ロシアでボロジノパンより人気のあるパンがあるとは思わない。この伝統的なダークブラウンのサワー種を使ったローフは、ライ麦と小麦粉で作り、甘い糖蜜か蜂蜜、それにスパイシーなコリアンダーを入れる。ロシア人なら誰でもこのパンの味には慣れ親しんでおり、とりわけ年輩の世代には人気だ。例えば、私の祖父母は、テーブルの上にいつもボロジノパンを一斤置いている。かつて聞いたことがあるのだが、ロシア人亡命者たちは、こと食べ物に関しては、このボロジノパンをいちばん恋しがるそうだ。
このパンの名前と発祥はどうなんだろう? 悲しいほどに美しい人気の伝説がある。1812年に、ロシアのアレクサンドル・トゥチコフ将軍がボロジノの戦いで戦死したとき、彼の未亡人がたいへんに悲しみ、フランスとの血戦の場所に修道院を建設することにした。この修道院の修道女たちが、このパンのレシピを考案し、当初は「追悼のパン」と呼ばれていたが、後に、ボロジノの戦いにちなんだ名になったと信じている人もいる。このパンの深く濃い色は、喪と悲しみを表わし、コリアンダーの種は弾丸とブドウ弾を象徴しているといわれている。このロマンチックな解説のほかに、ボロジノパンはソ連のパン工場の発案だと主張する別の説もある。GOST(国家標準規格)の公式なレシピが初めてお目見えしたのは、1930年になってからのことだ。
ともあれ、いろんな種類のパンを食べたことがあるけれど、それでもやはりボロジノパンが最高だと思う。それはスパイスの効いた独特の甘酸っぱい味に尽きる。もうひとつの重要な特徴は食感だ。ちゃんとしたボロジノパンは、外側はサクサクして硬く、中はとても柔らかくて少ししっとりしている。ボロジノパンのレシピは、間違いなく、私が今まで見た中でも最も複雑なもののひとつだ。本格的なパンを作るには、丸一日かかる。幸い、調理時間を2時間に短縮できる2、3の方法と秘密がある。でも味は正直、勝るとも劣らない。
材料:
- 小麦粉 150g
- ライ麦粉 100g
- 水 約220ml
- イーストパウダー 7g
- ライ麦粉末 20g
- ひまわり油 大さじ1
- 蜂蜜 大さじ1
- 塩 小さじ1
- コリアンダー粉末 小さじ1
- コリアンダーシード
作り方:
1.ボロジノパンを作るには、まず最初に乾燥した材料をすべて混ぜる。大きめのボウルに、小麦粉とライ麦粉、イーストパウダー、塩、コリアンダー粉末を入れて混ぜる。
2.その後、主役のロシア産ライ麦粉末を加える。これは、パンに特別な風味を与えてくれる。それからもう一度全体をかき混ぜる。
3.次に、ぬるま湯に蜂蜜を溶いて、2のボウルに注ぎ入れる。ひまわり油大さじ1も加える。 生地をこねる。この生地はかなり粘り気があり、どっしりしているが、それでも弾力性があるはず。水を入れ過ぎないように注意しよう。使用する小麦粉にあわせて加減する必要がある。
4.生地があまりにもべたつくようなら、手に油を塗ろう。そうすれば作業し易くなる。生地を大きくて清潔なボウルに入れ、ラップをかぶせたら暖かい場所で1時間寝かせる。
5.生地が2倍に膨らんだら、ガス抜きをして、パン型に成型し、油を塗る。さらに30分間寝かせて生地を膨らませる。
6.その後、小麦粉を水で溶いたものを生地の表面全体に塗る。コリアンダーシードをたっぷりとかける。
7.ボロジノパンを210℃で30分間焼き、温度を180℃に下げてさらに30分焼く。パンが完全に冷めたら、さあ楽しもう。召し上がれ!