1. シーフードとホロムイイチゴの北極風ウハー
魚の入っていない「ウハー」は、タラバガニが生息するバレンツ海に近いことから作られるようになったものである。現在、タラバガニは2,000万匹以上いるとされており、簡単に捕獲することができる。
カニの殻でブイヨンを取り、そこにコンブ、カニの身、エビ、ホタテ、それにこの地方で採れる、形はラズベリーのようで、味はブラックベリーに似たホロムイイチゴを加える。レストラン「ツァルスカヤ・オホータ」のシェフ、スヴェトラーナ・コゼイコさんのレシピをご紹介しよう。
作り方:
カニの殻をオーブンで少し焼いてから、2時間から3時間ほど煮込んで、濃厚なブイヨンを作る。殻が多ければ多く、水が少なければ少ないほど、濃縮されたブイヨンになる。お好みでオイスターリーフかタイムを加えてもよい。
ブイヨンに生クリーム、塩、 コンブ、カニの身(120g)を加える。ホタテ(200g)、エビ(160g)は軽く炒めて、スープに加える。ホロムイイチゴ(5~7個)とディルオイルの雫を垂らして飾る。
2. トナカイゴケの北極風チップス
トナカイゴケというのは、ロシア北方に広く生育している苔である。タイガの平原や松林、沼地、山に生育していることもある。トナカイゴケは北方のトナカイが食するものだが、地元の人々は自分たちの料理にも使う。消化に良いとされている。
しかもトナカイゴケは殺菌作用があるため、たとえば新鮮な肉を室温で腐らせないようこのトナカイゴケを添えておいたりする。トナカイゴケ自体は少し苦味があるが、香りはキノコに似ている。このトナカイゴケから甘いチップスを作る方法を、観光施設「ピレンガ」のシェフ、アレクセイ・エルマコフさんに聞いた。
作り方:
1. トナカイゴケは根っこを除いて集めたら、きれいに洗い、苦みを取るため、3日間、水に浸けておく。
2. コケモモ、ブラックベリー、ホロムイイチゴなどのベリー類を加えて、鍋で煮る。
3. お好みで砂糖を加えたら、乾燥させる。
3.ヘラジカのバーガー
北方ではハンバーガーに鹿肉を使うことが多いが、レストランではヘラジカのバーガーが出されていることがある。アレクセイ・エルマコフさんの作るヘラジカのバーガーはライ麦のバンにコケモモとキノコの2種類のソースが使われている。北方のベイクドポテトとトナカイの角の浸酒と一緒にいただく。
作り方:
1. ヘラジカのフィレ(200g)は肉挽き機にかけ、みじん切りにしたタマネギ(50g)、ニンニク(20g)、ケッパー(20g)、マスタード(10g)、オリーブオイル(20ml)、塩、コショウ適宜を加えたら、小判形に形成し、中に20gのスルグニチーズを入れる。オリーブオイルとバターを入れたフライパンで、表面がカリカリになるまで両面焼いたら、フライパンにキンチャヤマイグチのみじん切り(100g)、ローズマリー1本、潰したニンニク(2~3片)を加え、脂肪分22%の生クリーム(200ml)を注いだら3~4分蒸す。ソースは別の容器にとっておく
2. ジャガイモをオーブンで焼き、一口大に切る。
3. コケモモのソースを作る。コケモモ(200g)をフライパンに入れ、砂糖適宜、クローブ4粒を加えたら、5~6分煮る。
4. ライ麦のバンにレタスなど葉物野菜とカツレツ、輪切りのトマト、レッドオニオン、薄切りキュウリを挟み、コケモモのソースとキノコのソースをかける。ウッドプレートの上に、ベイクドポテトと浸酒と一緒に置いて出す。
4. ホロムイイチゴと松の実のケーキ
北方ロシアでもっともおいしいケーキの一つ。ホロムイイチゴ、カリッとしたメレンゲ、松の実のビスケットとクリームが理想的な形で組み合わされたケーキ。レシピを考案したのはスヴェトラーナ・コゼイコさん。特に装飾のないレシピで、出来上がりは1.3キロ、20人分である。
作り方:
1.卵12個にハチミツ120g、砂糖320gを加えて、10分ほど泡立てたら、薄力粉(200g)、松の実の粉(160g)を加えて混ぜ、190℃のオーブンで15分焼く。
2.松の実入りのチーズクリームとホロムイイチゴのジャムを作る。クリームは、クレメットチーズ(80g)、脂肪分33%の生クリーム(40ml)、松の実(15g)、粉糖(15g)を合わせて、ハンドミキサーで泡立てる。ジャムはホロムイイチゴ(50g)と砂糖(25g)を合わせて煮る。
3. 卵8個と砂糖(320g)を合わせ、10分ほど泡立ててメレンゲを作る。粉糖(320g)を加え、さらに20分ほど泡立てて、もったりとしたサワークリーム状にする。イカ墨を15g加え、クッキングペーパーの上に乗せ、100℃のオーブンで2時間乾燥させる。
4. 生地から3つの円形を抜き取り、ジャムを浸したら、3つの層それぞれにクリームを広げる。上からジャム、小枝形のチョコレートを飾り、マイクログリーン(カイワレ形のスプラウト)と松の実を乗せる。
5. オオカミウオ51
世界には5種類のオオカミウオが存在するが、この魚は一般的に「海のオオカミ」とも呼ばれていると話すのはレシピを考案したスヴェトラーナ・コゼイコさん。北極海とバレンツ海で獲れるのはまだらのあるオオカミウオである。この魚は食感が面白く、ゼリー状で非常にみずみずしい。地元のレストランでは、非常に珍しい魚で、珍味とされている。
作り方:
オオカミウオのフィレ(220g)はオリーブオイルとバターを引いたフライパンで両面焼いてから、180℃の対流式オーブンで8分から10分焼く。カラス麦のキセーリまたは植物性ミルク200mlを加え、タマネギのピュレー40g、数の子50g、オイスターソース15mlを加えて、ブレンダーにかける。ソースは少し蒸して濃縮してもよい。フライドポテトを付け合わせにし、オオカミウオにはソースをかけ、カワカマスの魚卵を添える。
6.ムルマンスクのタラのスモークソースとカワカマスの魚卵添え
ムルマンスクのタラはこの地域でもっとも一般的で身体にもよい魚である。この魚には病原菌がなく、毒性物質もない。タラはロシアでもっとも良質の魚であるとされていることから、地元のレストランがタラをできるだけメニューに含めようとしているのも驚くべきことではない。レストラン「Mクラブ」(ムルマンスク)のブランド・シェフ、マクシム・ガレツキーさんはタラを、マッシュポテトとホウレン草とともに出している。
作り方:(1人分)
1.タラのフィレ(180g)は塩、コショウ、スパイスをすり込み、20分ほど置いておく。
フライパンを熱し、植物油小さじ1、バター少々、タイムを加える。バターが溶けたら、タラの皮を下にして置き、表面が黄金色に色づくまで4~5分焼く。そのタラを今度は皮を上にして耐熱容器に移し、180℃のオーブンで4分焼く。
2.ホウレン草(30g)はバターで1~2分炒め、マッシュポテト(100g)を加えて、混ぜ合わせながら1~2分温める。
3.生クリーム(30g)を2~3分温め、塩で味を整えたら、白コショウ、カワカマスの魚卵(10g)を加えて、混ぜる。
4.ホウレン草入りのマッシュポテトをお皿に盛り、その上にタラを乗せ、周りに生クリームのソースをかける。ディルオイルで飾りつける。
7. 割いた鹿肉とキュウリを乗せたネズのパン
鹿肉が北方ロシアの伝統的な食材になって久しい。レストラン「フレンドシェフ」のシェフ、セルゲイ・ミトロファノフさんは、大勢で集まるときに最適な、鹿肉で作るおいしい前菜の作り方を伝授してくれた。
作り方(10人分)
1. 鹿肉の柔らかい部分(300g)、バター(30g)、塩(3g)、タイム2本、ローズマリーを密封できる袋に入れ、しっかり蓋をする。袋を鍋の底に置き、水を注いだら60℃で2時間煮る。肉に火が通ったら、粗熱を取り、繊維に沿って割く。
2. キュウリ(200g)はきれいに洗い、タネを取り除いたら、小さい角切りにする。ニンニク1片を潰したら、キュウリと一緒に蓋のついた容器に入れ、塩を加えて、蓋をして振る。
3. パンを作る。深皿にお湯(150g)と以下の材料をすべて入れる。
- 砂糖15g
- 塩5g
- ハチミツ15g
- ドライイースト5g
- 植物油20g
- 植物油10g(あとで表面に塗る)
- 薄力粉200g
- ライ麦粉100g
- 麦芽20g
- ネズの実25g
生地をこねる。ふくらんできたら、10等分する(1つ55gずつにして丸める)。天板に並べ、ラップで覆い、室温で少し膨らませる。190℃に予熱したオーブンで10分焼く。焼けたら、表面に植物油を塗る。
4. パンを横に2等分したら広げて置き、片方に鹿肉、もう片方にキュウリを乗せ、コケモモで飾り付ける。