多くの人がボロネーゼパスタの簡単バージョンであるロシア料理を「海軍風マカロニ」と呼ぶ。このレシピは18世紀初頭、イタリア人調理師がロシアを訪れたときに考案されたと考えられている。イタリア人調理師が簡単に作ったこの料理には、トマトソース、蒸し野菜、ホワイトワインが使われていない。またもう一つの違いは、ロシアの料理は、マカロニとひき肉が同時に加熱されるが、ボロネーゼパスタは、ひき肉を使ったボロネーゼソースを出来上がったパスタの上に乗せるという点である。
なぜこのマカロニ料理が「海軍風」と呼ばれるようになったのか。それは、第二次世界大戦時に海軍でよく出されたからである。海軍兵士たちが兵役から戻った後も、その呼び名は変わらないまま、現在まで残っている。
ロシア人が「モルタデッラ」を食べると、すぐに「これはドクトルスカヤ・ソーセージだ!」と言うはずだ。ただし、モルタデッラには小さな脂身が入っていることとスパイスにも少し違いはある。とはいえ、ドクトルスカヤ・ソーセージのルーツは、どちらかといえばアメリカにある。ソ連でドクトルスカヤ・ソーセージが作られるようになったのは1936年、アナスタス・ミコヤン食品産業人民委員がシカゴの精肉コンビナートを訪れた後のことである。ミコヤンはそこでソーセージの大量生産の技術を学んだのである。
ソーセージはソ連市民により多くのタンパク質を与えるものとされていた。ドクトルスカヤ・ソーセージは胃腸の病気に際して推奨され、また子どもたちの健康にも良いものとされた。
当時の国家標準規格では、ドクトルスカヤ・ソーセージは高級牛肉(25%)、脂身の少ない豚肉(70%)、乾燥させた牛乳、卵、塩、砂糖、香辛料(ナツメグとカルダモン)を材料としていた。モルタデッラに含まれるニンニクとマートルの実、ピスタチオはドクトルスカヤ・ソーセージには使われていない。モルタデッラは、様々な肉が加えられることもあるが、主に豚肉で作られる。また切り方にも違いがある。モルタデッラはかなり薄くスライスして食べるが、ドクトルスカヤ・ソーセージは1㌢ほどの厚さに切られることもある。このような厚みに切ったときの一般的な食べ方は白パンに乗せるオープンサンドである。
ロシアでは、ペリメニとラヴィオリが比較されても誰も驚かないが、もっと正確に言えば、シベリアのペリメニはトルテッローニにもっとよく似ている。どちらも、生地の真ん中にちょうど良いくらいのひき肉が入っていて、茹でて食べる。トルテッローニの生地は、小麦粉と卵で作られ、水や牛乳は加えられておらず、これもペリメニの作り方と共通している。中の具もよく似ている。どちらもひき肉と玉ねぎがベースとなっているが、トルテッローニにはニンジンとチーズが加えられ、シベリアのペリメニにはよりジューシーにするため、砕いた氷が加えられることがある。ロシアの標準では、ペリメニの中の肉は50%以下とされているが、トルテッローニの場合はこの割合がもっと低い。形も少し異なっていて、トルテッローニはバラの蕾のような形だが、シベリアのペリメニは小さな耳の形をしている。
三日月型に包んだピザ、カルツォーネは形はソ連のチェブレクと同じである。カルツォーネの中身はモッツァレラチーズ、ハムまたはキノコ、トマトペースト、それにオリーブオイル少々とハーブが加えられたものである。一方、チェブレクの一般的な中身は、肉(ひき肉、玉ねぎ、ハーブ、ニンニク)またはチーズ(セミハードチーズとハーブ)がある。ピザと違って、カルツォーネは伝統的にオーブンで焼くが、チェブレクはフライパンを使って、表面がカリカリして気泡ができるまで油で揚げる。
ちなみに、イタリアでも、ミニカルツォーネやパンツェロッティはこれと同じく、フライパンで作られる。ただチェブレクではケフィールやウォトカを生地に混ぜ込むことで気泡を作るが、イタリアでは気泡はそれほど重要ではないようである。
*おまけ:ロシアのリゾット「グレチョット」とは?
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