ビーフストロガノフを最初に作ったのはストロガノフ伯爵に仕えていたフランス人シェフだとされている。伯爵はオデッサの宮殿で「オープン・テーブル」を提供していた。この「オープン・テーブル」ではきちんとした身なりの人なら誰でも無料で料理を一皿頂くことが出来た。ビーフストロガノフはここで出されたもので、ストロガノフ伯爵に因んで料理の名が付けられた。第2次世界大戦後、この料理は国民的料理として好まれるようになり、今ではもっとも有名なロシア料理として世界中で知られている。
1. 良質の肉を用意する
ソ連時代のシェフはこの料理を作るのに安価な肉を使った。時間をかけて蒸し煮することで、肉は柔らかくなり、サワークリームの酸度がタンパク質を完全に分解したのである。サーロインやリブアイのようなもう少し高級なヒレ肉を使った方が良いとされるが、何も和牛を買う必要はない。ただし、少なくとも肉をカットする前に固い静脈やスジを取り除くこと。そうしなければ、調理しても肉は柔らかくならない。
2.正しいカットの仕方
肉をカットするのにスジ繊維方向に垂直に切ることはとても重要だ。そうしなければ、焼いた時に収縮し固くなり、噛めなくなってしまう。肉は細長く5-6センチの長さ、厚さに1センチくらいに切る。
3.焼く前に
次に、キッチンペーパーで肉の余計な水分を取り、少量の塩とコショウを加えた小麦粉を薄くまぶす。こうすることで、肉がカラメル化し、黄金色にカリッと焼けた表面が中の肉汁を閉じ込め最高に美味しくなる。ふるいを使って余分な小麦を振り落とすことを忘れてはいけない。そうしなければ、ソースが小麦粉の味になってしまう。
4.素早く焼く
まず、予めフライパンを中火から強火で熱し、油を加える。フライパンは熱くしなければならないが、熱し過ぎてもいけない。それから、フライパンに肉を入れるのだが、たくさん入れ過ぎてはならない。肉は重ならないよう一層だけにすることが大切である。こうして肉汁を逃すことなくカリッと黄金色に焼き上げる。肉が薄いので全体がカリッと焼き上がるのに2-3分もかからない。肉は取り出し、ソースが出来るまで皿に取っておく。
5. マッシュルーム
レシピによってはパールオニオンやケッパー、オリーブまでも加えるものがあるが、ここでは伝統的なレシピに固執してマッシュルームを使いたい。好みのマッシュルームを用意してよいが、もしポルチーニ茸が手に入るのならそれを使うとストロガノフの質がまったく高いレベルのものになるだろう。
マッシュルームは出来るだけ乾燥させる。洗わずに、包丁を使ってきれいした方が良い。注意深く汚れを落とし、可能な限り皮も取り除く。それから肉と同様に調理する。フライパンを熱し、カリッと黄金色がつくまですばやくカラメル化させる。
6. 主な材料
ビーフストロガノフをロシア料理たらしめているのはそのソースにある。それを料理に直接かけるのである。クラシカルなフランス料理ではソースを料理の端にかけるのでそれとは違うやり方だ。一般的にサワークリームがベースとなるが、肉や野菜から出るカラメル化したジュースを無駄にする手はない。それらもソースのベースとなるので肉を焼いた後、フライパンを変えてはいけない。肉やマッシュルームをソースに加え少し蒸し煮すると、すべてがうまく絡まって美味しくなる。ソースによって肉が更に柔らかくなり、逆に肉やマッシュルームがソースをより濃厚にしてくれる。
7. つけ合わせ
ビーフストロガノフは通常つけ合わせと共に出される。しかし肉を邪魔するようなものであってはならない。伝統的にマッシュポテトが使われることが多い。
ビーフストロガノフの材料:
- 牛肉 400g
- タマネギ 1個
- マッシュルーム 300g
- サワークリーム 150g
- 生クリーム 100g
- 小麦粉 50g
- 水 200ml
- 植物油、塩、コショウ
作り方:
1. 牛肉はスジを取り除き、厚さ1センチ、幅5–6センチに切る。
2. マッシュルームは包丁を使ってきれいにし、薄く切る。
3. タマネギは細切りにする。
4. ボウルに小麦粉、塩、コショウを入れて合わせたら、ボウルに牛肉を入れて、まぶす。牛肉をふるいに乗せて軽くゆすり、余分な小麦粉を振り落とす。
5. フライパンに少量の植物油をしいたら、中火~強火にかける。肉が重ならないように牛肉を並べる。両面が黄金色になるまで2分から3分ほど焼く。焼けたら、お皿に取り出し、牛肉が終わるまで作業を繰り返す。
6. 肉を取り出したフライパンに油を足し、強めの中火にかけたら、マッシュルームを炒める。黄金色にカリカリしてきたらお皿に取り出す。
7. 続けて同じフライパンでタマネギを炒める。柔らかくなったらお皿に取り出す。
8. 火にかけたままのフライパンに水を加える。沸騰し、蒸発してきたら、フライパンの底でカラメル化したものを水の中でこそぎ取る。水が半量くらいになったら、生クリームとサワークリームを加える。すべてを混ぜあわせ、塩コショウする。クリームは肉、マッシュルーム、タマネギを加える数分前に用意すること。
9. 牛肉を弱火で10分くらい煮たら、つけ合わせとともに盛り付ける。