ロシアの田舎に暮らす人々はけしてグルメな食べ物に囲まれていたわけではない。食事の主な目的は栄養を摂取し、お腹を満たすことであった。それでも、田舎の主婦たちは祝日のご馳走に何か新しいものを作ろうと努力した。「スメタンニク」と呼ばれるサワークリームのケーキは特に好まれる一品であった。
子ども時代、わたしは毎年夏になると祖母の住む田舎で休暇を過ごしたが、そこには店は1軒しかなく、そこにもほとんど行くことはなかった。というのも、すべて庭にあったし、牛乳などすべてを家畜から得ることができたからである。牛や羊の乳は常にたくさんあり、その村で、トヴォーログ(カッテージチーズ)やスメタナ(サワークリーム)、ケフィール(発酵乳飲料)、バター、チーズの作り方を知らないという主婦は一人もいなかった。それはロシアの遠く離れた村に住むでは必要不可欠なスキルなのである。
その村の生活で、一番おいしくて感動したのがスメタンニクである。それを食べるたびに、10歳のとき、とても暑い日に祖父の誕生日にこのケーキを焼く祖母の手伝いをしたことを思い出す。
しかし、なぜスメタンニクなのかと訊きたい人もいるかもしれない。答えは単純である。ロシア人は皆、スメタナ(サワークリーム)が大好きだからである。スープにもダンプリングにもスメタナは不可欠であり、ロシア人はアペタイザーからデザート、ケーキまで、何にでもスメタナを入れる。
またスメタナは簡単に作れるものであることも伝えておく必要があるだろう。スメタナを作るのには、1キロの生クリームと200グラムのケフィールまたはヨーグルトがあれば良いのである。生クリームとケフィール(またはヨーグルト)を中サイズのボウルに入れてやさしく混ぜ、24時間から36時間温かい場所においておく。それからもう一度混ぜ、一晩、冷蔵庫に入れておけばスメタナは出来上がる。
もうお分かりかと思うが、今日はこの昔ながらのおいしいケーキの作り方を紹介したい。このスメタンニクは世界で一番おいしいケーキである。簡単に作れて、食べた人たちを驚かせること間違いない。
1. 室温に戻して柔らかくしたバターをボウルに入れ、バニラシュガーを加える。中くらいのスピードのミキサーでしっかり混ぜる。
2. 混ぜている間に、サワークリーム250gと砂糖150gを3度に分けて加える。混ぜている過程で、ボウルの縁についた材料をきれいにし、生地全体に材料がまんべんなく混ざるようにする。
3. ミキサーのスピードを最低まで落とし、小麦粉を2カップとベーキングパウダーを加える。均等に混ざるまで、よく混ぜる。
4. 生地を2等分し、半分にココア大さじ1を加える。チョコレートがムラなく均等に混ざるまで、よく混ぜる。
5. ノンスティックパンの底を直径20㌢から24㌢のベーキングペーパーで覆い、植物油を塗る。中に明るい色の生地を流し込む。濡れた手で、表面を平らにする。
6. 200℃のオーブンに入れ、20分ほど焼く。同じように、チョコレートの入った生地を焼く。冷却ラックに乗せ、ベーキングペーパーを外し、冷ます。生地が冷めると乾燥するが、ケーキは一晩クリームにひたすので、柔らかくなる。
1. 冷やしたサワークリーム500gをボウルに入れ、砂糖150g、バニラシュガー10gを加える。最大のスピードでクリームがふわふわになるまで混ぜる。
2. サワークリームが濃厚すぎる場合は、コーンスターチを大さじ数杯入れ、休ませると、コーンスターチが余分な水分を吸い取ってくれる。
1. 焼いたそれぞれの生地を半分に切る。お皿の上に少量のクリームを広げ、チョコレートの生地を置き、サワークリームをたっぷり乗せ、刻んだローストナッツをふりかける。次に白い方の生地を置き、たっぷりとサワークリームを乗せ、刻んだローストナッツをふりかける。残りの生地も同じように繰り返す。一番上の層を置く。
2. ケーキ全体をクリームで覆う。残りのナッツを刻んで表面に飾る。またサイドにもナッツをふりかける。
3. スメタンニクを冷蔵庫に入れ、少なくとも12時間休ませたら、紅茶かコーヒーと一緒に召し上がれ!
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