ネフスキー・ピローグは忘れ去られたロシアの食の遺産の一つだ。このピローグはソ連時代には広く知られ、カフェテリアやディナーで、普通スライスされて食された。イースト菌の入った柔らかい生地がシロップに浸され、バタークリームが中に入ったピローグは特別なお菓子として作られた。
生地は非常に柔らかくておいしく、大きな丸いローフの形でも小さくカットされた形でも売られていたため、普段のおやつにも、ちょっとした特別なイベント用にも食された。
このネフスキー・パイはときに有名なボストン・パイと比較されることがあるが、一見するとこの2つのデザートはよく似ている。しかし似ているのはパッと見たところだけで、実は2つのまったく異なる点がある。すでに前述したように、ネフスキー・パイはイースト入りの生地で作られている。ボストン・パイはスポンジケーキが使われる。
そして一番大事なのは、ボストン・パイの中身はカスタードクリームだが、ネフスキー・パイはバタークリームだと言う点である。バタークリームのおかげで濃密さが少なく、甘さも控えめで、とても軽いスイーツとなっている。
ソ連時代、どのお菓子屋も厳しい国家標準規格というものによって調整されていた。ネフスキー・パイのレシピは1975年に考案されたが、そこには細かい手順がすべて記されていた。それによれば、パイの重量は200g前後で、パイ生地の中の水分は40%を超えてはならなかった。パイにはとき卵で表面を塗り、黄金色に輝かせなければならなかった。そしてもっとも重要なルールは完成品の中に砂糖は3%以上含まれてはいけないというもので、これこそが独特な味の秘密であった。
20世紀の末に、サンクトペテルブルグのダウンタウンにあるネフスキー通りとリゴフスキー通りの間にあったラーコムカというお菓子屋でこのパイをどのようにして買ったのか覚えているという人がいる。
多くの人々がネフスキー・パイは他のどんなケーキよりも人気があったと指摘する。見た目はシンプルで高価でなく、もっとも買いやすいデザートの一つだったのである。もちろん、多くの主婦たちがこのケーキを家で再現しようとしたが、同じものにはならなかった。正しい作り方を誰も知らなかったのである。そこでここではオリジナルのネフスキー・パイにできるだけ近いものが作れるレシピを紹介しよう。というわけで、時間を無駄にせず、すぐに始めるとしよう。
生地の材料:
- 小麦粉 288g
- 砂糖 78g
- バター 68g(室温に戻したもの)
- 卵 1個
- 水 142g
- 塩 1g
- ドライイースト 5g
作り方:
1.予備発酵から始める。ボウルにドライイーストと小麦粉50g、水70gを入れて混ぜる。ラップで蓋をして、1時間ほど発酵させる。
2.ボウルに卵、砂糖、塩を加え、均等になるまで混ぜる。そこに予備発酵させた生地と残りの水を加え、さらに混ぜる。残った小麦粉も加え、生地がなめらかになるまでこねる。バターを加えてこねる。生地の中にバターが完全に溶け、生地がボウルにくっつかなくなるまでこね続ける。
3.生地の入ったボウルに蓋をして、1時間ほど発酵させる。生地を押しながら折りたたむようにしてガス抜きしたら、さらに1時間発酵させる。
4.大きな丸いパンのような形に整え、天板に置く。とき卵を塗り、ラップで覆う。20分発酵させ、オーブンを190℃に温め始める。
5.生地がふくらんだら、ラップをはずし、オーブンに入れる。30分ほど焼く。
シロップの材料:
- 砂糖 86g
- コニャック 10g
- 水 95g
作り方:
小さな鍋に砂糖と水を入れ、沸騰させる。砂糖が完全に溶けていたら、火からおろして、冷まし、コニャックを加える。
クリームの材料:
- 粉砂糖 60g
- バター 140g
- コンデンスミルク 60g
- バニラ
作り方:
1.バターを室温に戻しておく。
2.ボウルにバニラと粉砂糖とバターを入れ、泡立てる。少しずつコンデンスミルクを加えていく。ふんわりするまで泡立てる。
3.すべての材料が出来上がったら、冷ましたパイを水平に2分する。下の半分をシロップに浸す。
4.シロップが染み込むまで数分待ったら、表面にクリームを広げていく。
5.パイの上半分をのせ、粉砂糖をふりかける。
プリヤートナヴァ・アペチータ!(どうぞ召し上がれ!)