独自の料理を誇るロシアの10州

ロシア料理
エレオノーラ・ゴールドマン
 どの地方に行けば塩味のお茶が飲めるのか?ダゲスタンでは何種類のダンプリングを一度に食べられるか?

1. タタール共和国

 タタール料理はロシアでももっとも人気のあるもののひとつ。エチポチマク(文字通り「三角」の意)と呼ばれる三角形のパイはすべてのグルメの心をつかむだろう。別の種類のパイでエレシュと呼ばれるものがある。これは、味はエチポチマクと似ているが、形は丸く、「蓋」がついている。フィリングは両方ともふつう鶏か肉にジャガイモとブロスをあわせる。これは誰でもできる間違いのない組み合わせでパイを美味しくジューシーにしてくれる。

 この地方のスイーツは蜂蜜を使って作られ、有名なチャクチャク(揚げたパイのシロップ漬け)やトーキッシュ・カレヴェというコーン型の蜂蜜菓子がある。

2. ヤクート共和国(サハ共和国)  

 ヤクート地方の先住民族にもおいしい料理がある。ヤクート人は永遠に続くと思われる冬と永久凍土の厳しい自然環境の中に暮らしているため、果物や野菜は乏しいが、肉や魚を豊富に使う。メインとなる料理は、もちろん、ストロガニナ。凍った魚を薄く削ったものである。次はインディギルカ・サラダだ。この名はヤクートの川から取られており、凍った魚を細かく切り、タマネギとひまわり油を合わせる。キョルチェフとよばれる凍ったベリーにサワークリームをかけたデザートのためのスペースをお腹にあけておくのを忘れずに。

 

3. ダゲスタン共和国

 ダゲスタンはロシアの中でももっとも民族的多様性のある共和国である。共和国には30もの異なる民族が暮らしており、もちろん、それぞれの民族に独自の料理がある。しかし、すべてに共通のベースとなるものは、ラム肉、スパイス、マウンテン・ハーブで、それに加えてパン種なしの生地からつくられた料理である。ダゲスタン料理の中でもっとも有名なのは、チュドゥで、薄く平たいパンに野菜、カッテージチーズ、ひき肉を詰め、油をひかないフライパンでまず焼いてから、油を加えて焼くというもの。チュドゥは栄養価が高く、腹持ちが良く、朝食でこのパイを2つも食べれば夜までもつ。

 ダゲスタンにも独自のダンプリングがある。クルゼと呼ばれるもので、三つ編み状の形で中には肉、カッテージチーズ、ジャガイモ、卵を入れる。

 しかしもちろん、ダゲスタン料理といえば、その最筆頭はヒンカルである。生地をちいさく切り分けそれぞれに茹でたラム肉を詰めてつくる。つくり方は、それぞれの民族でさまざまである。アヴァ―ル人は、生地をひし形にし、レズギ人は小さな四角にし、また、ラクス人は「耳」形にする。

 

4. クリミア共和国 

 クリミア・タタール人のメインの料理は、もちろん、半円形の肉入り揚げパイのチェブレキだ。これはクリミア地方全域や黒海沿岸でもっとも人気の屋台料理でもある。 

 シーフード好きなら、小魚のバター揚げであるスタヴリーダやバラブルカを試そう。クリミア・ワインには最高に合う。

 もちろん、デザートは蜂蜜菓子のバクラヴァかチュルチヘラと呼ばれる糸にナッツをつけてぶどうジュースに漬けたものだ。

 

5. カルムィキア共和国

 カルムィキアはステップ地方に位置し、ロシアでもっとも暑い場所のひとつである。ここの料理はとてもユニークで、たとえば、マハーン・スープというおおぶりのジャガイモ、ラム肉、タマネギで作るスープがある。またボルツォキはバンとドーナツを合わせたみたいなものだ。 

 しかし、ここでほんとに驚くべきものはカルムィク茶である。もっともよく飲まれるもののひとつが塩とミルクまたはバターを入れた緑茶。これぞ真の遊牧民の飲み物である。地元の店では、インスタントのお茶が売られており、お湯を注ぐだけで、この種のお茶が飲める。

 概して、ミルクはカルムィキアではとても価値があり、地元では、ここのウォッカはミルクからつくられているという冗談があるほどだ。

6. ブリヤート共和国

 ブリヤートの料理は、ブリヤート地方だけでなく、周辺のイルクーツク地方や沿バイカル地方にも広がっている。まず最初にトライすべき料理はブーズィという、肉汁たっぷりの大きな蒸しダンプリング。また、長期保存が可能な数多くの種類の乳製品がある。さまざまなチーズに加えて、アイルハン(球状のトヴォーログ)やミルクの泡からつくるナツメヤシの実のケーキがある。焼いたパイが好きな人の間では、フシュリも人気がある。 

 この共和国では、屋台料理ですとても独創的である。揚げブーズィや串に刺さったフシュリ、蒸したバンで作ったバーガーなどはその場で買って、テイクアウトできる。

 

7. カレリア共和国 

 カレリアの料理はフィンランド料理との共通点が多い。主な食材は地元の魚で、非常に数多くの魚料理がある。たとえば、カラルオカまたはロヒケイットと呼ばれる透明のブロスまたはクリーミーなブロスの魚のスープを試してみよう。

 もっとも一般的なケーキはカリートカと呼ばれる、ライ麦粉のオープンパイである。キビやヒエのお粥またはジャガイモがフィリングとして使われている。説明だけではあまりおいしそうに感じられないかもしれないが、これが最高においしい。

 

8. ウドムルト共和国

 ウドムルト料理が興味深いのは、地元のほとんどの料理は伝統的にオーブンで作られ、それを証明するような名前を持っていることである。たとえば、ペレペチという料理の名前は、「オーブンの前で(ロシア語でペレド・ペーチコイ)」という表現からつけられたものである。というのもこのパイは強い火でしっかりと焼かなければならないからである。ウドムルトの平らなパンに地元のソースをつけたものをタバニと呼ぶが、味はオーブンで焼くロシアのパンケーキに似ている。

9. カバルダ・バルカル共和国、カラチャイ・チェルケス共和国

 この2つの地域には近い関係の民族が暮らしているため、料理も非常に似ている。主な食べ物はフィチン。ジャガイモ、ハーブ、チーズ、ひき肉などいろいろなフィリングが詰められた平らなパンである。このフィチンはキオスクでもスキーのリゾート地でも高級レストランでも目にすることができる。ただし、このフィチンを食べるときには、カロリーのことを考えないこと! 

 ここではあらゆる肉を使ったケバブやグリル料理があるので、肉好きな人には最高の地域である。

10. 北オセチア共和国

 カフカスのこの小さな共和国を訪れたなら、お腹が空く暇がないだろう。オセチアパイの栄光はかなり遠くまで広まっており、ピザと同じくらい人気がある。

 つまりロシア全土、ひいては外国でもこのパイが食べられるということである。