルクを加える。
冷やしている液体が冷めたら、そこにホイップクリームとコンデンスミルクを加え、アイスキャンディ型に入れる。
冷凍庫で最低3時間、あるいは一晩中冷やす。
クレーム・ブリュレ・コーティングの材料:
コンデンスミルク、砂糖、水15gを小鍋に入れる。絶えず混ぜながら、カラメル状になり、茶色に色づくまで火にかける。焦げないよう気をつけること。
水100gをカラメルの中に加え、ムラのないシロップになるまで火にかける。出来上がったら、完全に冷やす。
バターを室温に戻し、シロップ100gを加える。完全に混ざるまでかき混ぜる。明るい色の液体になる。
コーティングしやすいよう平たいコンテナに入れる。アイシングが固く、冷たくなってしまうことがあるので温かい水を入れたボウルをそばに用意しておく。プロンビールの棒状アイスにアイシングを塗り、冷凍庫に入れる。
これでボロジノアイスの出来上がり!筒状ではないが、お味は昔ながらのまま。そのまま召し上がれ!
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