ロシアの農民が食べた思い切りヘンテコな食べ物

『農民の家族は昼食前』F.ソルヌツェフ画、1824年

『農民の家族は昼食前』F.ソルヌツェフ画、1824年

Tretyakov Gallery
 大抵のロシアの農民はひどく貧しかった。そのため、見た目が全然パッとしないものからも、食べ物をこしらえなければならなかった。木で作ったお粥、発酵した種子から作ったペースト。ストーブ(ペチカ)の奥から取り出した黒い塩…。最も奇妙な食品を5つ選んだ。

1. 白樺のお粥:木で作るお粥

 ロシアのシンボルの一つである白樺の木は、薪としてだけでなく、他のさまざまな目的にも用いられた。例えば、白樺の樹液は消毒薬として使われたし、その樹皮は、文字を書く紙のかわりに、また靴の材料として用いられた。  

 白樺の木の一部は、カーシャ(お粥)として調理されることもあった。樹皮のいちばん内側に「師部」という部分がある。師部は、木の内部に栄養を運ぶ役割を果たしているのだが、それがお粥に使われるのだ。

 白樺の師部だけを取り出し、完全に湿るまで浸したうえで、こってりしてネバネバするまで煮込む。これで、白樺で作る毎日の朝食ができた!白樺のジュースといっしょに召し上がれ。

 

2. ルベツ(牛の第1胃「ルーメン」から作るモツ料理)

 帝政時代、毎年秋になると、農民は、冬に向けて牛肉を塩漬け、マリネにして、地主の家族に供するように命じられた。しかし、牛の第1胃「ルーメン」は保存が利かないので、農民はそれを手元に残すことが許されていた。そして彼らは、この食肉の副産物を調理する方法を発明した。

 それは、スコットランドのハギスによく似ている(もっとも、ハギスは、牛の胃のほかに、羊の内臓、つまり心臓、肝臓、肺などからも作られる)。あるいはまた、イタリアのモツ料理にも近い(もっともイタリアのそれは、すべての胃袋が使われるが、ロシアのルベツは第1胃のみを使用する)。

 ルーメンは何しろ胃腸の一部だから、臭みをとるために、数時間水に浸す必要がある(1時間ごとに水を換えねばならない)。それから、フォークで穴が開けられるくらい柔らかくなるまで、約5時間、野菜といっしょに煮る。ルベツは栄養が豊富だ。タンパク質と多くのビタミン、そして免疫系を改善する亜鉛などの要素を含んでいる。しかし、それにしてもルベツは、名前も見た目も実に奇妙ではないか!

 

3. クラーガ:奇妙な発酵ペーストだが万病に効く

 ライ麦で作られたクラーガは、白樺のお粥に似たところがあった。これも、手間がほとんどかからず、材料もわずかで済んだからだ。ライ麦粉、ライ麦麦芽、水――これが必要なすべて。ライ麦麦芽を新鮮な沸騰した水に1時間浸し、それからライ麦粉を加える(麦芽の量の2倍)。できた生地が冷えて均質になった後で、鍋に入れてしっかりと閉じ、数時間ペチカに入れる。

 良質のクラーガは薄茶色で、こってりしたお粥に似ており、ナイフで切ることができる。調理中にクラーガは発酵し、できあがったときには健康的な栄養素が含まれる。とくに、健康的な新陳代謝に必要なビタミンBが豊富だ。ロシアの農民は、この「スーパーフード」を消化管、心臓、肝臓、腎臓などの病気の万能薬としても用いていた。

 

4.「木曜日の塩」:靴で調製した黒い高価なスパイス

 クラーガはこのように健康的な食事だったが、同時に儀式的な食べ物でもあり、おそらく異教時代(キリスト教導入以前)のロシア人以来、今日まで伝えられてきた。いわゆる「木曜日の塩」についても同じことが言える。これは、年間を通して一晩のためにのみ準備された。それは、「聖木曜日」の前夜だ。『新約聖書』によれば、聖木曜日にキリストは「最後の晩餐」を使徒たちと共にとった。

 「木曜日の塩」は儀式的な食物だった。かつて塩は非常に高価で、しかも人を悪霊から守る力があると信じられていたからだ。

 「木曜日の塩」を作るには、粗塩を水で湿らせ、ライ麦のパン粉と混ぜなければならなかった。この塊を湿った布地に入れてから、白樺の樹皮で編んだ草鞋(ラポチ)に入れ、ペチカの灰の奥深くに埋めて、最大4時間置いておく。

 しかし、主な「成分」は祈りだった。農民は、調製の間ずっと祈り続けたからだ。その結果できた塩の固い塊を乳鉢で叩くときにも、祈祷文を読んだ。その後、塩は教会で聖別された。

 「木曜日の塩」は、農家の最も神聖な場所、「赤い角」(イコンのある聖なる角)の後ろに保管されていた。この塩はすべての宗教的な食事に使用され、魔法の治療薬としても使われた。病気にかかると身体に対して薬のように用いられ、また、希釈されたものは、牛の治療薬や農繁期の肥料としても使われた。

 

5. レヴァシ:元祖エコキャンディー

 ロシアの歴史の大部分において、ロシアの農民は砂糖がどんなものか知らなかった。あまりにも高価だったので、農民の料理には用いられなかったからだ。しかし、およそ子供というものはキャンディが大好きである。それは農民の子供も同じだ。そこでロシア人は、果物から作った独自のキャンディ「レヴァシ」を持っていた。

 このキャンディーは最大5年間保存できた。というのは、それは単に自然に乾燥させた果汁だったからだ。

 レヴァシを作るには、まず果物(ベリーを使うことの方が多い)を押しつぶして、ピューレの形にする。それから、蜂蜜で甘さを加え、ピューレを大きな鍋に入れて、直射日光の下で乾燥させるか、暖かいストーブに入れてより速く乾燥させた。

 こうしてできた果物のペーストの薄いシートをリボン状に細かく切り、それをチューブ状に丸めて保管した。料理史の研究家は、レヴァシがロシアで知られている最古のキャンディーだと主張している。

 最近、ロシアではこの種のキャンディーが復活している。現在では「パスティラ」として知られているお菓子だ(ただし、本来のパスティラは卵白を使って作られる)。これは「ロシアの伝統的な珍味」として販売されており、それは事実だ。

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